谷甲州作品の魅力の一つにしっかりと裏打ちされた技術(理学・工学等々)があることは今更私があえてあげるまでもないこととは思いますが、その技術を経済・商業活動に結びつける特許について言及されている作品はというと、残念ながら私の記憶にはありません。
でも、一寸考えると普通の人(何をもって普通とするかはこの際おいて)がもっているであろう「特許」のイメージはというと、
と、まあこんなものではないでしょうか。
私だって就職する前の認識はこれと似たような程度でしたから、特許について谷甲州がその作品中であえて踏み込まないのも、当然と言えば当然なのかも知れません。
でも、それはそれで一寸寂しいので、特許を知る人の裾野をほんの少しだけ広げたいなと思って、つらつらと書きつづりましたので、少々お付き合いください。
では、実際の特許とは何か、をとってもとっても大雑把に説明することします。
特許とは、改良を含めて何か新しいものや方法を発明した場合、特許庁に対して所定の手続きを経て取得する権利です。
この権利の特徴はというと、
1.権利者以外の者がその権利に抵触するものを商売として勝手に製造、使用、販売、譲渡、貸し借り、輸入をしてはいけません。
これを専門用語で排他的独占権といいます。だからライバル企業がどうしても他社の特許を使いたいときは、使用料(ライセンス)を払うか自分の持っている特許を相手が使うこと認めて相殺するか(クロスライセンス)しかないわけです。2.権利は国内限定です。
特許権はその国の主権の及ぶ範囲内に限ります。だから、他の国にも特許権を持ちたいときは、それぞれの国の特許庁に手続きをする必要があるのです。3.権利期間は有限です。
日本と欧州では、出願から20年で権利が無くなります。つまり、優れた特許をライバル社に抑えられてしまった場合、その権利期間が切れるまで手を出せないか、ライセンス料を払い続けねばならない訳です。4.特許庁への手続きは有料です。
日本だと、出願料21,000円、審査請求料87,000円、さらに特許権を維持するためには第1年から第3年までの特許料43,200円と、最低限151、200円が必要になります。他にもこれらの手続きを弁理士(*)に依頼すれば依頼料やら何やらがさらに掛かることになります。5.早い者勝ち、偶然の一致は認めない。
特許権は一番最初に特許庁に出願手続きをした人、唯一人に付与されます。ですから、著作権と違って「私はこいつの真似などしていない。独自にこの技術を開発したのだ(作品を完成させたのだ)。」といっても出願してなかったり、出願が遅ければ立派に権利侵害になります。6.東京特許許可局という役所は存在しません。
あのですね、特許庁は特許庁ですってば。通産省の外局で、東京にしかありません。だから、東京〜と地名を入れねばならならい理由もありません。
と、何か思いつくままに書いてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。ほんの少しでも特許について興味を持っていただければ幸いです。
駄文にお付き合いいただきありがとうございました。もし、よろしければ感想をお聞かせください。
もっと詳しく知りたい方へ
吉藤 幸朔 著 「特許法概説」有斐閣 や
特許庁のホームページ 等があります。
*弁理士: | 特許庁への様々な手続きを発明者や出願人に代わって行うエージェントで、国家資格です。弁理士、弁護士の資格を持たずに商売として特許等の代理人業務を行うことは法律で禁止されています。 |