こうしゅうでんわ

谷甲州

 これまであまり意識しなかったのだが、ホラー小説がはやっているらしい。流行とはいえ甲州とは関係なさそうだし、それほど真剣に読んだジャンルでもないので気にしなかったのだが、最近になって急に向こうの方から近づいてきた。中間小説誌からつづけて二度「ホラーの短編、書きませんか」と話がきたのだ。別に実績があるわけでもないのに、おなじような枚数のおなじような話を別々のところが書かせようというんだから、流行はかなり本格的なようだ。当時のことを実際に知っているわけではないが、SFがブームになったころも似たような状況だったのかもしれんなあ。そういえば中間小説誌にのるようなSFとホラーは、なんとなく似ているような気がせんでもないし。
 いまは中間小説誌からSFの仕事がくることは絶無だが、ショーとショートなどの依頼はいまでも定期的にくる。でもホラーやショーとショートというのは、SF仕立てにしないで話を組み立てるのは非常に困難だったりする(甲州の場合は、です。あくまで)。なんだ、SFは売れないとかいいながら、ちゃんと地下の深いところで息づいているではないか。SFの間口は結構ひろいから、ここから新しい何かが生まれる可能性もあるのかな。
 ということで、年に一度の小説クラブのお仕事は、今年はホラーになりました。今月末ごろの雑誌には掲載されるでしょう。もうひとつの依頼は、仕事がつまってるので断りました。編集者が横柄だったせいもあるが、それは口にはださん(当たり前だが)。

 雑誌といえば、小説すばる誌にごくごくみじかい原稿を書きました。たったの二〇〇字だが、こんなことはきちんと書いておかないと忘れてしまいそうだ。画報をメモ代りにつかって申し訳ない。ほかにも百人の作家から(五十人だったか?)みじかい原稿を集めたらしいから、興味ある人は読んでみてください。さすがに立ち読みしろとはいえない。
 なんかこの一ヵ月間、みじかい原稿をずいぶんと書いた。多いはずで、六月から七月にでる本三冊にみんな後書きを書いた。『覇者の戦塵』なんかは後書きのほかに「著者の言葉」なんてのもある。このほかFCSの原稿やら小説すばるのみじかいのやらを書いて、あ、そういえば北國新聞の夕刊にもたのまれて原稿を書いたのだった。手元に実物がないので、日付がわからない。日付がわかっても、もう入手は困難だと思うが。そういえば半年ほど前にも、朝刊に近況を書いたような気がする。あれは半年ほど前か。いや待てよ、そういえば大阪工大の学内新聞にもインタビュー記事がのった。こっちは今年に入ってからか。みじかい記事をいっぱい書いたので、自分でもよくわからなくなっているのであった。これまでにも、ずいぶん散逸した記事があるよなあ。

 ところで! おかげさまで『終わりなき索敵』が増刷になりました。発売当初から「もう一息」なんてことをいってたのが、星雲賞が(ありがと〜)きっかけで早川書房も頑張ってくれました。めでたい、めでたい、と(いえ、もちろん星雲賞もめでたい。でも本音をいうと、増刷はもっとめでたい。別に星雲賞を軽んじているわけではありません。賞の得票数より増刷された本の冊数の方が多そうだから)。あ、初版の誤植を指摘してくれた池田[航空宇宙軍医科学校図書館司書(誤植してねーだろな)]明子様、ありがとうございました。二版ではしっかり修正しておきました。




● 戻る