こうしゅうでんわ

谷甲州

世の中には連休などというものがあったらしいが(そういえば春休みも)、全然なんの関係もなしに仕事に追いまくられている甲州であります。本来ならこの時期はエリコに取りかかっているはずなんだが、『覇者の戦塵1942「下」』がいまだに終わらず死ぬ思いをしているのであった。『覇者−−』の方は明日の朝までに書きあげれば今月末には本屋にならぶ可能性もあるというのだが、どうなるか見当もつかん。戦場の様子をシミュレートしろといわれれば適当に筋書きをでっち上げてしまうんだけどね。自分の仕事の進み具合がさっぱりわからんのだから情けない。運よく『覇者−−』が間にあったとしても、エリコがしわ寄せをくらいそうな状況になってきた。知らんぞ、もう。CノベルズもSFマガジンも発売日は25日なのだが、今月は日曜にあたるので予定が一日くりあがってしまったのだ。この一日が、下手をすると命取りになりかねないのだ。
 よく考えたら「こうしゅうでんわ」どころではないのだが、習慣でつい書いてしまうというのも情けない。こっちの方は、あと二〇分でぽんき編集長がメールボックスをのぞくのか。とはいえこんなことを書いているのは、心のどこかで「なんとかなるんでないかい」と楽観してるせいかもしれんな。今月末になって両方とも間にあっていたら、奇跡がおこったのだと考えてください。落ちたのが片方だけなら「あいつは最後まで望みを捨てなかった」と思うこと。不幸にして両方落ちたら「こうしゅうでんわを落とさんかったことだけは評価してやろう」と思ってください。さて、本当にどうなるか。
 そうだ。例によってこの一カ月のあいだに仕事をあれこれやったので、その話を。四月のなかばごろ北國新聞の夕刊にみじかい記事を書いたのだが、これは石川県の人でないと読めないか。最近は年に一度はこの仕事をやるようになったな。「舞台」というコラムです。あとは……まだ本にはなっていないはずだが「この文庫がすごい」という雑誌形式の、えーと、何というのだ、これは。要するに「このミステリがすごい」の文庫バージョンに、頼まれてアンケート原稿を書きました。変則季刊誌のヤマケイJOYは今月末発売で、連載エッセイの二回めを書いたと。他に何かあったかな。
 そうだ。原稿を書いたわけではないのだが「公募ガイド」という雑誌から取材を受けたのだった。グラビアのページに連載されている「小説家の書斎」の企画かな。こっちの方も、そろそろ書店にならぶのではないかと思うのだが、発売日をきくのを忘れていた。取材されたのはかなり年輩のカメラマンで、その方面では有名な人だったりする。いちおう取材にそなえて掃除はしたんだが、あまりにも仕事場が散らかっているので恐縮してしまった。さすがに申し訳なく思ったんで「汚くてすんませんね」といったら「坂口安吾の書斎はもっと汚かったです」といわれてしまった。いやその。なんというか、この程度の散らかし方では足らんような気がしてさらに恐縮してしまった。それにしても文豪の散らかし方はどんなもんだったのか、みてみたいようなみたくないような。
 ということで、今晩も頑張ろう。




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