毎月いまごろの時期になると『エリコ』で四苦八苦しているのだが、連載も終わりに近づいたせいかしんどさが加速してきたような気がする。別に息切れしてきたわけではないのだけどね。なんというかつい惰性に走ってしまいそうになるので、逆に注意が必要なのであった。なんにしろ今月をふくめてあと三回で終了なんで、油断せんと頑張るしかないな。
とはいえ、あんまり大きな声ではいえない手抜きを、またやってしまった。本来は一カ月について七〇枚の連載原稿を、前回と前々回つづけて六〇枚に値切ってしまった。締め切りを大幅にすぎても、まだ七〇枚までいっていなかったのだ。原則的に雑誌の原稿はプラスマイナス一〇パーセントまでの誤差なら大丈夫だというから、この値切り方はそれを越えたルール違反ということになる。本当はもっと外道な値切り方をする人もいるらしいんだけどな。でも、その話はやばいのでパス。とはいえ、この程度の枚数不足はかわいいもんだと、これは言い訳。まま、それはさておき。
依頼した原稿が規定の枚数に満たないとき、編集部はどうやって辻褄をあわせるか。締め切りのはるか前に状況がわかっていれば、調節はそれほどむつかしくない。あっちのページとかこっちのページを調節して、適当に辻褄をあわせることになる。ところが原稿を放りこむのがぎりぎりだと相当に厄介なことになる。ことに目次まで印刷してしまったあとは、編集者は地獄をみるらしい(知らんけどな。みたわけではないから)。いちばんよく使われるのが自社広告の挿入という奴で、SFマガジンの場合は早川書房の近刊広告を出して足りないページを埋めることになる。SFアドベンチャーはよくこれをやってたのだがなあ。さすがにSFマガジンは真面目な人が多いとみえて、あんまりみかけない。その前例を、甲州が破ってしまった。先々月のマガジンの場合だが。『エリコ』の本文にもずいぶん広告が入っているし、終わってからも見開きで広告が入っていたのだった。
格好悪いなあ、これでは原稿の枚数が不足したまま放りこんだのが見え見えではないか、などと思ったので、先月はリキを入れて取りかかったところが結果は、やはり同じだった。最終最後の締め切りがきた時点で、やはり六〇枚しかできていなかった。わー、今回も自社広告がふえるのかあ、などと思いながらできあがったSFマガジンを手にとってみたら――うーん、こんな手があったのか。なるほど、と感心してしまった。結果から先に書くと、読者の投稿欄である「てれぽーと」が大増ページになっていたのだった。うむ、これなら自社広告でページを埋めるより合理的だし、格好もそんなに悪くないわ。知らん人がみたら、まるで編集部が「てれぽーと」欄を重視してこんな紙面構成にしたみたいではないか。
てなことを考えながら、その「てれぽーと」欄を読んでみたんだが……。ほお、あの人はあいかわらず飛ばしておるなあ。なんか他のみなさんもムキになっていて、えらくホットというか活気があるではないか。でも、あやうく減ページをやりかけた人間からみると、なんか自分の手のひらで暴れている孫悟空をみているお釈迦様のような気分だった、などというのは不謹慎か。さてと、三カ月連続して原稿を値切るのも格好悪いので、今月はきちんと『エリコ』を規定の枚数だけ書くか。肝心の「てれぽーと」も、二カ月つづけて増ページにするほどのない方でもなかったしな。あ、また不謹慎。