『機動戦士ガンダム』
ビームライフル編

岡村[体操のお兄さん]隆司

 飲み屋で趣味の話をしていて『モデルガン集め』って言ったら、「モデルガン改造したの持ってる?」とか「改造できる?」とよく聞かれる。ムッっとはするが、趣味のそんな話をしたコッチも悪いのでヘラヘラ笑って済ます。そうイヤ〜以前バイト先で「私の趣味はオタクですよ……」って言ったら、女子大生に「女の子にイタズラしたりするのですか……」と言われたし、バイトで夜中に水位を測っていたら酔っぱらいに「兄ちゃん、バクダン仕掛けてんか……?」と聞かれたこともあるから、そんな風な事をするように見えるんかも知れない。ウム、困ったもんだ。でも実際、徹夜でハイになりながらABS製のモデルガンを耐水ペーパーで磨き上げたりしてるんだから、ハタから見ていれば気持ち悪いだろうな。イヤハヤ(でも、好きだから止めない)と言った理由で、今月のネタはモデルガンだ。ではそろそろ本題に行こっ〜と。

☆まずは紹介

 それで今回取り上げるのは、潟}ルシン製作、潟Nローバー販売の『《機動戦士ガンダム》ビームライフル』。あのシャア曰く「戦艦並みのビーム砲……」であります。ビームライフルと言っても競技用の光線銃でもなければ、『ジリオン』のようなTOYガンでもなく、何故かプラグファイヤー方式でキャップ火薬の力によってカートリッジを排莢するモデルガンです。それはともかく、「どこがビームライフルやねん……」と思う御仁も多いでしょうが、ちゃんと左側面に『GUNDUM BEAM RIFLE』と刻印がありますので、ちゃんとビームライフルです(屁理屈やな〜!)。大抵のモデルガンが実物の銃器の構造や動きを模型として再現した物に対して、アニメ用の設定を元に作られただけに異色の物となっています。
 まず『資料1』として製品の箱絵のコピーと、『資料2』としてキットの完成品写真を載せます。『資料1』には発売予定商品として『ザクマシンガン』がありました。私は凄く欲しかったのですが、残念ながら発売されませんでした。価格は完成品がTV放映当初の『機動戦士ガンダム』のメインスポンサーの潟Nローバーで三〇〇〇円、組み立てキットの方が潟}ルシンで二三〇〇円でした。記憶では確か完成品には五o径のキャップ火薬が付属しており、成型色がキットは濃青色に対し、オリーブドラブだった気がします(いつものとおり自信なし)。初版発売は『HOBBY JAPAN』一九八二年三月号の広告と『月刊コンバット・マガジン』一九八二年三月号の記事から判断して、一九八二年の三月頃のようです。この時期はちょうど劇場版三作目『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』の公開された時期に当たります。マニアの中には異論もあるでしょうが、八一年からのガンダムプラモブームも、主要モビルスーツの商品化がひととおり終わった時期に当たります。この年のバンダイの商品化の一覧表を見てみると、『ザクレロ』や『アッザム』などのたいして活躍しなかったモビルアーマーのみならず、『アッグガイ』や『ゾコック』などTVに未登場のモビルスーツを商品化するなど、商品化に息詰まったのか「エッ〜?」と思う物がかなりあります(『MJ 模型情報』一九八八年七月号参照。私個人はウレシカッタけど)。手元にないのでうろ覚えですが『月刊コミックボンボン』(講談社刊)のブラモデルの特集記事で、このビームライフルの作例を見た事があります。製作は『小田雅弘』氏(間違ってたらゴメン)で、形状をいじらずに塗装とマーキング(モデラー用語:『注意書き』や『所属部隊のマーク』を書き込み、それっぽく見せる方法。やりすぎると繁華街の電話ボックスになる。でもあれはあれで別の意味で好きだったりする)に重点を置いた作例でした。しかしこの記事で印象に残っているのはビームライフルではなく、その隣に比較用に置いてあったガンダムのメカデザイナー『大河原邦男』氏自身の製作によるソリッドモデル(モデラー用語:プラモデル出現以前からの製作方法で、ホウ材などを削り出し製作した物。ポリエステルパテなど手軽な造形材料が近年普及した中でも根強い人気がある)の『ザクマシンガン』でした。無可動のモデルでしたが、そのストック(肩当て)には緊急時にザクのパイロットが使用するように『手斧』が装着されており、『それっぽさ』がオシャレでした。
 ところでこのビームライフルに手を加えて作られた商品に『《戦闘メカザブングル》五連ライフル』(正確には『《ウォーカーギャリア》用ライフル』)があります。一九八二年一〇月頃発売の物で、完成品は潟Nローバーの販売で三五〇〇円、組み立てキットが潟}ルシンで二五〇〇円となっていました。ビームライフルと比べると、スコープが追加されてフォアーエンドの形状が変更されました。内部機構も一部分が改造されて単射が可能になり、ABS製の弾倉を利用して五連射できるようになっていました。『資料3』としてその写真を載せます。ところでこの五連ライフルは潟}ルシンの『SFメカニック銃』シリーズの第三弾に当たり、第一弾は『コルト・ピースメーカー』の縮小モデルを原型とする『銀河鉄道999』の『コスモドラグーン(戦士の銃)』でした。ちなみにビームライフルは第二弾でした。

☆どんなオモチャ?

 さて、このビームライフルは五o径のキャップ火薬を利用してカートリッジを排莢するために、アニメ用の設定と比べるとデザインや全体のバランスが一部変更されています。残念ながら潟}ルシンのデザイナーは誰かわかりませんが、ボルトから銃口まで一本の線に引かれたような構成は『弾(ビーム)が出て、作動しそうなそれっぽさ』で、さすがモデルガンメーカーの製品とウナラせるものがあります。外見を見回してみて、まず目立つ所としては右側面に開けられたカートリッジの排莢口があります(『資料2』の右側面を参照)。次に設定では可動式となっている引金前方の『フォルデングストック』が省略され『モーゼルミリタリー』のようにカートリッジを装填したマガジンを装着する部分に変更されています。ちょっと横道に外れますが、私個人はバンダイから各スケール毎に数種類出ている『ガンダムRX−78』のプラモデルで、可動式のフォルデングストックを再現したモデルが1/60スケールのみって事が不満であります(イヤ〜マァ〜個人的な趣味でどうでもいいことザンすがね……)。デザインで目につく所としては、販売対象に小学生を見ていたのか、グリップ(銃把)やトリガーガードが握りやすい小型の物となっています。また、設定どおりのギミックとしてスコープ(照準器)が左右に可動します(これも未だに1/60スケールのプラモデルしか再現した物がないのが不満です)。
 さて、このガンダムのビームライフルのギミックの特徴として、五o径のキャップ火薬を使用してプラグファイヤー方式によって撃発音とカートリッジを排莢することにあります。作動方式はオープンボルト方式の短機関銃と同じ原理で、チャンバーを兼ねた亜鉛合金製のマガジンは一発しか装填できないようになっています。多弾数のマガジンを用意できればフルオートの連続撃発も可能です(もっとも連続撃発などしたら、ボルトがABS製なので耐久製に一抹の不安があります)。作動方式と操作手順がわかりやすいように『資料4』としてキットの取扱い説明書のコピーを載せます。
 ところで、「プラグファイヤー方式って何?」って人も多いでしょうから『資料5』に潟}ルシン製のモデルガンキットの説明書に記載された同方式のコピーを載せます。興味ない人にはオオゲサに聞こえるかもしれませんが、私個人は潟}ルシンが二流メーカーのイメージから脱却するきっかけになった物だと思っています。詳しい説明は除きますが、このプラグファイヤー方式を開発したことによって、潟}ルシンはMGC社の独占独占状態だった『ABS製ブローバックのモデルガン』の市場にMGCのパテントを侵害することなく参入することができました。そして、この方式は他社のブローバックモデルガンのカートリッジの構造にまで影響を与えた、モデルガン史上に残る凄い物であります。
 イヤ〜ところで実は私自身、この銃に火薬を使用した事がないんだなコレが。だから火薬を使用時に調子よく作動するかどうかはわからないんだな。でも、手動における作動は快調なので、少しの調整で十中八九調子よく作動するでしょう(無責任だけどね〜。エ〜ッ、どうして作動させないかって、だってカートリッジの掃除がメンドクサイし、消耗パーツもメーカーにないんだから壊れたらイヤだもん。パーツの自作がメンドイしね)。

☆結び

 一九八〇年代前半は、『ガンダムプラモブーム』の影響を受けて、各メーカーは競って『キャラクター物のプラモデル』を出しました。また、その頃モデルガンもキャラクタープラモデル同様に新製品ラッシュになり、専門誌には毎月毎に新製品の紹介記事が載っていました。さて、このビームライフルの発売の少し前の一九八一年の秋頃に、潟}ルシンは自社製のABS製モデルガンを『未調整、未組み立て』の状態でキットとして市場に出しました。完成品に比べて価格の安さが幸いしてか、マニア以外の客の開拓に成功しました。
 しかし、これらを組み立てて、快調に作動させるには調整等で手間暇がかかり、初めてモデルガンを持つ人にはとても気楽に楽しめる物ではありませんでした。
 ABS製モデルガンキットと同時期に発売されたこのビームライフルは、ブローバック式モデルガンの入門用機種として販売されたのではないかと考えてます(推測です。相変わらず大した根拠はない)。キットの購買層の年齢を低く見たのか、低年齢層の客を開拓しようとしたのかは今ではわかりませんが、ビームライフルを商品化した背景にガンダムプラモブームがあった事はまず間違いないでしょう。そして、この商品にとっての『ウリ』は『機動戦士ガンダムの〜』だったのではと考えると複雑な気持ちになります。もっともあの時代は、今思えば毎月新製品が出ていた分だけでも幸せだったかもしんない。
 まぁ〜後ろ向きの幸せ噛みしめて、今月はお終い。




●戻る