ハイコミカルモデル
VF-1S
スーパーヴァルキリー編

岡村[体操のお兄さん]隆司

 その昔、目もキラキラした純情な高校生の時、アニメ誌に載った新番組の情報は衝撃的でした。西暦一九九九年に落下してきた、全長一・二キロメートルの巨大な異星人の宇宙戦艦。その宇宙戦艦を調べると、何と地球外知的生命体が銀河系を股にかけて戦争をしているらしい。統一の政府を作り上げた人類は来るべき異星人との戦闘に備え、宇宙戦艦から学んだオーバーテクノロジーを利用して新しい観念の兵器を造り出した。異星人の身長が一〇メートルらしい事から作られた兵器は、異星人とがっちり組んで格闘できるロボット兵器。その中にF14のシルエットから人型になる『バルキリー』と名付けられた変形ロボットがありました。それまでのアニメにない合理的な変形(あの当時はそう思っていた)。そして何よりも製作スタッフの中に『スタジオぬえ』の名前を見つけて、もう当時はそれだけで『本格SF』と勝手に決めつけ、血液中のアドレナリンがUPすることすること。そして、期待の本放送が始まってぇ〜、一話、二話、三話……と過ぎると……。まぁ〜勝手に『本格SF』と(何が本格SFなのか分からず)思い込んだ私が悪い訳で……。
でも結局最後まで見てたんだな、当時これが……。でも正直今でもわからんぞ!

『VF−1 バルキリー』

 と言う訳で、今月のネタは潟oンダイ製TOY、ハイコミカルモデル『VF−1S スーパーバルキリー』(当時二〇〇〇円)です。このオモチャはデフォルメモデルでありながら差し替え無しの“三段階変形+α”といったスグレもので、数ある『可変バルキリー』のなかでは私は最高傑作と思います。
 さて、このオモチャの基になった戦術可変戦闘機『VF−1 バルキリー』シリーズについて、アニメメカオタクじゃない人達のためにかる〜く説明しておきます。
 登場した作品はTVアニメーション『超時空要塞 マクロス』(毎日放送 放映一九八二年一〇月三日〜一九八三年六月二六日 全三六話)と、劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(東宝梶@一九八四年夏公開)です。
 わかりやすく言うと『バルキリー』ってのは、『米海軍のF14のような戦闘機』が『手の生えた、首を伸ばしたダチョウ』の形を経て『人型のロボット』になるメカであります(マニアの顰蹙を買うな……)。『バルキリー』のそれぞれの形態を、戦闘機を『ファイター』、手の生えた首を伸ばしたダチョウを『ガウォーク』、ロボットを『バトロイド』と呼びました。この『バトロイド』に鎧を被わせたのが『アーマード・バルキリー』、大気圏外用にロケットブースターとミサイルポットを背中につけて、さらに少しオマケをつけたのが『スーパーバルキリー』です。TV放映時のバリエーションは、一人乗りを人型の頭の形と角(空対空レーザー砲)の数の違いで区別した三種類に二人乗りの一種類を加えた、計四種類でした。劇場版では細部のデザインや若干の設定・付属武器の変更があります。また、二人乗りには、大きな皿のようなレーダーを背負わせた早期警戒型もバリエーションに加わりました。私個人は付属武器の変更はオモチャのグレードアップを狙ったものと思
っています。デザインに興味のある方はエンターティメント・バイブル6『スタジオぬえ メカニックデザインブック PART・1 機動兵器編』(潟oンダイ 定価八〇〇円)に載っていますので、そちらで見てください。
 なお話が横道に外れますが、エンターティメント・バイブル9『スタジオぬえ メカニックデザインブック PART・2 宇宙戦艦編』(潟oンダイ 定価八〇〇円)には以前『SFマガジン』に連載されていた『スタジオぬえのスターシップライブラリー』が『宇宙戦艦の考察』を中心として載録されています。読んだ限りでは『宇宙遠近法』と連載の最後のほうの『星間物質使用ラムジェット推進宇宙船』がカットされています(どなたか当時の連載をお持ちの方がいましたら、コピーをさせてください)。

やっと本題!

 それでは本題のハイコミカルモデル『VF−1S スーパーバルキリー』に入ります。『資料1』として製品の箱絵の表、裏のコピーを、『資料2』として各形態の写真を載せます。箱の中には可変『バルキリー』の完成品が一体と、『スーパーパーツ』が一式、それに『ガンポッド』と『リン・ミンメイ』(TV版二七話のステージ衣装)のデフォルメフィギィア、シールと説明書がそれぞれ一枚付属しています。この可変『バルキリー』は、差し替え無しの変形と『スーパーパーツ』を余分なパーツを追加する事なく装脱着できる点では、可変『バルキリー』のオモチャの中では唯一の物です。コクピットの一八〇度回転による腹部装甲板の再現などはデフォルメを生かしたウマイ処理です。変形方法がわかりやすいように、『資料3』として取扱い説明書のコピーを載せます。
 初版販売はバンダイの情報誌『模型情報』一九八四年一二月号(No. 64)によると一九八四年一〇月ごろみたいで、同誌の翌年一月号(No. 65)には劇場版『ヒカル専用』と『マックス専用』が発表されています。二種類とも『VF−1A』でした。また同誌にこそ載っていませんが、当時『VF−1J』をオモチャ屋で見たような気がします(自信なし)。また、この『バルキリー』発売は潟oンダイですが、設計は1/55可変『バルキリー』で有名なタカトクトーイでした。当時この『バルキリー』の試作品の写真と数点のカットイラストを、『マイアニメ』かマクロスプラモデルのムック本でタカトクトーイが倒産する直前のインタビュー記事で見た記憶があります(毎回調べが足りず、ゴメンナ〜サイ)。デフォルメ化の元ネタはどうやら『バルキリー』のメカデザイナー『河森 正治』氏がOUT増刊『マクロス・パーフェクト・メモリー』(月刊OUT一九八三年一〇月号増刊 みのり書房 定価二八〇〇円)のために書き下した『三頭身バルキリー』の数点のカットのようです。同社は劇場版が公開される前に倒産しており、技術者と共に他のオモチャの金型と共に潟oンダイに移っていたらしいです(タカトクトーイの倒産した日などは調べがつきませんでした。スミマセン)。
 さてこの商品を見ると、『劇場版』の公開後の発売であることに関連して、面白い点があります。まず『資料1』の箱絵のキャノピー下のパイロット名が『H.ICHIJOE』となっています。彼がこのカラーリング(パーソナルカラーが黄色)のバルキリーに乗るのはTV版の一九話からなので別に間違いはありません。しかし、付属のシール(『資料4』参照)のパーソナルカラーは『劇場版』の赤色となっています。じゃ〜シールで『劇場版』と『TV版』を選べるかと思えば、一番目立つ胸部の赤シールは付属していませんし、『スーパーパーツ』用のドクロマークも無く、中途半端な『?』物となっています。その事から想像すると、この商品はタカトクトーイである程度の数が作られていた物を、バンダイの方で新規のシールを付属した上で箱詰めし直して出荷したのかもしれません。もっともこの事は同シリーズの『劇場版』で作られた『VF−1A』等と詳しく比べたわけではないので、いつもながら根拠は全然ありません。
 いつものパターンで話が少し外れます。バンダイの『ハイコンプリートモデル』シリーズからも1/72可変『バルキリー』が出ていました(生産台数は少なかったそうです)。『ガウォーク』時の『バックパックのアンテナ』や『腕部のライト』の細部の再現等が凝っていましたが、『ファイター』形態を重視したためか、『バトロイド』時の背面がイマイチでした。その他にも『バルカンポッド』の伸縮の省略やオプションの『スーパーパーツ』が無かった事など、本体の出来が良かっただけに私は少々物足りなく感じたものです。初版発売は『模型情報』一九八五年八月号(No. 72)によると一九八五年八月頃で、この商品を設計したのは元タカトクトーイの者との噂でした(マニア間の噂で?もの)。この可変『バルキリー』は、タカトクトーイ製の1/55可変オモチャと、今井科学の1/72可変プラモデルを足して、ディナーデルアップしたような出来でした。この商品が出た頃は丁度バンダイより一連の他社の製作による『マクロス』関係のプラモデルが再版されていた時期に重なります。この頃すでに今井科学は二度目か三度目の倒産の後で、『バルキリー』のプラモデルの金型はアリイ製作所物と共にバンダイに移っていました。

結び

 今ではデフォルメモデルも当たり前になり、逆にヌイグルミ取りのゲーム機の人気を考えると、デフォルメモデルの方がウケてるのではないかと思える今日この頃です。でもこのオモチャが出た頃は、まだデフォルメモデルは邪道といった意見も多く、このオモチャもあまり売れなかった記憶があります。当時私自身もこのオモチャを友人達の分も含め五〜六個を五〇〜六〇%OFFで数店舗で買いました。その後バンダイは同系統の商品として『ガンダム MkU』が飛行機に変形する物を出しましたが、ミゴトにコケました(レア・アイテムなので、持っている人は友達に自慢できるぞ!)。まぁ〜ヨタ話はこの際横に置いておいて『超時空要塞 マクロス』って作品、ムックなどのインタビューの答どおり当時の『スタジオぬえ』流の「冗談」(この答も照れ隠しかも……)だったのか、「限界」だったのか判断がつきませんが、プラモオタクの私としては今でも凄かったと思っています。とかなんとか言ったって興味のない人にはどうでもいいことだもんな、本人の思い込みの激しさって端から見るとギャグだし……。ま〜好きだけどちょっとアドレナリンDOWNにDOWMして、今回はお終い、チョンチョン。




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