こうしゅうでんわ

谷甲州

予想どおりというか、今月下旬にはでるはずの『覇者の戦塵』がまだ終わらずに四苦八苦しております。今日明日で書きあげれば間にあうはずなんだが、どうなることやら見当もつかんのであった。一応の予定としては今やってる『覇者−−』を片づけたあと今月分の『エリコ』にかかって、それが終わったらすぐ次の『覇者−−』にかかるはずなんだが……。うーむ、なんというか例によって自転車で綱渡りをやってるような状態だな。今月は「小説すばる」の短編やら「地図の彼方へ」の連載もあるのだが、これで二カ月つづけて『覇者−−』が出たら不思議としかいいようがない。とはいえ、いつもいつも不思議じゃ不思議じゃ間におうたら奇跡じゃといいながら結局は最後に辻褄をあわせてしまうのだが。いかんなあ、火事場の馬鹿力モードを最初から予定に組みこんでしまうというのは(前にも書いたか)。

 ところで「エリコ」は一年間の予定で連載をはじめたのだが、たぶん半年ほど追加になるでしょう。とても一年では終わりそうにないので。でも、この話はどういうジャンルになるのかね。官能SFとはちょっとちがう気がするし、ハード・ポルノ・SFではハードポルノなんだかハードSFなんだかわけがわからん。「肉体派冒険小説!」と帯にいれといたら、勘ちがいする人がいるか。「おのれの肉体のみを武器に(どんな武器なんだか)戦うニューヒロイン登場」とすると、なんか看板にいつわりありだし。「ニューヒーロー」では、さらに嘘くさいな。いっそのこと「やおいも入ってます・耽美ハード冒険ロマン」にしてしまうか。「やめて・お尻が・痛いから」というより「やっぱり・女で・イキたいの」とか、うーん。「やるぞ・男は・一発勝負」「やれやれ・お前は・インケツじゃ」「やだもんね・オカマ掘られて・イボ痔だもん」「やっちまえ・おっとどっこい・入れそこなった」なんだか、わけがわからん。

 あ、忘れるところだった。今月発売の「小説すばる」に短いエッセイを書いております。「世界まちまちめぐり」というタイトルで、毎回いろんな人が世界中のあっちこっちの街について書くリレーエッセイらしい。それはいいのだが、のだが、編集者は開口一番「カトマンドゥ!」などといいおった。あのなあ、わしは他の街もちゃんと歩いとるのだぞ。カトマンドゥしか知らんわけでは、もちろんないのだ。ということでインドのアジメールという街を歩いたときのことを書いたのだが、実はこの話は前にネットにアップしたことがあるのだった。まま、あっちの方は原稿料をもらったわけではないので、別に問題はないのだが。




● 戻る