こうしゅうでんわ

谷甲州

例によってというか、あいかわらず仕事が遅くて四苦八苦しておる甲州であります。今月の末には書店にならぶはずの「覇者の戦塵」が、まだ半分しかあがらずに死ぬ思いをしておるのです。といっても死ぬ気は全然なくて、適当にさぼりながら死んだふりをしているだけなんですが(内緒、内緒)。とはいえいつものようにタイトルだけは先に決まっていて『激突(電話では激闘といったと思ったんだが、いつの間にか激突になっていた)シベリア戦線』という派手派手しいものになりました。ところが一冊の半分書いたのに、いまだにストーリーは日本の中でもたもたしております。たぶんこの本の終わりあたりでようやくシベリアの端っこあたりまでいって、「おあとは下巻で」ということになるんだろうなあ。下手をすると「下巻でも終わりませんでした。下巻の2につづきます」になりかねない。表紙イラストもすでに出来上がってるんで、最低でもロケット弾装備の鍾馗を出さにゃいかん のだが。さて、どうなることか。
 そういえば、本文中のイラストもすでにあがっているらしい。打ちあわせのとき適当に五つほど日米伊(なんとイタリア機まで登場するのだ。結局、絵としてはボツになってしまったが)の軍用機の名前をあげたんだが、半分ほど本文を書いたのにまだ二機種しか登場していない。知らんぞ、もう。しばらく技術者を出してなかったんで今回は意識して技術の話にしたんだが、なんか話が地味な方へ地味な方へとすすんでしまった。でもなあ、登場人物が真空管の品質管理で悩むようなシミュ レーション小説、いったいだれが読むんだか。

 忘れるところだった。いま書店にならんでいる「小説すばる」(一〇月号)に、みじかいエッセイを書いております。「座右のメロディ」ということでモンゴルにいったときの話を書いたんだが、はて、この話だれかにしたかな。あんまり珍しい話でもないですが、気がむいたら書店で確かめてください。
 ところでこの雑誌にはいくつか連載コラムがあって、「座右のメロディ」以外にも「ぐるぐるグルメ」だとか「世界まちまちめぐり」のタイトルで(それにしてもイージーなネーミングだな)毎月いろんな人が書いてるんだが、よく考えたら甲州はそのほとんどに書いてしまったな。順番からいうと、そのうち「GO! GO! 健康道場」とか「ゲームな日々」(ほんと、つくづくわかりやすいタイトルだ)で何か書けということになりそうだが、うーん、ゲームも健康法とも無縁なんで何も書けそうにない。もっとも「オープンクロゼット」のときは何も書けんといいがらエッセイひとつ書いてしまったから、頼まれればなんとかなりそうな気はするのだが。とはいえ、健康法にゲームねえ。せっかくだから、いまから何かはじめてみるか。なんか本末転倒しとるような気もするが。




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