こうしゅうでんわ

谷甲州

 あけましておめでとうございます。
 といっても、画報が配達されるのは一月の下旬ごろの話か。あんまりめでたくもないな。寒中お見舞い申し上げます、では沖縄の人が困るだろうし(別に困らんか)まーその、いつも通り甲州はめでたいめでたいの状態であります。
 さてと。せっかくだから年のはじめのこうしゅうでんわということで、今後の予定などを書いてみるか。なんか去年もその前の年もやったような気がするが(しかも予定どおり仕事ができたためしがないが)過去はこの際わすれて(それも前にいった気がするな)、あらたな気持ちで年のはじめに望みましょう(まったくもって、ええ加減な話だ)。
 冒頭からナンですが、昨年の暮れに『攻撃衛星エル・ファラド』二冊つづけてだすという無謀なことをやったもので、ちょっとパワーがダウン気味ではあります。なんか昨年のうちに片づけるはずだった仕事を、いまだにずりずり引きずりながらぜいぜいとやってます。とりあえず確定した予定を先に書いておくと、今年の三月(たぶん)には徳間書店から山岳幻想小説(というんだろうな)書き下ろしがでるはずです。実は原稿はもう書きあげてるんですけどね。八年ほど前に。当時の編集者とあれやこれやがあって、実質的にボツ状態で八年ちかくディスクの中で原稿が眠っておりました。それが昨年になって陽の目をみて本にすることが決まったんだが、なんせ大昔に書いた長編だから文章が支離滅裂というか構成が無茶苦茶というか、要するに眼をそむけたくなるほど下手糞な小説でありました。
 で、最初から書き直してるんですが、これが新作を書くよりも手間がかかる。でも期限は切られてるので、まあ予定どおり本にはなるでしょう。タイトルは……未定。もとは『ジャンキー・ジャンクション』だったけど、あんまりぱっとせんタイトルなんで変更するつもりです。ストーリーからすると『幻想のヒマラヤ』という方がぴったりくるんだが、実はこのタイトルの本はすでにあるのだな。小説ではなくて、山岳ノンフィクションだけど。知らん顔してパクるという手もあるが、だれかさんみたな手はつかいたくないなあ(だれとはいわんが)。とはいえ、まだ時間があるのでもう少し考えましょう。
 その後も山岳小説の予定は入っていて、できれば夏の終わりか秋のはじめには早川書房からの『神々の座を越えて』を出したいところです(なんか、おなじことを去年も書いたな)。資料だけは、ごっそりとたまってるんですけどね(これも前に書いたか。進歩のない話だ)。
 そうだ。資料といえば最近は面白い本がやたらと手元に集まってきます(と、たくみに話をそらす)。あっちこっちの会社の編集さんと会って次にやる仕事の打ち合わせをすると、あとから関係資料をどばどばと送ってきてくれるのだ。中央アジアの探検史とか、東亜同文書院の上海大旅行の記録なんてのを。なかには戦時に発行された古い本のコピーなんかもあって(昭和一八年に翻訳されたヤングハズバンドのチベット遠征の記録が『英帝國の侵略過程』だもんなあ)、読んでいるだけでなかなか飽きないのであった。これで小説さえ書かんでよければ、小説家なんて実に楽しい商売なのだが。
 なんか今回は括弧の多い文章になったわい。




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