こうしゅうでんわ

谷甲州

例によってエリコでばたばたしてますが、今月はいつもの月より仕事が遅くて四苦八苦しております。つい二日ほど前に、ようやく『覇者の戦塵1942「上」』を脱稿したので息も絶え絶えなのであった。『覇者−−』の方は今回も原稿が大遅れで、例によってあっちこっちに迷惑をかけたおしてしまいました。ことに図版屋さんには(すまんすまん)。とはいえ、どたばたと仕事をした割には、かなりいい出来になったみたいで安心しております。といっても原稿の方の出来は判断がつかんけどね。登場人物の中には、めいっぱいストーリーを引っ掻きますとんでもない奴もいたし。まま、それはともかく。表紙イラストはなかなかの迫力で(みてないけど)、しかも校正は完璧らしい(と思う。原稿を放りこんでぐったりと寝こんでたら、何度も確認の電話をかけてきたから)。いずれにしても、今月の下旬には書店にならぶでしょう。めでたしめでたし。

 ところで、ここにはまだ書いてなかったと思うのだが『天を越える旅人』が早川書房から文庫ででています。版元が移動したのでカバーデザインも一新しております。ちなみに文庫版の解説は夢枕獏氏。まだ未読の方は、この機会にどうぞ。ところで文庫化に際して元の版元とあれこれ連絡をとったんだけど、なんかハードカバー版はまだ大量に在庫があるらしい。もともとの刷り部数が少ないところにこの在庫だから、さぞかし経営を圧迫してたんではなかろうか。それにしてもなあ、在庫の数字をきいたときはマジで耳をうたがったぞ。なんぼ甲州の本が売れんといっても、そこまで売れ残るかあ。どう考えても売れそうにない『終わりなき索敵』のハードカバー版が、その三倍以上の初版を売りつくして増刷したんだぞ。ぶつぶつ。

 ところで文庫といえば、いくつか話がすすんでおります。まだ不確定な話もあるんで、確実なところだけ書いていくと。前にSFアドベンチャーにぽつぽつと書いていた宇宙SFの短編が、早川書房で文庫になりそうです。これはたぶん確定的。非宇宙SF短編の『エミリーの記憶』と対をなす短編集になるのかな。版元の移転で話がかなりもたついたけど、結果的にこういうことになりました。ただし本になるのは、今年の秋以降になるでしょう。
 もうひとつ。こっちは文庫ではなくてノベルズ(新書)の話。前にスニーカーからでていた『ヴァレリア・ファイル』のシリーズが、中央公論社からノベルズででるかもしれません。たぶんこっちも確定的。ただし時期的には、年末から来年にかけてということになりそう。編集さんがいうには「あのストーリーは世の中にでるのが早すぎた」だそうで。そういえば小説の中でMKが使ってるコンピュータはもろウインドゥズだし、通信環境はインターネットそのものだものなあ。もっともその気になってしらべれば、当時でもそれくらいの見当はついたのだが。
 ということで今月はこれまで。さてと、エリコの原稿にかかるか。




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