最初にお詫びです。一〇月にあるはずだった航空宇宙軍史フェアは中止になりました。画報紙上で予告したにもかかわらず約束をはたせなかったことについては、誠に申し訳なく思っております。しばらく謹慎したい気分でありますが、そうもいかんか。いまさらキャンプやダイナコンは失礼させていただく、では筋がとおらんものなあ。しっかし、みっともない話だ。
とりあえず、いま現在わかっている状況のみ書いておきます(編集さんとの具体的な話し合いの内容は−中略−ということで)。『仮装巡洋艦バシリスク』と『星の墓標』は、おそくとも一二月はじめごろまでには再版されそうです。正確な日程は、いまのところまだわかっていません。そのほかの文庫に関しては「とにかく書店の店頭で、『客注の短冊』を書いてもらってくれ。口頭で書店員に取り寄せをたのんでも、品切れといわれるおそれがあるから」とのことなので。再版の二冊以外は、だいたいそれで手にはいるはずだそうです(ただし『CB−8』はちょっと状況が別。これはまだ検討中)。ということなので、だれか実験してみませんか。編集さんに「書店でたずねて品切れといわれた人が結構いるらしいぞ」といったら、「短冊を切らんと確実じゃない」といわれたんで。客注でやっぱり駄目なら、それを根拠に交渉することにします。
ところで編集さんの思惑は「九五年にJA文庫のリニューアルをするので、そのときに表紙も一新した形で航空宇宙軍史を再版(というより新装版に)していきたい。現在の表紙をずらっと平積みすると、どれも似通った印象をあたえてしまうから」ということらしい。だから普通の再版(表紙はそのまま)は、なるべくさけたい意向のようだ。たしかに長期的にみればその方がいいような気もするが(『バシリスク』と『墓標』以外は、表紙の絵柄が似通っているのは事実)、作者として読者を待たせすぎることには抵抗がある。再版を待ってくれる人がいるとしてだが。 いずれにしても、最終的な状況はまだ固まっておりません。もともと早川書房は銀背の時代から手にはいりにくかった。SFを読みはじめた六〇年代の後半ごろなんかは、雑誌のオールタイムベストで知ったSFのほとんどが入手不困難だった。売れそうな本を見込みで増刷して、書店の棚を占領するほかの出版社よりは見識があるともいえるのだが。今の状態で「手に入りにくいカルト本の作者」でいるのも、なにかと気楽な気もするし。
もうひとつ、表紙に関すること。せっかくだから「表紙の一新はいいが、『最後の戦闘航海』の表紙は評判が悪かったぞお」といっておいた。ただし幸か不幸か、私自身は映画のギャラクティカをみたことがない。たぶん海外にいたときに放映したんでしょう。そのせいか書店で平積みされているのをみたときは、思わず「わー恰好いい」と感心してしまった。内緒だけど。ただ表紙をかえるといっても、横山氏があらたに書き直すこともふくめて検討することらしいので念のため。十年先や二十年先のことを考えれば、新装する方が正解のようにも思えるのだが。
それにしてもなあ。近ごろはどこの出版社もSFの出版には慎重になってしまった。くそ、どこのどいつだ。「冬の時代」なんて言葉をはやらせたのは。実体のないこの言葉のせいで、出版社がすっかり弱気になってしまったぞ。SFは売れないというのが既成事実になって、みんながそれを信じこんでいる。そのせいか、最近はSFの仕事がさっぱりこなくなった。「架空戦記を書いてくれ」という話だけは、げっそりするほどあるんだが(『覇者の戦塵』以外はことわってますが)。
ということで、今月は終わり。