こうしゅうでんわ

谷甲州

 最初におわびと訂正。先月は五月ごろと書いた『覇者の戦塵』の新刊ですが、はやくて六月末、たぶん七月末くらいになりそうです。実はまだ書き上げていないのですが(な、情けない……)、それが理由でのびたわけではありません。どっちかというと刊行がのびたので、書き上げるのに手間がかかっているというだけです(おなじことか)。予定がのびたのは営業的な理由なのですが、つい「時間に余裕があるんだから、もうちょっと話をふくらませてやろう」などというスケベ根性をだしてしまいました。だから今回は、いつもより本文がながくなると思います。おかげで後半部分の構成を全面的につくりかえることになって、四苦八苦しております。予定では満州の荒野を戦車部隊が突進することになるのですが、どういうわけか泥濘地にはまり込んだ戦車をブルドーザで引っぱりだすという情けない場面を最初に書いてしまった。甲州の書く戦車戦なんて、まあこんなもんですが。

 もうひとつ、おわびと訂正。覇者の戦塵が終わったあと書くつもりだった機動傭兵の話は、秋以降に延期(こっちも未定)しました。それまで何をやるかというと、四年前から書いては中断していた冒険小説を完成させるつもりです。とはいえ、いままで何度も完成させようとしては挫折してるので、今度もどうなるか予測できません。一〇月に本がでなかったら、「また駄目だったか」と思って笑ってください。本人は今度こそ腰をすえて書いてしまうつもりなんですが(去年のいまごろも、おなじことをいってたなあ)。

 それに関連した話。SFアドベンチャーで書いたままだった短編が、まとめて本になりそうです。いまの予定では非宇宙小説が八月ごろ、宇宙小説は秋以降の刊行になるはずです。実は計算してみたら、両方あわせて単行本未収録の短編が二三作あって分量が一、〇〇〇枚以上あった。最新の短編でさえ五年前のだから(!)、本にするにあたってかなり書き直しが必要かもしれない。なんにしても、やれやれ、です。その打ち合わせのとき編集さんと話していたのですが、徳間書店はもう一度 SFをだしていく意思があるらしい。最初はアンソロジーからになると思いますが、その理由というのが「架空戦記が売れたから余裕がでてきた」(わはは)。「でも黒沢明の映画はこけたなあ」ともいってましたが。ちなみに、ちょ〜な本が売れたかどうかはききませんでした。

 あと、これは確定した話ではありませんが、早川書房も年間SF傑作選のようなものを過去にさかのぼってだす意思があるようです。日本SFの未来は意外に明るいのかもしれない。ただしここに書いた話はいずれも未確定なので(甲州の短編集はたぶん実現するが)、あんまりよそにいって話さんようにね。企画段階でつぶれる可能性もあるから。




● 戻る