こうしゅうでんわ

谷甲州

なんやかんやといいながら、九月になってしまいましたなあ。例によって仕事はさっぱりはかどらず、したがって書くこともありませんです。いまは途中まで書いた(といっても冒頭の部分だけ)『覇者の戦塵』を中断して、エリコの連載にかかってるところです。エリコも最近(というても一カ月ほどか)濡れ場がないので、書くのもなかなかしんどいのであった。景気づけに、ストーリーと関係ない濡れ場をぶち込んでみるか。今度はどんなスタイルでいくかな。うひひひひひ(よい子は読まないようにね)。

 とはいえ『覇者──』がすすまんのも困ったもんだ。予定ではとっくに完成しているはずなのに、ずるずると後ろにずれこんでしまった。実は表紙はすでに完成してる(「著者の言葉」も、ちゃんと入ってる)のだが、肝心の本文がさっぱり進まないのだから情けない。まーその、いつものことではあるんだけどね。うまくやれば一〇月と一一月の二カ月連続で刊行できると思うんだが、冒頭の部分でもたもたしてるんでどうなることか作者にもわからんです。来月の画報には、結果を報告できるとは思うのだが。

 で、なんでこんなに仕事が遅いのかというと、筋書きを全然かんがえずに前の巻の終わりで引きをつくってしまったからだったりする。「正規空母が四隻も……」。あのときは『北太平洋海戦』脱稿寸前でハイな状態になってたから、矢でも鉄砲でももってこんかい、てな気分になってたのだな。というわけで、いまごろになって苦労しております。もっともそれを差し引いても、今回の巻は苦労しそうなんだけどね。これまでの『覇者──』で好き勝手をやれたのは、実は太平洋戦争が起こらなかったからだったりする。ところが今回はそうもいかなくなって、なんとなく戦争がはじまってしまった。ところが太平洋戦争のシミュレーションなんて、いまでは数えきれんほどのバリエーションが書かれている。だから中途半端な設定では読者を引きつけられんのであった。それで前巻の「正規空母が四隻──」になったのだが、あとで編集さんにいわれて愕然とした。「あ、その設定なら、すでに書かれてますよ。ちなみに中央公論社刊でシリーズになってます」だと。そ、そうなのか。知らんかった。これまで戦史の本はあれこれ読んだのだが、他の作家が書いたシミュレーション小説はさっぱり読んでなかったものなあ。こういうのは、勉強不足というのだろうか。

 そうだ。SFマガジン一〇月号153Pの写真をみて思ったこと。小説家もこれだけ人数がそろうと、一人一人が物語を主張しているみたいで興味ぶかいのであった。以下に敬称略でそのストーリーを書いてみると。左から順に「これまでの増長を反省して低姿勢に徹する森岡浩之」「あいかわらず態度のでかい谷甲州」「背後霊の北野勇作」「両手をついて謙虚さをアピールする本日の主役・草上仁」「背後霊になりそこねた高井信」そして彼らとは一線を画して距離をおく堀晃の心境は「こんな格好でSFマガジンに再登場しとないなあ。あんたら勝手にやっといて」。 うーん。ええのかいな、こんなこと書いて。




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