人名録 - 紫苑の絆
- 綾乃
- 松濤の幼なじみで鍬形正吾の婚約者。
行方の分からなくなった鍬形の捜索を松濤に依頼する。鍬形正吾の帰国後結婚し、鍬形綾乃となる。
- イワノフ
- 鍬形正吾がロシアの国営農場で名乗っていた名前。
- 黄(ウォン)
- 郭大人配下の刺客。
大人の跡を狙っているが、野心が大きいだけの人物。ライバルの周を出し抜くため、松濤を連れて氷川に会いに行くが相手にされない。
茅島に手なずけられて松濤らの暗殺に加わるが、鍬形に打たれて死亡する。
- 小田桐経明
- 小田桐サトの夫で千佳の父。
日本陸軍を離脱して赤軍に身を投じたが、内線終了後、氷川らの部隊で笠間らと生活した後、脱走して朝鮮独立運動に合流する。氷川の命を受けた松濤と接触し、トーニャらを人質にして氷川の暗殺を命じる。
千佳の父であるが、再会した千佳を認識できなかった。
その後、ウルジンスク村事件で俘虜を連行してきた歩兵小隊長となり、祖父江中佐による捕虜虐殺に反対していた。逃亡した捕虜を追跡して待ち伏せ攻撃を受けて負傷したところをチャに助けられる。赤軍に身を投じた後、国境警備隊を脱走して抗日武装勢力の村に身を寄せ支援していたが、氷川の謀略で弱体化した組織から放逐され、松濤らと行動を共にする。単身師団政治部に押し入り、三人を殺した後で生け捕りにされ特務工作船に移されるが、松濤らの助けで娘の千佳と共に帰国を果たす。その後も一生のほとんどを大陸で過ごした。
- 郭大人
- 蘭子が松濤に紹介したウラジオストク中国人街のボス。吉岡・頭目のチェンと同一人物。
中国人を力で仕切っており、白系ロシア人との抗争を続けている。
怪我を負わされながらも松濤を捕らえるが、ゼレージンらに銃撃され死亡する。
- 笠間
- ソ連で捕虜となった元日本兵。
トーニャと深い仲になりロシアからの脱走を図るが氷川に阻止される。松濤の指揮下で弾薬輸送を行うが、襲撃してきた小田桐中尉に射殺される。
- カマロフ警部
- ロシア人の地区警察副所長。後にウラジオストクの警察署長。
郭大人の配下に襲撃された所長の家で松濤と出会い、田岡とともに利用しようとする。
ゼレージンの上司。郭大人の負傷に乗じて中国人組織と取り引きを行い、郭大人を追い詰める。
- 茅島
- 予備役将校。
清浦に鍬形正吾の捜索を依頼する。
ウルジンスク村での虐殺事件時点では騎兵曹長。竹橋隊に捕らえられた松濤らを引き取りに来る。松濤らの処理を田岡に任せて氷川暗殺に向かうが逆に射殺される。
- キム
- 松濤が氷川の命で小田桐少尉を捜索した時の先導役。
松濤と別行動をとっている時に敵部隊に襲撃され、拷問の上殺害される。
- 清浦
- 清浦謙治。松濤の軍隊時代の知り合い。
シベリアからの強制労働に日本の労働運動家を送り込む徴募請負人をしていたが、うまくいかなくなり鍬形とともにウラジオストクに向かう。過酷な労働に堪えかね、鍬形の金で自分だけ日本に戻る。訪ねて来た松濤を蘭子と引きあわせる。
その後、田岡とともにウラジオストクに渡るが、劉に殺される。
- グルンガ
- 朝鮮国境隊が駐留しているウデヘに住む猟師。
食料や毛皮を提供しているため国境隊も手が出せない。パクの手から逃れた松濤とトーニャ、小田桐少尉から預けられた千佳の三人をかくまう。
- 鍬形正吾
- 松濤の同郷の同年兵で綾乃の婚約者。
愚直な人物でシベリア出兵で上官の命令を無批判で実行し、周りからは浮いていた。予備役となり河西組の飯場に入るが、サトとともに逃亡。清浦とともにウラジオストクに渡ったらしい。
イワノフと名乗りロシアの国営農場に潜り込んでいたが、連の手引きで逃亡、周らと合流して朝鮮国境に向かう。途中で氷川らに追いつかれるが、氷川との密約でテンゲルとともに小田桐少尉暗殺に向かう。
追ってきた松濤と再会し、行動を共にする。松濤と共に陸軍特務工作船に乗り込み帰国する。帰国後、綾乃と結婚し、満州で暮らす。
- 佐々木一等卒
- ウルジンスク村での小田桐少尉の部下。
負傷したチャを俘虜収容所から自分の宿舎に移し手当てする。
- サト
- 小田桐サト。
千佳の母で、重蔵の妾として河西組の飯場にいた。鍬形正吾とともに河西組の飯場から逃亡し、信州の実家まで母を訪ねるが、すでに他界していると知り実家近くの納屋で病死する。
- シモノフ
- 蘭子の密輸船に乗り込んだロシア人。
表向きは国を捨てたロシア人となっていたが実際は蘭子らの組織に潜入したコミッサール氷川のスパイ。弾薬密輸の際に吉岡に殺される。
- 周(シャウ)
- 郭大人の跡目を継ぐ可能性が最も大きい人物。
日本語が話せ、郭大人から千佳の始末を任されている。鍬形正吾らと合流して朝鮮国境に向かうが、パクに襲われる。
松濤らから寝返って祖父江大佐と交渉しようとするが、その場で射殺される。
- 重蔵
- 河西重蔵。河西組飯場頭。
腕っぷしの強い棒頭を何人も抱えて人夫をこき使って遂道工事を行っていたが、落盤事故で松濤と生き埋めになり、格闘の末に松濤に殺される。
- 朱(ズー)
- 鍬形正吾の行方に関する情報を松濤にもたらした情報屋。
- ゼレージン
- カマロフが松濤らにつけた監視役でウラジオストクの警察幹部。
日本語に堪能だがそれを隠して尋問する。
瑪一家や松濤を利用して郭大人の動向をさぐり、郭大人を射殺し捕らえられていた松濤を助ける。
祖父江大佐の特務工作船を追跡するが、松濤との交渉で領海外退去を認める。
- 祖父江大佐
- 日本陸軍参謀本部の将校。
小樽の白系ロシア人を裏で操っている。小田桐少尉に重要な秘密を握られており、鍬形正吾に暗殺を命じる。
訪ソが決まり小田切少尉暗殺を急がせる。元特務機関の将校で、日本軍による参戦の口実を作るため琿春事件を引き起こし、その後、関与した者を捕らえてウルジンスク村で殺害し、全てを多賀谷少尉の独断専行という報告を行った。小田桐少尉や氷川らを捕らえるが、氷川によって暗殺される。
- 蘇蓮
- 郭大人の家で千佳の面倒を見た中年女性。
夫の瑪を病死を装って収容所から脱出させるが、ゼレージンに捕らえられ、取り引きをし、郭大人の動向をさぐるが、殺害される。
- 田岡
- 自称野槌の田岡。
東京で特高の手先として思想犯の取り締まりをしていたが、その後地方警察の密偵をして事件関係者から小銭を稼いでいた。重蔵の死に不審をいだいて松濤を追い、サトの実家で捕らえて拷問する。
松濤を追って清浦とともにウラジオストクにわたる。清浦が殺害されたあと、郭大人を一人で襲撃し、その影武者を殺害する。その後ロシア警察に捕らえられ、ゼレージンによって病院に収容される。
ゼレージンにより留置所から病院に移された後、氷川のいる軍の施設で下働きをする。
その後、竹橋隊に捕らえられた松濤らを殺そうとするが、仲間の黄の誤射により死亡。
- 多賀谷少尉
- 松濤らが軍隊時代に所属していた浦塩派遣軍の小隊長。
20代前半で経験は乏しいが積極的な部隊指揮でウルジンスクの村を占領する。戦闘中に銃弾を受けて死亡。死後に軍の命でウルジンスク村の戦闘自体が無かったことにされる。
- 竹橋
- ハバロフスクにおいて元日本兵で編成されたロシア軍の隊長。
ウラジオストクで松濤らを捕らえる。
- チェン
- 蘭子の密輸団の頭目。
- 千佳
- 小田桐千佳。一四歳。
母親の小田桐サトを訪ねて来た松濤を田岡の拷問から救出し、彼とともに父親が捕虜となっているウラジオストクに向かう。
松濤が氷川に同行したあと、郭大人のもとで暮らす。松濤と再会した後、郭大人の動きを張っていた田岡に捕らえられる。
蘇蓮の遺体を回収しようとする瑪を郭大人の家に手引きするが、鍬形が郭大人の家に出入りするのを見かけて後を追う。ようやく再会した小田桐少尉が自分のことを全く認識してくれないことにショックを受ける。
グルンガの小屋から氷川らに拉致され祖父江大佐らの陸軍特務工作船に捕らえられるが松濤らに救助される。帰国後松濤と結婚する。
- 千鶴
- 松濤と千佳の孫娘。
- チャ
- 朝鮮族反ソ勢力の若者。
少年時代にウルジンスク村の事件で捕虜となっていたが混乱にまぎれて逃げ出し、負傷していた小田桐少尉を手当てした。氷川の謀略により小田桐少尉を組織から放逐した後、部隊の指揮をとり松濤らを追撃するが、松濤の狙撃により死亡する。
- 忠七
- 河西組の下っ端の棒頭。
愚鈍だが怒りだすと狂暴。落盤事故から救出された松濤の面倒を見るが、トヨにかくまわれた松濤に殴られ逃亡されてしまう。
- 塚原弥吉
- サトの長兄。
サトをかくまうが彼女を追ってきた河西組の棒頭の行動で村での立場が危うくなる。サトを訪ねて来た松濤を持参した米と引き換えに一晩の宿泊を許す。
- 辻川
- ソ連で捕虜となった元日本兵。氷川の徴用により松濤とともに小田桐少尉の捜索に加わるが、終始自己中心的な態度を取る。捜索の足手まといになるため途中の小屋に返すが、馬の餌まで食べて生き延び、松濤を逆恨みする。
日本人小隊の小隊長代理となっていたが、竹橋隊長の着任により職を解かれる。竹橋隊長への引き継ぎを先延ばしにしているうち、接触してきた周を追って脱走する。一時周らと同行するが悶着を起こして猟師小屋に置き去りにされていたが、帰路の同行を許されウラジオストクに戻る。
- 常次
- 河西組棒頭。
重蔵の死後、飯場頭になる。重蔵の死をネタに松濤を脅迫して自分の配下として使おうとするが、逃亡される。
- テンゲル
- 氷川の部隊のブリヤート兵のリーダー。
氷川と取り引きをして討伐の中止を謀り、帰還の際に松濤の手当てをする。
氷川と対立しているようにみえるが、裏では何らかの盟友関係がある。
ブリヤート兵の利益を代表しており、氷川と組むことも松濤と組むこともある。
- トーニャ
- 笠間との間に子供をもうけたロシア人未亡人。
松濤による小田桐少尉の捜索に協力するが、逆に少尉に捕らえられて人質となる。
捕虜としてパクに連行されている途中、栄養失調で息子のユーリを亡くす。亡くなったユーリのことを罵った女を殺し、松濤と逃亡する。
グルンガの小屋から千佳と共に捕らえられる。捕らえられてからもつきっきりで千佳の面倒を見ていた。
- トヨ
- 河西トヨ。重蔵の本妻。
重蔵の死後、飯場頭となった常次との確執から松濤の逃亡の手助けをする。
- パク
- 小田桐少尉の部隊の客人。
松濤とキムに捕らえられるが、増援部隊に救助される。
- パク
- 国境の朝鮮族の一人。
強硬派で主流派からは浮いているが、氷川らの部隊を襲って馬や食糧を手に入れることで多数派を切り崩そうとする。周を襲い松濤を捕虜にする。
国境警備隊との戦闘で瀕死の重傷を負い、それを察した氷川らの襲撃前後に死亡する。琿春事件を引き起こした首謀者の一人でウルジンスクの事件にもかかわっていた。
- 氷川
- 酷薄なソ連の政治将校(コミッサール)。
蘭子の弾薬密輸の相手。シモノフを使い蘭子らの組織の乗っ取りを図るが失敗する。取り引きの員数確認の立ち会いに松濤を指名する。
小田桐少尉の追跡を松濤に命じ、朝鮮独立運動の武装集団討伐に向かうが、テンゲルと取り引きして戦死を装って討伐を中止する。
戦死を装っていたが、部隊を編制して小田桐少尉の後を追う。
ウラジオストクで祖父江大佐らの乗る特務工作船を襲撃するが、逆に捕らえられる。面会した祖父江大佐を手製爆弾で暗殺するが、自身も銃で致命傷を負う。
- 斌(ビン)
- 瑪と蘇連の息子。
田岡と松濤を襲撃するために留置所に送り込まれる。その後、郭大人の刺客に脅され、瑪の隠れ家への手引きをする。ゼレージンの挑発に乗り、郭大人に殺されるが、死を賭して瑪の生存を郭大人に信じ込ませる。
- 瑪
- 田岡と一緒に収容所に入れられていた中国人の病人で、蘇蓮の夫。
暗殺の請負人で重病で瀕死の状態でも松濤を暗殺しようとする。蘇蓮の手引きで収容所を脱出するがゼレージンに捕らえられる。
病気で動けない体でありながら郭大人の放った刺客を返り討ちにして逃亡する。郭大人に殺された蘇連の首を奪い返して工場に隠れるが、再び襲撃した刺客と相討ちになる。
- 松濤
- 松濤禎。
鍬形正吾の行方を探すため河西組の遂道工事に潜入するが、飯場頭の重蔵とともに遂道内に閉じ込められる。死の寸前に救出されるが飯場頭を継いだ常次に利用されそうになり、常次と対立する重蔵の妻トヨの手引きで飯場を脱出する。鍬形とともに逃げた重蔵の愛人小田桐サトを訪ね、その娘千佳と知り合い、千佳とともに鍬形を追ってウラジオストクに向かう。
氷川の命により小田桐少尉の捜索部隊の指揮を任されるが、トーニャを人質に取られ、小田桐少尉から氷川の暗殺を命じられる。戦死を装った氷川により日本に送還されそうになるが脱走して郭大人を訪ね、千佳と再会する。郭大人に田岡の始末を命じられるが、劉に殺されそうになりカマロフ警部に助けられ、ロシア警察に利用される立場となる。
千佳の行方を探るためにゼレージンに協力する。郭大人と対決して捕らえられるが、ゼレージンに救出される。死んだ郭大人の跡目を狙う黄に連れられて氷川と再会する。小田桐少尉の暗殺に向かった鍬形の後を追うため、氷川から離反して周らと行動をともにする。パクに襲われて捕虜になるが、トーニャとともに逃亡、身を寄せたグルンガの小屋で千佳と再会する。
鍬形と再会し、小田桐少尉の居場所をつきとめる。陸軍特務工作船に乗り込み、祖父江大佐らに捕らえられた千佳と小田桐少尉を救出して帰国する。その後も戦後まで何度も大陸に足を運ぶ。昭和五十六年ごろ没。
- マレンコフ
- 田岡と松濤が入れられたウラジオストクの収容所の牢名主。
中国人集団に殺されそうになった松濤を助ける。
田岡暗殺の企てをゼレージンに報告したことで中国人らの恨みを買い暗殺されそうになる。それ以降、中国人を恐れる。
- ムラビヨフ
- ウスリーク警察の警官。
中国人組織に買収され、鍬形の逃亡を助けるためゼレージンを駅で引き止めようとする。
- ユーリ
- トーニャと笠間の間に産まれた子供。
食糧不足でトーニャの乳がでず、栄養失調で亡くなる。
- 吉岡
- 蘭子の密輸船の乗員。
風采の上がらない五十がらみの小男に見えるが、実は組織の頭目のチェン。氷川のスパイであるシモノフを殺害する。
- 蘭子
- 香坂蘭子。清浦の知り合いの密輸商。
松濤を見込んで彼と千佳にウラジオストクまでの弾薬密輸の手伝いをさせる。
- 連(リエン)
- 郭大人の手下。
朝鮮語が話せ、鍬形の国営農場からの脱走を手引きする。周、鍬形とともに国境に向かうが、パクにより殺害される。
- 劉
- 郭大人の配下。
田岡らを追うことを口実に、松濤を敵対するロシア人警察署長の暗殺犯人に仕立てようとする。田岡による郭大人襲撃の際に松濤に見つけられて射殺される。
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