やっぱりなあ、というか思惑どおりというか、先月のこうしゅうでんわに書いた『覇者の戦塵1942 急進 真珠湾の蹉跌』はちゃんと本屋にならんでおります。めいっぱい引っぱったので、こっちの方は危ないかなあ、と思ってた『エリコ』の方も結局は間にあってしまったし、その後の「小説すばる」の短編(例によってホラーなのだ)や「地図の彼方へ」の連載最終回もきちんと書きあげてしまった。なんか情けないので、今月発売予定の『覇者の戦塵』は、予定どおり落ちますと断言しておこう。さすがに今度は無理みたいだ。というか、仕事やってるときに気づいてしまったのだな。「あ、今回は前のときとちがって上下巻じゃないから、別に二カ月連続して売らなくてもいいのか」てなことを。一度こんなことを思ってしまったら、もう駄目なのであった。ペースががた落ちになって、それまで一日ですんだ仕事を一週間かけてやることになってしまうから。なんにしろ、今度こそ約束を守って落とさないと(そこまで義理がたくする必要もないのだが)、狼がきた少年になってしまうものな。
そのかわり、というわけではないのだが今月は他の仕事もいろいろとやっております。といっても「小説すばる」と「ヤマケイJOY」以外は、短い原稿ばかりだが。「このミステリがすごい!」には「私の隠し玉」で、これからやる予定の仕事について書いたのだが、これは去年もやったな。とはいえ去年のうちにこの先数年分の予定を書いてしまったし、しかも一年間のうちに予定がさっぱりすすんでいない。よく考えたら今年は『エリコ』と『覇者−−』ばかりやってたものだから(あ、『星は昴』の修正にも手間がかかったのだが)、書くことがなにもない。とはいえ黙ったままでは宣伝にならんので、『エリコ』のことを書いときました。あとはトーハンの「新刊ニュース」のアンケートか。例によって数行程度のみじかい文章だが、年末のこの時期には似たようなアンケートが他にもくるので困ってしまった。ちなみにトーハンのは「97年印象に残った本」で、日販のは「今年印象に強く残った本」だと。どちらも三冊の本をあげてコメントをつけろというのだが、さて、どうしたもんか。おなじこと書くのはまずいような気がするし、というて全然ちがう本をあげたんでは「印象に残った」本からはずれてしまうし。この場合、あとか
らきた依頼は知らんぷりするべきなんかもしれん。
あ、もうひとつ短い原稿を書いてたのだった。夢枕獏事務所の「義理原400字固め」。獏さんの新刊本に挟み込みの「仰天夢枕獏」用に書いたのだが、要するに甲州画報のゲスト原稿(そんなの、あるのか)みたいなものか。400字以内で獏さんのことを誉めればいいんだが、書きながらつくづく「わしも丸くなったねえ」などと思ってしまった。昔なら他人を誉めるような原稿なんて、どんなに頑張っても書けなかったのだが。なんせ自意識だけは、無茶苦茶につよいから。小説家なんて、だいたい似たようなものだけどな。