こうしゅうでんわ

谷甲州

 先月のこうしゅうでんわでは「頑張っても四月と五月に」などと書いていた『覇者の戦塵』なのだが、この分だと四月の刊行もあやしくなってきた。なんとか最後まで頑張ってみますが、なんとか間にあったとしても四月末奥付で実際に書店にまわるのは5月の頭とか、そんなことになりそうです。なんか今回は自分でも信じられんほど筆が遅くて、頭をかかえております。短篇仕事をやりすぎて、頭の構造が変化してしまったのかもしれんな。などとぼやいててもはじまんらんので、もうひと頑張りやってみます。実は全体の分量の、まだ三分の一しかできてないのだ。あと一週間で残りの二〇〇枚、できるかどうか。それが終わったら最後の四巻めに着手できるのか。えらいことやなあ。

 ところで前に書いた「SFバカ本」の原稿は、版元の廣済堂出版が手を引いてしまったので宙に浮いてしまいました。おなじ事情で「異形コレクション」も難民化したみたい。こっちの方は宙に浮いた原稿はないのだが、前巻あたりからSFの方にシフトしてきたんで残念至極なり。うまくいかんときは、こんなものか。「SFバカ本」にかけた時間を『覇者の戦塵』にまわしておれば、などと考えても仕方がないので前向きに踏ん張るしかないか。それにしても、なあ。抜き打ちで撤退するこたないだろ、廣済堂出版。何も知らされないまま必死こいて原稿書いたり、無理を承知で原稿を催促したものの身にもなってみろ。今後あの会社が何かいってきても、絶対に信用せんからな。

 などと怒ってても仕方がないので、少しは楽しい話も書くか、と思ったのだが別に何もないなあ(悲惨)。ええと、この話はまだ書いてなかったかな。前に「ヤマケイJOY」という雑誌に連載した「地図の彼方に」というエッセイが、中公文庫から刊行される予定です。たぶん六月刊。連載時には間にあわなかった山の写真なんかも入手できたので(ヒマラヤの雪稜を登攀する若き日の谷甲州とか、氷河の上で測量作業してるところとか。使うかどうかは、わかりませんが)。とはいえ、こっちも大幅に書き足す必要があるんで、どうなることかよくわからん状態です(うわー)。足りない分は、あっちこっちの雑誌に書いた山関係のエッセイで埋めるかもしれない。その点が、少しは目新しいか。なんだ、よく考えたらどれも中央公論新社の仕事ばっかりだな。




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