やぁやぁやぁ、司法行政卿の天羽です.みなさんご機嫌いかがですか。
きて先日、UFOと異星人の特集をくんだテレビ番組があったのをごらんになられましたでしょうか? ぼくはたまたま見ていたんですが、あの番組のラストふきんで、なんちゃらとかいう博士が、こんな事をいっていたんです。
「みなさんは信じられないかもしれませんが、異星人につかまって、UFOの中で人体実験をされている人はひじょうに多いのです。ただ、記憶を完全に消されている場合がほとんどなので、この番組をごらんになっているみなさんの中にも過去に記憶のない時間をお持ちの方は、その間UFOの中にいたと。十分に考えられるのです」
そう、ぼくになそんな時間があるのです。それは、以前甲州画報にも書いた、ぼくが初めて時間跳躍をした日の事です。
あの文を読んだ大阪人外協の面々からは、
「そりゃあ天羽さん、やっばり眠とっただけやろぉ……」
といわれたけれど、ひょっとしたらあの時ぼくは時間を跳躍していたのではなく、UFOに乗っていたのかもしれないんです。
いや、もちろんぽく自身は、いまでもあれは時をかけていたにちがいないと信じていますがね。
さて、ここまで書いて思い出したんですが、ぽく、UFOに乗った記憶があるんです。そう、あれはー、いまから約六年前のとあるむし暑い夏の夜の事でした……。
その日ぽくはあまりの暑さに、
「眠られへん……、眠られへん……」
と、うわごとのようにつぷやきながら布拭の上でゴロゴロと寝返りをうっていたんです。(だってぼく、クーラー嫌いやねんもん……)
と、その時、コンコン、と窓をたたく音がしたのです。
−へんやなぁ、ここ、二階やのに……。
サッと、窓にかかったカーテンを開いてぴっくりしました。
なんとそこには、額の真ん中に角を一本はやし、目がみっつ、口が耳まで裂けたカエルみたいな顔の変な化け物が、銀色の衣服に身をつつみながら立っていたのです。しかもそいつは、二本の右手で頭をかきながら、しきりとペコペコおじぎをしているではありませんか。
「こんなおそい時間に、いったいなんの冗談や!!」
ぼくは、窓を開けてどなってやりました。
「えっ、えらいすんまへん……実はわたい、おうし座のアルデバランに住んでいるケロツグちゅうもんなんですが、そのアルデバランからこと座のベガヘと行く途中て何処でどう間違えたのかこんな所に来てしもたんですわ……。すんまへんが、ちょっとベガの方角をおしえてもらえまへんやろかー」
そのケロツグという名前の宇宙人は、まことにすまなそうな顔をしてこう聞いてきたのです。
ベガといっても、もちろん腕時計の事ではありません。ほら、あの、七夕で有名な織姫星の事ですよ。さいわいぼくは天文学に精通しているので、この星の場所はよおーく知っています。そこで、窓から身をのりだしたぼくは、北東の方を指差しながら、
「あれっ」
っと教えてやりました。
「はぁ……、あれ、ですか……。うーん」四本の腕で腕組みをしながら、「実はわたい、ほんまに方向音痴ですねんー。もしよかったら、わたいの円盤に乗って一緒に近くまで行ってもらえまへんか?」
たしかにアルデバランからベガヘ行くのに地球で迷子になるというのは、そうとうな方向音痴にはちがいない。
しゃあないなぁー、とも思いましたが、そこは“ほとけの天ちやん”どうせ家にいても眠れないのだし、ここはひとつその円盤とやらに乗って宇宙に出るのも経験よと思い、その宇宙人と一緒にベガまで同行する事にしたのです。
さて、ぼくが乗り込んだ円盤は、アダムスキィ型っちゅう、いわゆるもっともポピュラーなやつです。これが、そうとう使い込んでいるらしく、ところどころに縦ぎあてがしてあって、丸い窓ガラスには、ビニールテープが×印に貼ってありました。
とはいえ、いくらポロでもさすがは円盤。今乗り込んだと思ったら、あっというまに宇宙空間です。×印のはいった丸い窓から外を見ると、太陽の光をあぴて、青に白いにごりのはいったビー玉のような地球が、きらきらと輝いて見えました。そう言えば十年以上前でしたか、初めて宇宙から地球を見たおっちゃんが、
「地球は青かった」
っていってた、けど、ほんとやったんですよねぇ〜。
ここでふと思ったんだけと、どうもおかしいんです。というのも、地球の向こうに、目的地のベガが見えているではありませんか??? で、ははぁーん、こいつはどうやらまた方向を間違えたんだなっと思い、こりやあ教えてやらなけりやと考えて、宇宙人の方を見たんです。
するとそいつは、さっきとはうってかわったような怖い頻をしながらぼくを睨んでいるではありませんか。
「なっ、なんやおまえ……」
「なんややないわい!! がたがたいうとらんと、ここでおとなしいしとれっ!!」
この宇宙人の豹変ぶりは、いったいどうした事なんでしょう。
そういえば、なにやら悪い宇宙人がこの辺をうろついているから気をつけるように。と書かれた回覧板が回ってたっけ……。
そうか、こいつが、、。ちっ、騙されたかっ、っと思ったけど、もう手遅れです。
「ふんっ、ようやく気いついたみたいやなぁ。そや、わいわなぁ、宇宙駆ける人さらい“さすらいのケロツグ”ちゅうんや。よぉーおぽえとけ。おまえら地域人は、インド人座のエプシロン星に住むスタイリー人に高く売れるんやぁ」
う−ん、やっばりそうやったんか?!
でも、だまってつかまるようなぼくではありません。四本の腕をもつケロッグと、互角にわたりあいました。
ところが、くんすほぐれつもつれあっている時に、たまたまぼくの肩がエマージェンシーボタンにあたってしまったのです。
さあたいへん。どうやらこのボタンは円盤の自爆装置だったようです。青いパイロットランプが赤に変わった途端に、ケロッグは必死になってこれを解除にかかりました。
その隙にぼくは転送装置の中へと入り(なぜそこに転送装置があるのをしっていたかというと、機械の上に、かまぽこ板ぐらいの大きさの板に、黒い字で“てんそうそうち”って書いてあったからです)、操作ボタンをむちゃくちゃに押しまくりました。どこに転送されたって、この円盤の中にいるよりはましだと思ったからです。
頭の上から黄色い光が降りてきました。
ベルの音が、ジリリリリリリィーッ! っとけたたましく鳴り響きます。
「あぁーっ、あかん……」
四本の腕で頭を抱えて嘆くケロッグの声を耳の端に聞きながら、全身に黄色い光を浴びたぼくの意識は、徐々に遠ざかっていったのです。
そして……。
ふと気がつくと一まだベルの音が聞えています。
−−転送できなかったのか?
いえ、そうではありませんでした。今聞えているベルの音は、目覚まし時計の音やったのです。そう、あの時めちゃくちゃに押した転送装置のボタンは、偶然にもぽくの家のふとんの上と同じ座標になっていたようです。
まぁこんな偶然ほ、世間ではよくある事ですから……。
ところで、この事を以前友人に話したところ、
「そりゃあおまえ、たんにに寝苦しゅうて悪い夢を見ただけやろ!」
と、のたまうのです。でも、そんなはずはありません。ぽくは、悪い宇宙人をやっつける、宇宙駆けるヒーローなんです。
ねぇ、信じて下さいってばぁ〜