あけましておめでとうございます。もっとも年を食ったせいか、新年になってもあまり感慨というものがありません。まあ今年もいつもどおり、ぼちぼちと仕事をしていきます。ということで年賀状をいただいた方には(そうでない人にも)、かさねて新年おめでとうございます。ということで去年の収支決算やら近況の報告など。
とはいえ去年の一月にはどんなことを書いていたのか気になったので、昔の甲州画報をだしてみた。それによると「かなりのハイペースで仕事をしているので、以前からの懸案のいくつかは年内に片付くであろう」などと書いていた。とりあえず前言を撤回します。たしかに去年の前半は一昨年のペースを守ってかなり仕事をこなしたのだが、後半になると息切れがして仕事量が急におちこんでしまった。ノベルズなどせかされる仕事は後回しにして、時間と手間のかかる書き下ろしをとにかく片付けようとしたのが失敗だった。結果的にはほとんど仕事がすすまないまま、半年を呆然とすごすことになってしまいました。そんな事情で、いまはペースをとりもどすべくノベルズの仕事にかかっているところです。五年ごしになってしまった冒険小説の書き下ろしは、すくなくとも今年後半まで中断ということになります。しかしなあ。そのための時間を三カ月もとったのに、できた原稿がたったの三〇枚というのはいかにも情けない。ほかの仕事もやっていたのだから、決してさぼっていたわけではないのだが。今年はかなり頑張らないと、また来年の正月にもおなじことを書きそうだ。
それはともかく、いまやっている仕事は『失われた過去への旅』の修正と『覇者の戦塵一九三三』の書き下ろしです。予定どおりなら『失われた−』は三月ごろ書店にならぶはずです。ただし! 発行部数が相当にすくない。どれくらい少ないかというと、『星の墓標』と『仮装巡洋艦バシリスク』の増刷された部数の七割という数字です(ちょっとややこしいか。ええい、書いてしまえ。内緒だけど)。つまり文庫本はそれぞれ五千部ずつ増刷されたけど、『失われた−−』は初版本が三千五百部くらいになるはずです。なかなかみつからんなあ、といってた『終わりなき索敵』でさえ初版六千部だから、かなり根性をいれてさがさないとみつからんかもしれません。とはいえ連載中から岳人誌を定期購読していた人もあまりいないだろうし(実はいたらしいが)、初版本はあとで値打ちがでるかもしれないから買って損はありませんよ、と宣伝しておきます。定価は二千円を下回るはずです。それにしても、不景気な話だ。
もう片方の『覇者』の方は、オホーツク海戦から二年ほど前の満州の話になります。おとなしく海戦の話を書いておけばそこそこ売れるのに(この種の本は、表紙に軍艦がのっているだけで売れ行きが急にのびる)、また陸軍の方へ話をもっていくんだから我ながら酔狂なことです。しかしこの時期の話をいま書いておかないと、あとで全体の構成がこんがらがりそうなので。海戦の好きな方はしばらく辛抱しておつきあいください。
そうだ。先月の甲州画報をみて、かなり昔に小松左京氏が飛ばしたギャグを思い出した。連合艦隊司令部からの暗号電報を手にした南雲長官は、眉間に皺を寄せていった。「困難な作戦ではあるが、万難を排して成功させなければならない。皇国の興廃この一戦にあり」。そして空母赤城を旗艦とする機動部隊は針路を南にとり、南下したのち台湾に上陸を敢行、「連合艦隊に不可能の文字はない」を合言葉に、数十の艨艟もろとも最高峰新高山(にいたかやま)の登頂をはたし万歳三唱ののち下山した。というんだが、文章にするとなんとも間がぬけとるなあ。
それはともかく、『覇者』の書き下ろしが予定どおり終われば、春ごろにはまた
『軌道傭兵』のつづきを書くことになりそうです。前にこうしゅうでんわで「続編はもうないかもしれない」などと書きましたが、こういうことになりました。喜んでいいんだか悲しんでいいんだか、自分でもよくわからん。
ということで、また今年も頑張ります。