やれやれっと。六月のはじめから山づみになっていた原稿を、なんとか全部かたづけて毎日を呆然とすごしております。事前に計算したときは「六月中に六五五枚」だったのですが、実際に蓋を開けてみると七月に三日ほど食いこんで書いた原稿が約五八〇枚ということになりました。少ない分はあっちで値切り、こっちで枚数を減らしてなんとか間に合わせたせいです。とはいえ、そんなに極端な減らし方はしておりません。雑誌掲載分に、少しばかり広告のしめる割合がふえた程度で。
一カ月の間にやった主な仕事は「野性時代」連載と最終部分の書き下ろし、それに『軌道傭兵』の書き下ろしがそれぞれ二〇〇枚強、連載が「SFマガジン」と「岳人」、あとは単発で「小説すばる」というところです(五枚未満の仕事は、この際、計算にいれず)。流行作家なら六〇〇枚くらいどうということはないのでしょうが、なにせ私は書くのが遅いのだ。ついでにいうと改行も会話も少ないから(このふたつをふやすと、簡単に枚数はふえる。ただし、内容はどんどん希薄になる)、さらに生産量は少なくなる。不思議なことに、しんどいときほど会話や改行が少なくなってきて、だからSFマガジンみたいに翻訳が多い雑誌はそうでもないが、野性時代をみていると自分の書いた部分だけ誌面が真っ黒けになってしまった。うーん。原稿料を枚数ではなくて文書のファイルサイズで計算してほしい、などというのも、せこい話だわなあ。
というわけで、七月の終わりには『軌道傭兵−4』と『オホーツク海戦−覇者の戦塵1935』の二冊がめでたくでます。あわててつくったから誤植があるかもしれませんが、その場合は大増刷する段階で修正すると考えていただいて、誤植つきの初版本は希少価値になるぞ、と考えるように。実際、どんなポカをやってるか、できてみんことにはようわからん。
それはそうと、野性時代の誌面がここ半年ほどで相当にかわるそうなんで、覇者の戦塵の連載は八月号かぎりで終わると思います。書籍の編集担当者もいれかわったので、シリーズの今後がどうなるかよくわかりません。あれこれと不穏な話もあるので、面白いといえば面白いのですが。最初の予定どおりなら、その次の『覇者の戦塵』は来年一月ということになります。せっかくだから中断していた冒険小説を、少しでも書き進めておくか。
あんな無茶をやったあとだから、次の一カ月くらいは例によって使いものにならんかもしれん。それでまた八月になってから、死ぬ思いをするんだよなあ。仕事に波がなければ流行作家になれそうな気がするが、どんなもんだろう。