人名録 - 凍樹の森
- 明石元二郎
- 日露戦争前後にヨーロッパで対ロシア工作を担当した謀略の専門家。
亡命ロシア人の救援組織をつくる構想を持ち、武藤に満州での調査を依頼する。金沢の第七連隊に転出後、少将となり韓国駐留憲兵隊に配属される。武藤らにソコロフ救出のための武器と資金を提供する。
- アルセーニエフ
- ウラジーミル・クラウジエヴィッチ・アルセーニエフ。ロシア人将校。
海岸地帯調査のために派遣された探検隊長。柴崎大尉らの武藤捜索にデルスウとザハロフの二人を同行させる。
- 厳原大尉
- 沿海州の駐在武官。
小役人のような人物。伊武谷少佐と共謀してカリノフスキイに資金援助を行っている。ウラジオストクの警察署に情報確認に行ったところを武藤らに捕まり、尋問された上に加瀬に射殺される。
- 伊武谷少佐
- 都督府陸軍部の参謀。
実戦での部隊指揮経験はなく、謀略を好む。ハルピンの曖昧宿で武藤に阿片をかがされて尋問を受け、ウラジオでの駐兵権を獲得するための謀略を白状する。その後、柴崎大尉に武藤の追跡・射殺を命じるが果たされず、内地の要塞司令部付きに左遷される。
- 岩沼軍曹
- 三一連隊の軍曹。
親分肌で面倒見のよい軍曹で、小滝中尉に献身的に仕えた。日露戦争後、美川を誘って毛皮取り引きの商売で一山当てようと大陸に渡るが、食い詰めて飯場仕事をしているときに武藤、加瀬と再会する。武藤らのソコロフ救出に加わり、捕らえられたフンフーズの村からの逃走中に庄蔵に襲われ、生きたまま皮をはがされて殺される。
- 小澤
- 第九中隊の予備役伍長。
大陸で毛皮取り引きに成功するが、商売のやり方があこぎで、結局事業に失敗する。美川らから所持金を巻き上げようとするが失敗し、庄蔵の金目当に行動をともにする。その後、柴崎大尉の沿海州調査に同行する。
- 加瀬
- ハルビンで中国人として暮らす元日本兵。
陸軍五連隊の一等卒として、五家子で岩沼らに会う。戦闘中に負傷してロシア軍の捕虜となるが、移送中に逃亡しハルビンで中国人として暮らす。
ハルビンで武藤に雇われる。のちにソコロフの救出を武藤に持ち掛ける。ソコロフ救出後、ウラジオに戻り迫水に沿海州まで船を回航させる連絡を取る。ジギト湾できくとの再会を目前にして庄蔵に射殺される。
宗英烈は加瀬の中国名。
- カリノフスキイ
- ロシア社会党の多数党(ボリシェヴィキ)の指導者だが、実際はロシア官憲のスパイ。
日本陸軍の資金援助により急速な組織化を推し進めるが、銀行から運動資金を強奪したソコロフが戻ると逆に押されぎみになる。
- きく
- 松川きく。加瀬の愛人。
昔の夫は五連隊の兵卒として八甲田山で死亡した。その事情を聞きまわって官憲に目をつけられ、婚家を飛び出してハルビンに流れつく。ソコロフ救出の際、ウラジオストクで加瀬を待つはずだったが、彼を追ってフンフーズの村で美川らを救出し沿海州まで同行する。加瀬を庄蔵に殺され、美川とともに沿海州に残る。
- グチュコフ
- ハルビンのホテルのバーのバーテン。
中国人とロシア人の混血。ハルビンの街の情報に精通しており、様々な社会に顔がきく。中立の立場を守ってバーで情報の取り引きをしている。
- クロ
- 佐七の猟犬。
負傷した佐七に代わってミナシロを追う。美川にミナシロをしとめさせた後、佐七の死体によりそうようにして死ぬ。
- 源次
- 佐七と同じ村のマタギ。
佐七に代わってシカリの地位に着いていた。佐七を埋葬するために山に入り、クロの死体を見つける。
- 小滝中尉
- 三一連隊の中尉で岩沼と美川の上官。
八甲田山で雪中行軍を行ったときに、遭難した五連隊の幻をみかけそれをずっと気にかけていた。黒溝台の戦闘の頃には岩沼に頼りきりだった。五家子の戦闘で加瀬と二人きりになったときに錯乱し、加瀬に殺される。
- 後藤総裁
- 満鉄総裁。
満州の行政権を持つが、実際は陸軍の横槍が耐えない。
- 迫水
- 満鉄調査部の主任。
大学の教官時代に労働争議に首を突っ込み、官憲に捕まる前に大陸に渡って満鉄に入社する。極東地域における反政府勢力の動向調査を行っている。武藤らのソコロフ救出に協力し、加瀬の連絡を受けてジギト湾に迎えの船をまわす。
- ザハロフ
- アルセーニエフの部下のロシア兵。
武藤らを追って沿海州を調査する柴崎大尉らを監視するために同行する。ソコロフ救出に日本の三八式歩兵銃が用いられたことが分かり、柴崎大尉をソ連に抑留する。
- 佐七
- 阿仁の老マタギ。
昔、捨てられた仔クマのミナシロを助けた。行き倒れた美川にマタギの作法を教えて配下とし、老いたミナシロに引導を渡そうとする。ミナシロを追うが反撃にあい、美川が仕留めたミナシロの神事を行った後死亡する。
- 柴崎大尉
- 関東都督府陸軍部。
武藤の対露諜報機関構想を上層部に報告する一方、武藤に都督府のロシア不平党対策を教える。
- 庄蔵
- 佐七の孫のマタギ。
乱暴で殺人淫楽症の気がある。自分の山刀を佐七から託された美川を執拗に追い、村を出て大陸に渡るが、その間に強盗や殺人を繰り返す。
ソコロフを迎えに来た加瀬を射殺した直後、美川に殺される。
- ステノビッチ
- ハルビンのロシア鉄道庁の職員。
以前から不平党対策に辣腕を振るった警官。伊武谷少佐と組んでソコロフを陥れる謀略を行う。
- 宗英烈
- → 加瀬
- ソコロフ
- ロシア社会民主党の多数党(ボリシェヴィキ)の闘士。
官憲の追求を逃れハルビンに潜入しているところを伊武谷少佐にロシア側に引き渡されそうになり、日本人に不信感を持つ。日本陸軍に資金援助を受けて活動しているカミンスキイに対抗するために銀行の現金を強奪するが、逮捕される。武藤らに救出されて逃走に成功し、極東での地歩を固める。
- 田中中佐
- 陸軍参謀本部で武藤のもとの上司。
直情径行な武藤の身の上を心配し満鉄嘱託としての職を世話しようとして、明石大佐を紹介する。のちに麻布第三連隊に転出する。
- 鶴田
- 満州で成功した事業家満州で成功した事業家。
日露戦争の前から在住しており、義侠心の強い好人物。満州に来た武藤の面倒を見、沿海州の物産取り引きの調査の仕事を武藤に与える。
- デルスウ・ウザーラ
- ナナイ人でアルセーニエフらの探検隊の道案内人。
自然と生きる術を身につけた博物学者。柴崎大尉らの沿海州調査に同行した後、自分の住む山で美川に会い、彼に博物学を教えることになる。
- 福島大尉
- 三一連隊の雪中行軍を計画し、隊長となって行軍を成功させた。のちに三二連隊中隊長となり、黒溝台攻撃で敵弾を受けて戦死した。
- 松方正義
- 元大蔵卿。
デフレ政策を行い、その結果米価の下落から農村に大打撃を与えた。
- 松川きく
- → きく
- 美川梗次郎
- 三一連隊の上等卒。
ミナシロを追って秋田に入り佐七と知り合い、マタギのやり方を教えられながら、彼がミナシロを殺すのを手伝う。岩沼に誘われて大陸に渡るが、食い詰めて飯場仕事をする。武藤らのソコロフ救出に加わり、その後きくとともに沿海州に残り、デルスウのもとで博物学者、道案内人として勉強することになる。
- ミナシロ
- 全身が白い毛で覆われた巨大なクマ。
マタギの間では山の神様とされている。老いて自分の狩猟場を若いクマに奪われ、渡りクマとなる。佐七と美川により仕留められる。
- 武藤
- 武藤俊昭。
黒溝台の途中から岩沼らの中隊の中隊長となった予備役大尉。
小滝中尉の死に関して疑問を持つ。明石大佐らの意向を受けて満州に渡るが、満州都督府の方針に反対し、ソコロフと接触してロシア官憲に逮捕される。釈放後、ソコロフの救出の指揮をとり、ソコロフとともに沿海州までの逃走を成功させる。
矢沢光輝はハルビンにおける武藤の偽名。
- 矢沢光輝
- → 武藤
- 谷田部源次
- 女郎屋の主人で、ウラジオストクの邦人社会を裏で仕切る侠客。
きくの願いを聞いてフンフーズとの連絡員を紹介する。また、柴崎大尉の依頼を受けて在郷軍人を集める。
- レーニン
- 社会民主党のボリシェヴィキの代表。
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