六年ごしの仕事になった『ナンダ・コート(仮題)』を、ようやく書き終えて茫然としております。ところが何年も原稿をいじってたもんだから、最終章の最後の一行を書き終えても仕事を終了したような気がしない。余韻が残っているせいで、未練たらしく原稿を画面に表示させたりしておりました。で、結局は丸四日かけて全面的に文章を書き直してしまったり。それでもまだ踏ん切りがつかずに、画面上で原稿を読み返しては校正作業の準備などをやっております。なんというか、やり残したような気分があるのだな。気分を変えるつもりで、仕事場に散乱している資料の類を片づけたのだが、整理用のコンテナ一杯に資料を詰めこんでもあんまり仕事場が綺麗にならない、というのはいつものことか。
しかしまー。よく集めたものだ。資料のほとんどが入手困難な本なのでコピーを多用した、という話は前に書いたが、入手に関しては各社の編集さんの手をわずらわせました。版元の角川書店は当然としても、毎日新聞社とか(次の書き下ろし予定。当時のヒマラヤ登山に同行したのが大阪毎日新聞の記者だったので)とか中央公論新社(資料が手に入らんので『覇者の戦塵』が進まんよーと泣き言をたれたら、絶版になってた中公の本を見付けてきてくれた)とか山と渓谷社(知りあいの編集者に、在庫僅少な自社本を探してもらった)とかは、かなり外道かもしれない。一応は自分でも探したのだがな。たまたま入った神保町の古本屋でみつけたりとか、小松市立図書館の人と話してたら別の図書館の蔵書を検索してみつけてくれたりとか、あれ、やっぱりこれは他力本願か。
ということで、夏ごろか遅くとも秋のはじめには本になるはず。原稿に六年もかけたんだから、手間と時間をかけていい本にしたいところ。もっとも著者のやるべき仕事は、そんなに多くないのだけどな。『覇者の戦塵』を別にしたら、もう六年も書き下ろしの本は出してないのか。最後のハードカバー書き下ろしが『神々の座を越えて』だったか。なんか書き下ろしというと、山の話ばかりになってしまったな。そのもうひとつ前は『ジャンキー・ジャンクション』だし。
おっと。書くのを忘れてたが、ナンダ・コートというのはインド北部の山の名前です。戦前の日本で一度だけ実現したヒマラヤ遠征の山。知っている人は知っているが、そこそこ名前の通った山ではある。ちかくにナンダ・デヴィとかナンダ・カートとか似た名前の山があるが、これは別ものなんで間違えんように。普通の人には、あんまり縁はないか。