先日、甲州さんがNHKの『週間ブックレビュー(2003/11.9)』の、“特集・谷甲州さん、冒険小説を語る”に出演なさいましたので、その録画を観つつ、レポートさせていただきます。
日本の文学界では、久々の本格冒険小説の登場と注目を集めている『紫苑の絆』を書かれた作家の谷甲州さんは、本格冒険小説の他、山岳小説やSF小説でも高い評価を受けておられます。・・・と言うような紹介とともに、いつものブルーのワークシャツを着て、かなり緊張ぎみに画面に登場した甲州さん(ものすごい緊張が伝わってきて、観ているこちらもちょっとドキドキ・・・)は、なんか、いつもの、ぼくが何度かお会いしたことがある甲州さんとはちょっぴり別人のように見えました。
番組では、『紫苑の絆』のあらすじ等の紹介から、甲州さんがこの本を書こうと思った動機、そして、作品の裏話から作家谷甲州の紹介へと続いていきました。
その、「この本を書こうと思った動機はなんですか?」というインタビューに対し、甲州さんが、「寒い話が書きたかった」と言っているのを聞いた時は、甲州さんには申し訳ないんだけれど、ボクはちょっぴり笑ってしまいました。でも、『紫苑の絆』もそうですが、甲州さんの書く寒い話は、読んでいるこっち(読者)も、確かに寒くなりますからね。真夏に読むにはもってこい。でも、冬に読んだら凍えそう、なんて思ったわけです。
インタビューは、その後、青年海外協力隊時代の話とか、高校時代から小説を書き始めたんだよってな話も聞けました。また、アナウンサーさんが、「谷さんは、日本の作家の中では、もっとも高いところに登った作家なんですね」っていう質問と共に、ヒマラヤのクン峰(7077m)登頂の写真がTV画面に現れた時は、「おぉ!」っと、思わず画面に向かって拍手したりしました。海外生活時代の話の中では、フィリピンのマニラ時代に、家の前でピストルの撃ち合いをしていたことがあるなんてな話も聞けました。
さて、いくつかのインタビューの中で、もっとも印象の残ったものは、「谷さんは、SF小説でデビューし、その後、山岳小説や冒険小説など、色々なジャンルを手がけられていますが、ジャンルへのこだわりはありますか?」という質問かな。これに答えて甲州さんは、「色んなジャンルを書いているつもりはありません。SF、あるいは冒険小説や山岳小説でも、やっているコトは一緒です。ここではない、日常ではない世界をまず考え、その違う世界の中で登場人物を動かしたい。そういう書き方をしています。その異なる世界の中で登場人物達を動かし、その異なる世界が宇宙の深いところならばSF小説となり、山登り・冬山やヒマラヤなどの山の中を舞台にすれば山岳小説となり、人の生存を拒否するような大自然の中に登場人物をほおりこむと冒険小説となるだけで、やっていることは一緒です」と答えておられました。うぅ〜ん、いいなぁ・・・。
あと、「冒険小説を書いて、読者に何を訴えたいのか?」という質問には、「SF小説で言うところろの、センスオブワンダーというか、未知の世界を見せてその驚く感覚、異世界を覗く面白さを見せたい。冒険小説や山岳小説では、怖いけど美しい風景を読者に見せたいのだ」という答えに、甲州さんらしさのようなものが見えたようでした。
番組内で甲州さんが出演しておられたのは20分程度でしたが、番組では、『紫苑の絆』の紹介を中心に、甲州さんの人となりなんかが巧く伝わってきて、いい番組に仕上がっていると思いました。
谷甲州についてに戻る