いつもおそくて申し訳ない。今月は多少余裕があったはずなのに、結局はぎりぎりのこうしゅうでんわということになってしまいました。先月はがんばりすぎたせいか、今月はどうも不調です。今のうちに仕事をすすめておかないと、来月に地獄をみるのはわかっているのですが。
ちょっと前、「SFAにハードSFを売りこむのは、かなりの努力が必要」などということを書きましたが、うまい売り込み方法をみつけました。思いついてみると実に簡単なことで「中国がらみのハードSF」を書けばいいのです。書店にいってじっくり本棚をみているとわかりますが、徳間書店というのは中国関係の出版物が多いことに驚かされます(というより、売れそうにない本でも中国関係なら出してしまうというべきか)。映画の「敦煌」や「未完の対局」(だったかな?)なんかもそうですが、徳間書店の社長はよほど中国が好きらしい。
それならハードSFを単体で売り込むのではなく、付加価値として中国をくっつければよかろうということで「道の道とすべきは」ということになりました。ところがその前の「雨の戦線(サージャント・グルカ2)」に時間をかけすぎて(というより、そもそも最初から予定が無茶苦茶につまりすぎていた)、「道の……」の80枚を書くのに三日しかかけられず、できたあとでみたらごく普通の一般SF(ジャンルわけ不能というほどの意味)にしかなりませんでした。それにしても、二五日発売の雑誌なのに最終入稿が一九日の午前四時という外道さ! こんな無茶をする奴はほかにおらんだろうと思っていたら、入稿後の編集さんの話によれば「これで遅れているもう一人の方の原稿に専念できます」とのこと。なんでもこの編集さんは、心労のあまり交通事故をおこしたとか。責任の一端は俺にあるのかなあ。
さて実際に刷り上がったSFAをみて、びっくりしてしまいました。私のほかに、「中国ファンタジー」を書いた人が二人もいたから。そういえば高橋克彦氏のもそうだし、酒見賢一氏は後宮小説の人だし、田中芳樹氏や夢枕獏氏も中国ものを書いていたなあ。それによく考えてみたら、自分も去年の夏に「時の檻」という秦の始皇帝がでてくる宇宙SFを書いていたのだった。なんのことはない、徳間書店に媚を売るつもりで中国SFなどというものを考えたが、実は歴史の必然でそうなっていたのか。
なんだか恐ろしい話だなあ。
ところでマル編(当然ながらこの字はでてこない。変換たのみます)氏によれば、「道の……」はハードSFなんだそうで、なんやらわけがわからずに呆然としています。とはいっても私自身に明確なハードSFの定義があるわけではなく、ただ漠然と「ハードSFを書くには最新の学術論文や専門書を一メートルばかりの高さにつみあげて、それらをすべて読破したあとにやっと三〇枚ほどの短編を書くこと」みたいに考えていたわけで、それからいうと「道の……」はやはりハードSFにはならないことになります。書くための参考書としてもっとも重宝したのは「要説 諸子百家・文章(老子ほか)」という本で、つまり高校生用の学習参考書なのでありました。
それにしても、学習参考書というのは実につかいやすくて便利なものです。一応はそれらしく「中国の思想 第六巻 老子 荘子」(徳間書店だった)などもそろえてみましたが、あんまり使い道がなかった。やはり大量の需要があるところにはいい本ができるようで、今度はいちど生物や物理の学習参考書などにもあたってみようかと思っています。こんなおもしろい本を毎日読破している高校生は実に幸せな気もしますが、実際にはそうでもないのだろうなあ。当たり前か。
ということで、今月はおしまい。来月はちゃんと書けるかなあ。