こうしゅうでんわ

谷甲州

[甲州画報届きました]

 甲州画報とどきました。いつものように、楽しみながら読ませてもらいました。
 それにしても「闇討ち1号」には度肝を抜かれた。かなり無茶な設定なのに、細部はきちんとハードしているのがすごい。一発撃ったら砲身がばらばらにふっとぶというのが、なにやら末世的で雰囲気がよろしい(そういえば第一次外惑星動乱も、世紀末戦争だ)。書きようによっては、ちゃんとした弾体が移動するにつれて、砲身が後尾から爆発していく、というのはすごいイメージだ。ついでに母船もあおりをくらって、乗員が全員戦死するかもしれない。そうなると、特攻兵器になるのかな。
 岩瀬氏の「コロニー内の物体の運動」も、労作で楽しめました。読みながら「36000キロの墜死」を書いていたときのことを思い出しました。コリオリ力や「回転方向に走ると重力が増大する」云々までは押さえたつもりだったが、「雨が斜めにふる」になると、かなり冷汗もんでした。「拳銃なんかいくら撃ってもあたらない」とか「ちゃんと狙撃しようとすればレーザしかない」とかは、偶然にしてもちゃんと押さえることができたので胸をなで下ろしてます。そのうちに「谷甲州」のストーリーは、ここがおかしい」なんていうシリーズがはじまったりして。
 ところで「ヴァレリア3」は、やっと200枚をこえたところです。残りの百数十枚をあと10日ほどで書き上げる約束なんだけど、来週にはアドベンチャーのを80枚ほどかかなきゃならんし、はっきりいって綱わたりみたいなもんです。3で終るはずだったのに、ヴァレリアはまだ完結しそうにないし、次の予定は押してくるし。こうなったら、今月中にヴァレリア4をもう一冊分書き上げるしかないか。
 それはそうと、岩瀬氏は原稿不足で苦労しているようですね。メールという便利なものが使えるようになったので、私も近況報告くらい書けると思います。短い文章の場合、プリントアウトや封筒にいれてポストまでもっていく手間がはぶけると、ほとんど負担なしに原稿が書けます。どうせワープロは一日中使ってるんだから。そんなわけで、今月は10日すぎくらいになにかかいて送ります。 ヴァレリアの3が間に合ったか落ちたかの報告もふくめて。岩瀬氏のワープロは、RS232がついてないのかな。ついてたらもっと簡単になるのに。
 ええと、そんなわけでここ2週間くらいはえらく忙しくなりそうで、MY−CONというのは、いけそうにないです。ダイナコンも行けなかったし、申し訳ないから12月のクリスマスはやっぱりいこかなあと思ってます。
 ニフティのログを見ていたら、陰山という男が「俺も98を買うぞ」と書き込んでいたが、あいつのことかな、やっぱり。そのわりには、買ったような形跡はないが。ちゃんと就職は決まったのかな。

[近況報告]

 近況報告です。

 やりかけの仕事を全部かたづけてから、近況報告をするつもりだったのですが、16日になってもいまだにおわりません。とにかく、この一ヵ月間のことを報告します。


10月11日
 仕事をさぼってたら、角川書店から電話。「ヴァレリア・ファイル3は、どれくらいできてますか」とのこと。予定がおくれ放題なんで、つい多いめにいってしまう。「いま70枚くらいです」(本当は60枚だけ)。すると「それだけでもいいから、とにかく送ってください」といわれる。朝までかかって68枚まで書き上げ、ファックスで送った。
10月14日
 ヴァレリアの方はさぼって、「エリヌス−戒厳令−」のあとがきを一生懸命かく。たいした枚数でもないのに、ずいぶん時間がかかった。ヴァレリアの方は尻に火がついているのに、何をやってるのだ。
10月16日
 大阪から親父が出てくる。仕事をさぼって、一日中酒を飲んでた。
10月20日
 書き下ろしの仕事を終えたという松本富雄に呼び出されて、神保町で飲む。珍しいことに、一軒だけでお開き。いつもは二人でゲイバーに飲みに行くのだが。待てよ。そうか、やっぱりお茶の水の駅前で二軒めの酒を飲んでいた。あいつと飲んで、一軒でおわるわけがない。ヴァレリアの3は、時間ばかりかかって一向に進まず。
10月23日
 ハードSF研の会合に出席。ハードな話にどっぷりと使って、仕事せず。ハードな話を肴にのむ酒は、はじめてだ。ヴァレリアの3は、一向に話がさきにすすまない。さぼってるせいかと思ったが、そうでもなさそうだ。なんでこんなに時間がかかるのか。シリーズものの3作目なんて、惰性ででもかけるのに。
10月24日
 角川書店より電話。「できてますか。今週中にできたところまでを、また送ってください」できた分から印刷所につっこんでる状態らしい。前に送ってから、70枚ほどしかできてない。「今週中にもう100枚は送れるでしょう」といっておく。本当は120枚はいけると思ったが、前のこともあるので少ないめにいっておく。
10月27日
 SF作家クラブの総会およびパーティー。がんばって酒をのんでたら、あんまり仕事をやってないのに気づく。
10月28日
 ヴァレリア3を送る約束の日。できてるのは、たった88枚。前の分とあわせて156枚だけ。我ながら情けない話だ。編集屋さんと電話で話す。「残りの分は、あとどれくらいかかりますか」しばし絶句。あまり期待をもたせては悪いと思って(しかし希望的観測も入り交じって)「あと3週間」といっておく。「それでは、間に合いません」といわれた。もう少しあせることにする。
 ところで編集屋さんがこんなことをいっていた。「このストーリーは、この一冊だ けで終わりますか」ヴァレリアのシリーズは、3で終わるつもりだったのだ。「そのつもりだったんですが、ずいぶん話が広がってしまったんで」と答える。すると「そうでしょう」もう一冊、ヴァレリア4までやりますか」といわれた。そうすることにする。実はヴァレリア3のストーリーは、月面上の都市からはじまっているのだ。アストリア市だけなら、もっと楽だったはずだった。
 ここではたと気が付いた。どうして時間がかかるわりに話がすすまんのか。なんのことはない。半分以上ストーリーが進んでいるとばかり思ったら、まだ話の序盤なのだ。これでは枚数がのびるわけもない。そう思ったら、急に気が楽になった。話を無理におさめようとするから時間がかかったのかもしれん。この際だから、開き直ってもっと話をひろげてやるか。

 この日から、禁酒開始。

10月31日
 ヴァレリアの原稿を46枚送る。ひらきなおったら、3日で46枚もかけてしまった。合計200枚になった。
11月7日
 このごろ角川さんから催促の電話がない。徳間書店からたのまれた田中さんの「血と黄金」の解説をかいていた。ヴァレリアはなんとなくストップ。ようかんがえたら、SFアドベンチャーの原稿もかかにゃならん。ヴァレリアの3がかなり調子が出てきたが、一時ストップ。
11月11日
 のんびりかまえてたら、アドベンチャーの原稿「コズミック・ピルグリム」が一向にすすまない。原因ははっきりしている。コクピット小説だからだ。「タイタン航空隊」の時もそうだったが、コクピットの中でパイロットがひとりでいる小説というのは、やたらに書くのに時間がかかる。理由は、1.会話がない。2.動きがない。ことにつきる。枚数をふやそうと思ったら、登場人物におしゃべりをさせるか走らせるかだ。宇宙小説というのは、この手のごまかしがきかない。普通の小説の、倍は時間がかかる。しかも、読者から間違いを指摘されることが多い。
 それでも「タイタン航空隊」でこりたもんだから、かならずコクピットにAIを搭載することにしている。AIとの間で、会話があるからだ。ほかの人たちは、どんな手をつかっとるのかなあ。つぎのアドベンチャーは、宇宙SFの特集だそうだから、他人のやり方をのぞいてみるか。

 締切がすぎたこの日、とりあえず36枚だけ原稿を送る。禁酒をはじめて、すでに2週間になる。

11月13日
 やけくそで昼間から酒を飲む。その勢いで「コズミック・ピリグルム」をかきあげる。全83枚。ただし、原稿の約束は80枚。3枚ほどオーバーした。
11月14日
 朝からはみ出した3枚を削る作業にはいる。しかし、全体を見直していると、書き足りないところがでてくるもんだから、結局5枚以上削ることになった。わが身を切り刻むがごとき快感の末に、80枚目の最後の1行でおわるところまで作業を進めた。後半分の44枚と8行を送ってやれやれ。これで、中断していたヴァレリア3にかかれる。
11月16日
 久しぶりに角川書店から電話。「ヴァレリア3のサブタイトルを、教えてください」
 原稿のできぐあいを聞かんところをみると、年内出版はあきらめたかなと思いつつ、75枚ほど送る。合計275枚。残りは60枚前後。この調子なら、今週中にできそうだ。結局、前の約束どおり、3週間目の完成になりそうだ。

 というところで、本日分までの報告です。かなり長くなったなあ。ちゃんとおさまりますか? 
 ヴァレリア3が完成したら、追伸を送るかもしれません。 しかし、角川の人にみられたらまずいなあ。

ダグ&エレナ




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