最初におわびです。先月「できれば十一月に」などといっていた軌道傭兵(ではないが)の話は、やっぱり間にあいませんでした。いまは十二月刊にむけてなんとか頑張っているところです。うまくやれば十二月二〇日前後には本になるのですが、例によってあまりあてにせん方がいいでしょう。なんとかしたいと頑張っているのですが、世の中はうまくいかんものだ。
しかも悪いことに、今月はじめに畑ちがいのミステリの短編を予定に入れていたのでありました。最初の予定ではキャンプまでにはCノベルズは書き終えているはずだったのだが、結局は仕事ふたつがかちあってさらにしんどいことになっております。ミステリの方はマニラを舞台にしているのだが、書き終えてからよく考えたら10年前にかいた「マニラ・サンクション」と似たようなストーリーになってしまった。こっちの方はすでに書き終えたので、年末発行の小説フェミナに掲載されるでしょう。
あれ、よく考えたらこの雑誌の発売日はCノベルズの刊行予定とほとんどおなじではないか。むしろ遅いくらいだ。しまった。こんなことなら、軌道傭兵を優先するんだった。最終ぎりぎりの締め切りまで一週間しかないのに、まだ二五〇枚以上も書かんと話が終わらんのであった。いったいどうするんだ、まったく。
ううむ。この手の話は、あまりふかく考えない方がいい。それはそれとして。
「鳩よ!」という雑誌の最新号をぱらぱらとみていたら、金子隆一氏の名前と写真が眼についた。この月の特集が「記録魔」で、さまざまな人のデータ整理の方法を哨戒していたのであった。金子氏の場合は知る人ぞ知るの恐竜関係データベースで、学術論文や取材で撮影した写真などの整理方法が書かれていた。
なるほどなあ、何ごとも一流になる人というのはちがうもんだわいと感心してページをめくっていったら、いきなりドクター中松の写真と遭遇した。「四〇年ちかくその日の食事を撮影しつづけてきた。その結果、頭においしいメニューはどうたらこうたら」と例の話が書かれていた。四〇年間データを採取しつづけた努力には素直に敬意を表しますが、何十年も記録をとったところでサンプルはたった一人の人間なんでしょう。金子氏のデータベースと比較するのは、ちょっと無茶な気がするなあ。
ところがそう思ってさらに別のページをみたら、今度は「路上観察家 林丈二さんの方法」とあってのけぞってしまった。林丈二さんですよ、あなた。最近はこんな名前が流行しているのだろうか。
あ、それで思いだした。これも最近ぱらぱらめくっていた雑誌の話。大場惑氏も寄稿しているパズル雑誌といえば、マニアには有名な存在でしょう。この雑誌は手に入りにくいこともあって滅多に買わないのだが、たまたま近所の書店でみつけて買ったら今度もいきなり「谷克二×谷恒生×谷甲州」という文字が眼にはいった。なんとなく「やおい系のかけざん」という言葉を思いだしてしまった。普通は「×」の前にあるのが「攻め」で、後ろに書かれているのが「受け」になるらしい。なんのことだか、よくわからんのだが(三人になるとどういうことになるのか、さらにわけがわからん)。
いやそんな話をしているのではなかった。このパズル雑誌のクロスワードをちらちらとみていたら横のカギのひとつに「ドクター中松の代表的な発明品」というのがあった。字数をかぞえてみたのだが、どうも「しょうゆちゅるちゅる」とはちがうようだ。実は正解はフロッピーディスクだった。おいおい。「発明品」の意味を、ただしく理解していないんじゃないの。この問題の出題者は。なんにしても「フロッピーディスク=ドクター中松の発明品」というのは、すでに既成事実になってしまったようだ。たぶん遠くない将来には歴史的な事実になって、教科書にもそう記述されるのだろう。感心ばかりもしていられないが。