こうしゅうでんわ

谷甲州

 二月に入ってしまったが、あいかわらず仕事は遅々として進まず、気分転換に「仕事が終わったらあれやって遊ぼう、これをやってみよう」なんてことばかり考えているものだから、それに時間を食われてさらに仕事が遅れるという悪循環をくり返しております。二週間ほど集中して時間がとれれば、『ナンダ・コート』を一気に片づけられるのだがなあ。あと、これは前にも書いたが、資料が戦前に刊行された本や絶版本のコピーばかりなんで、場所をとって仕方がない。スキャナで取り込んでテキスト化してしまえば検索もできて楽なんだが、もうすぐ終わる仕事のために資料の整理からはじめるのも面倒な話で。とはいえ、これからやる仕事のこともあるので、スキャナとOCRだけは用意したのだが、これがまたパッケージのまま放りだしてあるものだからさらに場所ふさぎになっていると。まったくもって、何をやっておるのか。

 多少お知らせめいたことを書いておくと、中央公論新社の電子文庫パブリでは、四月ごろから『覇者の戦塵』や『ヴァレリア・ファイル』も電子書籍化される予定です。最初の『軌道傭兵』のころは入手困難な書籍の電子化という雰囲気が強かったが、この先は紙媒体の出版と並行して電子書籍も公開されていくみたい。つまり『覇者の戦塵』の新刊が書店にならぶころには、PDFも同時にダウンロードできる体制になっていると。すでに一部の本ではそんなやり方になっているらしいが、同時発売しても書籍の売れ行きが落ちることはなかったらしい。ふーん。ということは、電子書籍と普通の書籍は、特にマーケットは重なっていないということですか。まだ結論をだすのは早すぎるが、もしかすると意外に新しい展開がみられるかもしれない。これまでマイナーすぎて本にできなかった小説(とは限らないが)を、電子書籍で先行販売しておいて書籍の刊行を後追いさせるとか。

 ちなみに角川から移行した分の『覇者の戦塵』や『ヴァレリア・ファイル』は、角川版のサイズにもどして電子書籍化されます。つまり中公版『オホーツク海戦』正続や『ヴァレリア――』みたいに、やたら分厚くて値段も低くおさえました、みたいな本がそのままひとつのファイルになることはありません。というわけで、いま書店に出まわってる分厚い本は、みかけたらすぐに買うべきだと一応あおっておこう。




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