甲州画報とアフターレポートとどきました。
ところでアフターレポート表紙のアクエリアスをみながら考えたこと。 本体左上の球体だけが、なんで天地反転して地球を写してるのか、最初みたときにはよくわからなかった。じっくりみているうちにやっと気がついた。これは球体ではなくてパラボラなんですね。アクエリアス本体の方は紡錘型の質感がきちんとでているだけに、これがパラボラだという感触がなかなかつかめなかった。ただパラボラ面に天地逆転した地球が写っているということは、視点の高度はかなり低いということになるのかな(視点の位置をずっと後方に引くと、パラボラ面には球体の地球が写ることになる……のかなあ。ようわからん)。もっともそんなにアクエリアスから離れてしまったら、そもそも絵にはならんか。
もうひとつ。アクエリアスが竣工したのは戦前のことで、そのときの設計思想はレ
ーザ砲戦にたえうる艦型をつくることだった。だから竣工時におけるアクエリアスの外観は、 1.照射されたレーザのエネルギーを反射する鏡面のような外壁の仕上がり、2.外壁で反射したレーザ光による損害を避けるために、突起物のほとんどないスマートな外形、が特徴だった。ところが実際の外惑星動乱における戦闘は、ほとんどが爆雷の投げつけあいでおわってしまった。この場合、レーダー波まで反射してしまう外壁の鏡面仕上げというのはかえって不利になる。ということは、戦時中にかぎっていえばアクエリアスは外壁を電磁波吸収剤で塗装していた可能性もある。
ということです。ただし戦後になってからは、最初の鏡面仕上げにもどった可能性もあります。平時におけるショーイング・フラッグ効果を考えれば(さらに警察行動という任務の性格を考えれば)、かえってレーダーで発見されやすい外面仕上げの方がよかったのかもしれない。つまり、アフターレポート表紙のアクエリアスは、戦後の改装をおえたころのものだということになります。
こんなことをごちゃごちゃ考えるのは、地球上における実際の戦闘艦の例があるからです。戦争や事故で沈まないかぎり、戦闘艦というのは竣工後もどんどん改装されて、最初の艦型とはまるで違うものになることが多い。日本海軍の戦艦金剛なんかは、日露戦争の戦訓をとりいれて設計されたもので(もちろんこれは、ドレッドノート以後)砲戦時の艦上構造物の倒壊による被害をさけるために、竣工時の艦型は実にシンプルだった。最終形態と共通しているのは砲塔だけで、ほかにはやたらに高いマスト(通信機の性能が悪かったから、マストの高さはあとのものよりずっと高い)が二本、ひょろひょろと立っているだけだった。艦橋なんかは砲塔とマストのあいだに立てられた小屋みたいなもので、煙突のまわりも実にシンプルだった。
ところが第一次世界大戦におけるジュトランド海戦以後、長距離砲戦にそなえた改装をおこない、ワシントン条約の主力艦建造制限のあとは近代化大改装をおこない、さらに出師準備工事やらなんやらをやっているうちに、天守閣みたいながっちりとした艦橋ができてしまった。だから当時の戦艦の写真は、艦橋のまわりの探照灯やら対空機銃の数、さらにレーダーや航空兵装が装備されているかどうかで、撮影された年がわかるというわけです。
このように平時における戦闘艦は、時代とともにどんどん改装されていくのです。だから『エリヌス』以後のアクエリアスの改装状況なんかは、はやいうちにまとめておかないとあとで混乱するかもしれんなあ。空母ミッドウエイなんかは、第二次大戦中に起工したのを少なくとも今世紀一杯はもたせるつもりらしい。つまり艦齢60年くらいは楽にもたせられるわけか。ニュージャージーなんかは、大和級に対抗して建造したのが巡航ミサイルのプラットホームに改装されてしまった。このあたりの検討は、航空宇宙軍史における今後の課題になりそうです。
それはそうと、この一カ月ほどあんまり仕事がはかどっていない。酒を飲む機会が多すぎたせいもあるけど、近ごろは書き下ろしのあいだに雑誌の仕事がちょいちょい割りこんでくるんで、どうも切り替えがうまくいかんようです。夏までに、もうひとがんばりというところ。
[編注:次のメ−ルは、阪本隊長のメ−ルに対する返信です。隊長のメ−ルは原文が隊長の手元に残っていないのでそのまま載せられないのですが、
- ニフティ・ネットで夏季甲州の「甲州は間違ってる」のネタを募集するので、そこは見ないで下さい。
- アクエリアスの装甲についてですが、「エリヌス」には「キイ一つで電磁波反射面から吸収面まで変化する」など書かれていますけど……
- なお、アフタ−レポ−トには「甲州は間違ってる・パ−ト3」になってたがよく考えてみるとこの企画はまだ2回しかしてないと思います。
というような内容だったそうです。
ちなみにアフタ−レポ−トの「パ−ト3」は編の間違です。ご、ごめんなさい……
ど−してそう思い込んだのだろう? ご丁寧にもアンケ−トの文面まで「パ−ト2」を「パ−ト3」に訂正、いや訂誤していたというおおぼけ確信犯ぶり。隊長は「この際次はあくまでパ−ト4だということにしよう。その方が面白い」と曰うていますので、私はきっといまや幻と化したパ−ト2(いやパ−ト3が、か? それも分らん)の亡霊に祟られるでしょう。「シュレ−ディンガ−のパ−ト2/3」という戒名をつけてあげるから成仏してください……つるかめつるかめ]
了解、見なかったことにします。ただし、見るだけはしっかりと見ておいて、傾向と対策をたてておきます。なんにしても、酔っぱらってしまったら同じだという気もするが。
アクエリアス外装の件、なんとなくそんなことを考えて書いた記憶はあります。またその程度の技術なら、開発はむつかしくはないでしょう。そのことのメリットに比べれば、という意味では。そのかわり「平時においては反射率の高い外装をほどこされ、全体が鏡のようにかがやいていた」という記述も「エリヌス−」にはあるわけで(文庫版のP449)、どうも最初のうちから混乱はあったようです。
そういえば、別のファンから「『砲戦距離12000』にあったミサイルというのは、爆雷のまちがいではないのか」という指摘をされたこともあったし、さがしてみたらそんなまちがいは相当あるはずです。もっとも『砲戦距離−』を書いたときには、まだ機動爆雷などという言葉はできていなかったのですがね。本当にこのシリーズも話がひろがってしまったために、一人で掌握するのが限界になってきました。そうするとやっぱり「甲州はまちがっている」でチェックするのが、有効かもしれません。「どこにいったら本が手に入りますか」というのも、なにかの役にたってるのかな。
それはそうと、私も「甲州はまちがっている」は過去二回しか記憶がありません。 それとも、酔っぱらってるうちに一回やったのかな。