こうしゅうでんわ

谷甲州

 最初に訂正から。前に「蒼穹の軌道爆撃隊」が7月10日ごろ発売と書きましたが、実際は25日ごろになるでしょう。理由は「出版社側の都合」ということになるのかな。もうひとつ。軌道傭兵(およびその関連のノベルス)は「軌道爆撃隊」で打ち切りになるかもしれません。まだ確定ではありませんが、可能性はたかいと思ってください。もっとも、制約のおおいノベルズを書きつづけるより、以前から書きたかった単行本書き下ろしに集中する方が自分にとって好都合ではあるのだが。参考までにこれから出そうな−あるいは書きたいと思っている書き下ろしをならべてみると。
 『終わりなき索敵』これはもう書きたしもおわったから、八月終わりにはまちがいなくでるでしょう。『サージャント・グルカ』いまのところ、雑誌(野生時代)掲載分に加筆訂正中。秋のはじめぐらいには本になるかと思います。『失われた過去への旅』岳人の連載はあと二回で終了。今年の終わりか来年のはじめには本にしたいところです。
 以上は雑誌に原型を書いたもので、ここから先が書き下ろし分です。実は何年も前から書くつもりだったのに、いきがかり上ノベルズばかり優先してとりかかれなかったのだった。『ウスリーの虎(タイガー)(仮題)』二〇世紀はじめごろの東北と朝鮮、それと沿海州(ついでに満州)を部隊にした冒険小説。構想だけは五年前からあったのだが。この夏にはなんとか時間をつくって、とりあえず第一稿を書き上げてしまいたい。『神々の座を越えて(仮題)』山岳冒険小説。『遥かなり神々の座』の続編。というより、『遥かなり−』で書ききれなかった部分を、あらたな構成で書き下ろすことになる。前にも書いたかもしれないが、『遥かなり−』を実際に書いたのは八三年から八四年ごろだった(つまりフィリピン在勤中の前半分)。五年あまり引き出しの奥にしまったまま放り出していたのを、まる五年ぶりに加筆修正したのが『遥かなり−』なので、刊行当時から出来具合には不満があった。だからまったく白紙の状態から、山岳冒険小説を書いていきたいと思っている。
 以上のふたつはいつ刊行になるかわからないが、ここから先はもっとわからない。とにかく、具体的に話がすすんでいる分だけでも書いてみよう。『まったくタイトルは未定』これは冒険小説ではない山岳小説。版元には「二年ほどしたら書くだけの余裕ができるかもしれない」とだけいっておいた。日本人登山家とネパール人と結婚した日本人女性が、カトマンドゥとヒマラヤを舞台に−−などと書いたら、いかにも安っぽいラブロマンスだなあ。作者としては現代の『氷壁』のようなストーリーをめざしているが、どうなることかわからない。あ、そういえば『白き峰の男』も本になる予定はある。これまで雑誌掲載した分に、あとひとつの短編を雑誌掲載か書き下ろしで追加することになるでしょう。
 こうやってみると、予定している仕事は非SFばかりだった。『軌道傭兵』も(いちおうは)SFではないのだから、あいた時間でやると考えればどうということはないか。多少ともSFらしさがあるのは『これもタイトル未定』。こっちの方は、版元に「あと二年半ほど待ってくれ」といっておいた。探偵が登場するサスペンス、になるのかもしれない。前世の記憶をもつ男の復讐と、人の心を読めてしまう探偵の話。道具だては古くさいが、やりようによっては画期的なストーリーになるかもしれない。
 そういえば「人の心を読む探偵」の話はSFアドベンチャーの初期のころに書いている。これ以外にも途中まで雑誌掲載してそのままになっていた連作短編はあって、たとえば第三期奇想天外には惑星開発をする土木技術者の連作があった。こっちは分量として半分弱しか終わっていないから、やるとすればかなり時間がかかりそうだ。それ以前に、本格SFを出版してくれそうな版元をさがす方が先か。とはいえ、いつかまとめてみたい。本格SFを書く人なんて、いまはめっきりすくなくなったから。
 公約ばかりしていても仕方がない。どこまでできるかわからないが、とりあえず頑張ってみます。もちろんSFの仕事も、機会をつくって(こっちから営業をかけて)やりたいところです。SFの仕事がくるのを待っていたら、いつになるやらわからんから。




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