こうしゅうでんわ

谷甲州

 へえへえ。こうしゅうでんわです。

 たったいま、アドベンチャーの原稿の、最後の部分を送稿したところです。これからワールドコンの資料をつくらないといかんのだが、とりあえずはゆったりした気分になっております。原稿を入れたのが17日の午後4時ごろというのは、私としてはワースト記録でした。これまでは一応10日ごろをめどにして、どんなに遅くても13日には入っていたのですが。もっとも堀さんみたいに、17日の晩まで酒を飲んでて、18日の朝に書き上げたというひどい人もおりますが。今回そのことを考えてたら、どうしても仕事に緊迫感がなくなってしまって困った。18日までは、まだ何日あるからまだ大丈夫などとつい思ってしまって。なんにしても、18日の夜までかかってたら確実に落ちるので、どっちに転んでもSF大会には参加してたでしょう。幸か不幸か。

 ともあれ、今度だけは徹底的にしんどかった。話をひろげすぎた上に、80枚の分量に長編ひとつ分のストーリーをつめこんだという無茶なことをやったので、本当に死ぬかと思った。どういうわけか今回はパソコンのプリンタがぶっこわれていたので、毎日10枚書き上げるごとにメールで送るというぎりぎりの作業になってしまいました。編集者がニフティの会員というのも考えものだわな。仕事をさぼって書き込みをしてたらすぐにばれてしまうし、メールで催促はされるし。この先そんな編集者がふえたら、SENDで原稿の催促する奴が出てくるかもしれん。かなわんな。

 ところで『遥かなり神々の座』は、ちょうど今日あたり本屋にならんでいるはずです。表紙はヒマラヤの遠景写真で、装丁もきれいだし気に入っております。中味を書いたのは、6年もまえだけど(ただし、今回全面的に書き直しましたが)。ところでこの本の著者近影は、昔ネパールにいたころのものをつかってます。表紙写真を借りにヒマラヤ協会の事務所にいったとき、白黒ネガがあったので編集さんがもって帰ってきたんだが、これがまたえらい迫力のある写真です。迫力の点でいうと、かの石飛卓美先生がトクマノベルズなんかで使ってた写真(ルーレットを前に、にまにま笑いをしてる例の写真)にも負けておりません。まともに勝負したら勝つんやなかろうか。
 それでこの写真の横に著者略歴とかがあって、著者名がひらがなで書いてあったりする。それをうちの子供らがみつけて、「わーい。たにこーしゅーう」などと俺を指さしてはやしたてやがった。家の中だけど、なんかすごく恥ずかしかった。恥ずかしいのでそっぽをむいたら、あとを追いかけてきてまだ「たにこーしゅー」などとぬかしやがる。ええいこの親不孝もんが。

 わっ。気がついたら明日はもうSF大会か。ワールドコンの出発まで、5日しかないではないか。なんかわからんけど、ちょっと焦ろう。




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