サンダーバード7号編

岡村[体操のお兄さん]隆司

 「思い出(過ぎ去ったモノ)と、女性(“ふられた”のは特にだな)は、追いかければ追いかけるほどしんどい」と思うときがある。女性のことで「ダレが一番?」なんてヤボなことを聞かないこと!(誰も聞いてない、聞いてない) 今気になるのが一番に決まっている(ミエとウソだよ〜ん)。
 さて冗談は置いといて、『サンダーバード』に時代を越えた“何か”があるのか、それともただ単に他に面白い物が無いだけなのか、『サンダーバード』がイベントやメディア等で何度か取り上げられました。昨年からブームだったのか、ブームを作ろうとしたのかは私にはわかりませんが、その結果として昨年から今年にかけて『サンダーバード』の商品が再版も含めて数多く店頭に並びました(私は『サンダーバード』ブーム作りはハズレたと思うぞ)。数多くの再版プラモデルの中で、『サンダーバード7号』を見つけたとき、こんなものでも再版するのかと思わず絶句しました(本当にイヤだったら買わないよ。でも定価はいやだ)。

☆『サンダーバード 7号』って何?

 私が『サンダーバード7号』を知ったのは、誰が書いた記事か覚えていませんが日本版『スターログ』のモノクロページの『SF絶版プラモデル』の特集記事に対する読者の投稿の「イモムシのようなサンダーバード7号」の一文からでした(二ヶ月連続で、映画版『スタートレック』の一作目が公開の頃)。劇場映画『サンダーバード6号』(原題:THUNDERBIRD 6)に登場した飛行船『スカイシップ−1』のプラモデルが『サンダーバード6号』の名で販売されたことは有名なことで、見た人も多いことでしょう。「じゃ〜『サンダーバード7号』って何?」って人のためにプラモデルの箱絵(資料1)を載せます。右下の岩のサインから、イラストレイター『小松崎 茂』氏の一九七二年の作品であることが判ります。さて、この箱絵を見て面白いのは『サンダーバード2号』の着陸脚の接地プレートの形状が劇中の物になっています。他の箱絵もそうかもしれませんが、つい最近に新規金型制作されたプラモデルの登場まで、接地プレートの形状はテーパーのついた円筒形と思い込んでいただけに驚きです。私の単なる観察力不足ですが、その割りにはコンテナー正面のロック機構は省略されてます。
 このプラモデルについては今年出版された『サンダーバード プラモデル パーフェクト カタログ』(伊藤 秀明著、ラポート発行、定価四八〇〇円、高いから立ち読み)によりますと、英国の二一世紀プロが発行したSF絵本の中のミサイル探検車を基にデザインされた、今井科学のオリジナル作品と解説されており、一九七二年に初版ロット(あ〜ゾクゾクする響き)が発売されたそうです。残念なことにその絵本(題名さえ不明)の絵とどれぐらい似ているかは判りませんが、私自身は『?』ものではと思っております。私はミサイルの形状や、アンテナの形状等から『小松崎茂』氏によりデザインと思うのですが……、どなたかより詳しいことをご存じのマニアの方、教えてください。

☆どんな『プラモデル』か?

 まず『サンダーバード7号』の完成品の写真(資料2)と、その組み立て説明図(資料3)を載せます。『イマイリモコンシリーズ』の名のとおり、単三電池を二本内蔵したリモコンボックスによって前後に走ります。モーター・電池・接着剤は別売りで、シールが一枚(メーカーさん、せめてシールのカッティング位してくれ)付属して定価が一〇〇〇円となっています。接着剤は初版には付属していたそうです。車体後半部を展開することができ、中央の発射台にミサイルをセットして発射することができます。ミサイルは二種類で二個が付属しており、展開する左右側面の内側のラックにそれぞれ収納できるようになっています。リモコンボックスはスイッチ部分にコイルスプリングを使っており、単純な部品構成で耐久性も強い構造です。ウォームギヤーは真鍮の削り出しで、これだけでもかなりの手間がかかっています。手塚治虫氏が死去された際に、ロボット『V3』が同社で再版されましたが、モーター歩行が省略されていました。ギヤーやギヤーボックスがコストに合わず省略されたとのこと(ただしそれは噂。また『作れる業者がなかった』説もあるが、噂の真相は不明)。そのことを除いても『サンダーバード』再版商品のラインナップやコレクター受けを狙ったパッケージデザイン(初期会社ロゴの再現や、展開図を入れた新パッケージなど)を見ても今回の再版に同社がかなり力を入れているのが判ります。もっとも手当たり次第という気もしますが……(今井科学自体がこけなきゃいいけど、お兄さんは心配だぞ!)。
 ちなみにシリーズbSが『ジェットモグラタンク』(原題:The Mole)とゆうのが意外です(『サンダーバード7号』はシリーズbRです)。さて、話が横道に外れますが、リモコン『ジェットモグラタンク』は先の資料に拠りますと、今井科学の最初の倒産の際に潟oンダイに負債の返済のために、工場(現在のバンダイ静岡工場)と一緒に多くの模型の金型が売却されたそうです。その中には今もバンダイから販売されているモーターライズ『ジェットモグラタンク』(初版のドリルが二重の反転回転のアレです)も含まれていました。今井科学復活後の『サンダーバード』再版の際、このリモコン『ジェットモグラタンク』はその穴埋めを狙って企画された商品のようです。モーターによるドリルの回転こそ省略されましたが、『モグラ』部分のゼンマイによる独立走行と、ミサイル発射のギミックがあり、『サンダーバード7号』に比べてかなり内容が濃くなっています。なお、現在もこの模型(定価一二〇〇円)はゼンマイ走行のギミックが省略されて今井科学から再販されています(『プラモ狂四郎』バージョン作ってたんだけど、今回は間に合わず)。組み立て説明図(資料4)を載せます。

☆ちょっとした『疑問』

 今回も組み立ては素組です(だってメンドくさいも〜ん)。塗装はラッカー系で済ましました(水性と違って、作業時にハイになれるから愛用……ウソだよ、早く乾いて楽だからだよ)。しかし、書いていて何かムナしいぞ。「だから、どうした!」って一言で片付けることできるもんな。ま〜、いいか〜、完成したし。さて、組み立て時に気付いたのですが、右側面に用途不明の穴があります(写真・資料5参照)。多分ゼンマイを巻くための軸だと思います。さて、側面に軸の出ていたゼンマイを持つ『ジェットモグラタンク』の『モグラ』と比較すると(今も穴は残っています)軸の位置が逆のうえ、駆動軸とゼンマイを巻くための軸との間隔も少し違ってます。これでは共通ユニットでコストを下げることはできません。今井科学にそのようなゼンマイユニットが存在したか、それとも今回再版されるまでにゼンマイ動力の時期があったのかは判りません。日本で再版されたことがなくても、外国で販売していた可能性もあります。しかし、もしモーターライズの前からこの穴があるとしたら、ここからの『サンダーバード7号』が『サンダーバード7号』になる前は何だったか探るヒントになるかもしれません(勘繰りすぎかな?)。

☆結び

 『サンダーバード』が日本で最初にTV放送されたのが一九六六年(NHK)のことでした。私は再放送で見た方なので、残念ながら当時のブームがどのようなものであったかは文献でしか知りません。どのようないきさつで一九七二年頃に一連の商品が再版されたのかは、今となってはわかりません(メーカーのお家事情は別にしても、偶然か仕組まれたのか……、という意味です)。メディアミックスという名の下に多種多様の商品を展開する現在と違って、商品の頭数を増やす方法として『サンダーバード』の名前をつけたオリジナルの製品を加える方法が当時は成り立ったのでしょう。個人で資料が手軽に入手できる現在では通用しにくい商法かもしれません。とにかく少なくとも『売れる』要素があるからこそ、この商品は出たはずです。 さて、システムの暴走を更に一歩進んだシステムで修正するのが『サンダーバード』の話だとしたら、私はその方法論の限界に対する解答が劇場映画『サンダーバード6号』と考えてます。それに対して当時の消費者が求めたものは『サンダーバード7号』が象徴するもの(より新しいシステム)だったのかもしれません。もっともそれは私の推測の域を出ませんが……(所詮は御託さ! しまった、今回『SF』でチャチャ入れるの忘れた)。




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