こうしゅうでんわ

谷甲州

 なんか急に涼しくなったなあ。一カ月の間に結構いろんなことをやったような気がするのだが、あっちこっちの仕事を少しずつ進めてる状態なんで形になってまとまったものがひとつもない。えーと、早川書房が2001年を記念して出す予定のアンソロジー(定価も2001円にするつもりが、さすがに営業サイドから文句をいわれて2000円に落ちついたらしい。どうでもいいことだが)に短篇を書いていたな。とはいえ本になるのは来年の話だから、鬼は笑うように。

 今回ひさびさに宇宙SFの短篇をやったのだが、軌道計算のやり方を忘れててえらく苦労しました。昔つかってた専門書やら理科年表を本棚の奥から引っぱり出したのだが、当時つかってた表計算ソフトがDOSで使いものにならない。そもそも相当に特化したフォーマットなんで、長いこと使ってないと何のために組んだのかもおぼえていない。仕方がないので、エクセルであらためて組み直しました。まーこれも、ぼちぼちと整備していくしかないか。最近あちこちの出版社で宇宙SFを出そうという動きが出ているので、なかなかに楽しみなことではある……のだが肝心の書く時間がとれない。SFの仕事が全然こんかった時期に、冒険小説やら歴史小説やら片っ端から手を広げてしまったせい。とはいえ、なんとかハードな宇宙SFも書きたいところ。あ、SFマガジンの連載があったか。うーむ、こっちの方は宇宙SFといいながら、大部分のストーリーが地上で終始しそう。とはいえせっかくの機会なんで、頑張って宇宙空間まで話を広げよう。

 あ、来年といえば『果てなき蒼氓』の単行本化も来年になりそう。なんだ、連載が終わってから一年もたってしまったな。甲州の文章はともかく水樹さんの絵は色使いが鮮やかなので、本のつくりにあれこれ頭を悩ませたのが遅れた原因か。というても、別に甲州は悩まんかったのだが。時間をかけただけあって、いい本になるはず。値段も納得できる額になると思います。話はずれるが、水樹さんのイティハーサ・ハヤカワ文庫版は、えらい勢いで売れているらしい。星雲賞が決まる前から増刷の嵐というから、これはやっぱり作品の力というものでしょう。まったくもって、集英社の担当は何をやっておったのか。あれだけの作品を、売る努力もせずに中断させようとするとは。なんてことを、甲州がここに書いても仕方がないか。

 あと、これは前に書いたかな。最後まで残っていた『覇者の戦塵』の角川版『謀略熱河戦線』と『黒竜江陸戦隊』の二冊は、十二月ごろに合本で出るはず。例によって、付録の短篇もつきます。まだ書いてないけど(また仕事がふえた)。最近のCノベルズ版は薄いめの本になってますが、この二冊を書いてたころは一冊が結構分厚かったな。Cノベルズ版の一・五倍はあったはず。ということは、二冊まとめると三倍以上になるのか。『オホーツク海戦』や『北満州油田』よりも、さらに読みごたえのある本になるでしょう。未読の方は、ぜひこの機会にどうぞ。




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