こうしゅうでんわ

谷甲州

やれやれ春になったなあ、と思ったら寒波が襲来して、北陸はまたぞろ雪景色であります。ほんとにもー、タイヤはノーマルに変えてしまったし、スノトレや車の雪かきブラシはしまってしまったのに、つもるほど雪が降るとは何ごとだ。もう四月も中旬なんだぞ。 などと書いているのは例によって仕事があまり進んでないからなんだが、こんなときは予定している次の仕事のことを書くのにかぎる。この七月には角川からシミュレーション戦記を出すことになっているのだが、たぶんいつもの『覇者の戦塵』とはちがう雰囲気のストーリーになるでしょう。具体的には世界設定はおなじで、より地域と登場人物を限定した筋書きになりそうです。あんまり具体的ではないか。要するにだな、『覇者−−』の外伝というか、架空の歴史を舞台にした冒険小説になるのかな。
 最初に編集者から話を持ちこまれたときは「つまり『覇者−−』を切り捨てる伏線かいな」と思ったんだけど、話をつめてるうちにだんだんこっちもその気になってきた。実は『覇者−−』は書くのに手間がかかるわしんどいわ、しかも話が暗くなるから書いてる方も暗くなってくるのだった。たまには羽目をはずして評判の架空戦記みたいに明るく陽気に楽しく戦争するのを(いいのかなーという気はしますが)書いてみたいと思っとったわけよ。うちあわせの直前に宮崎駿氏の『雑想ノート』を読んだのが影響してたのかもしれん。あるいは岡本喜八監督の東宝戦争アクションのことを思いだしたのかな。
 ということで、さてどんな話を書こうかと思ったのだが、急に羽目をはずすといってもなあ。唐突にまったく何の関係もなく『抱腹絶倒のワハハ艦隊物語』などというタイトルを思いついたんだけど、なんぼなんでもこれはちょっとなあ。あまりにも差し障りがありそうなんでボツ。筋書きだけはあれこれと考えてるんですけどね。上陸支援用の特設巡洋艦(帝国海軍海兵隊所属の輸送艦。飛行甲板つき)がカムチャッカかアリューシャンあたりであれこれする話なんだけど。とまあ、あれこれ悩んでるうちに、はたといい考えが浮かんだ。なんだ、そういうことか、簡単じあゃねえか(健さん風)と結論がでた。要するに、巡洋艦長の名前を蓮美大佐にしてしまえばいいのだ。そうすればストーリーは勝手に走ってくれそうだから。まったくあの親父は、作者の思惑を無視して走ってくれるからなあ。
 すると副長の名前は、やっぱり秋山かな。それとも乱数中佐にするべきか。いっそのこと連絡官というか観戦武官として、ドイツ海軍の士官を乗艦させてしまうか。と思ったが、別にドイツと友好関係を結んでいるとはかぎらないのであった。でも、フランス海軍の士官を載せるのも悪くないな。せっかくだから女性にするか、いっそのこと女装が趣味のその筋の人にするか(以下略。放っておくと、はてしなく脱線しそうで怖い)。
 そうだ。記録のつもりで書いておきます。例によって北國新聞の夕刊(日付わすれた。実は手元に実物がないのだ。三月の下旬ごろの話だったと思う)の近況報告欄で、内容は「加賀市と小松市と、白山が美しくみえるのはどっち?」というまことにローカルな話でありました。どこが近況なんだか、と疑問に思った方は実物をあたってください。伏線になる話があれこれあるんで、ちょっと要約しづらいのよ。




● 戻る