こうしゅうでんわ

谷甲州

 新年あけましておめでとうございます。
 例によってズボラして年賀状を書かず、メールやら画報上の挨拶ですまそうとしたのだが、懸案だったプリンタを買いかえたことでもあり今年はあっちこっちに年賀状を出しまくっておりました……のだが、設定をまちがえておなじ宛て名を何通もプリントしてしまった。というわけで宛て名の部分がごちゃごちゃに修正してあったり、おなじ年賀状が二通きても驚かんように。場合によってはお年玉つき年賀状が当たる可能性もあるので、「こんな汚い年賀状いらんわい」などといって突っ返さないでね。

 それはともかく。この一カ月間ぼけっと過ごしていたので、書くことがあまりない。エリコの連載二回目は、死ぬ思いをしていまやっております。それにしても未来の大阪を描くというのは、ややこしいというかなかなか面倒な仕事なのであった。よく知っている街だけに、かえって描きにくいのだな。これが。「大阪名物の食い倒れ人形が、高さ一〇〇メートルを越える立体映像にリニューアルされていた」というのを考えたんだけど、なんかギャグにしかならんので書くのはやめにしたのだった。うーむ、道頓堀の空にそびえる巨大なレーザー人形が、眉を上下させながらちんどんちんどんと太鼓をたたいている図は、なかなかに情緒があってそそるものがあるのだが……。

 ついでにその横を手足(とはいわんか)をばたばたさせる蟹道楽の巨大飛行船がゆらゆらと空を横切っていったり、グリコの一粒一〇〇メートル人形が(モビルスーツなのだ)御堂筋をどしんどしんと走りまわってくれたら大阪の人間としては感涙ものなんだけどなあ。さすがにイラストの人も、著者が何もいわんのにそこまではやってくれないであろう。前回のときは電話で編集者に「南大阪ですから通天閣があります」といったら、雑誌掲載時のイラストにちゃんと描かれていたのだ。しまった。それなら文章の中にちゃんといれておくんだった。南海電車はそれとなく本文中に書いておいたんだが。

 あ、ついでの情報です。平凡社の出しているPR誌「ありゃ、名前が出てこんわ」に短い文章を書きました。『ヒマラヤ名峰事典』という本の刊行にあわせてエッセイ風に宣伝を書いたのだが、仕事を別にしてもなかなかいい本でありました。しばし仕事のことは忘れて(いつものことだが)読みふけってしまいましたよ。写真も地図も満載なので、興味がある人もない人も買うように。一万円もする本なので、少々お高いのだが(わしはただでもらったけどね。ひひ)。




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