三月怪談

中野[日本以外全部沈没]浩三

 初めまして皆さん。中野[日本以外全部沈没]浩三です。今まで投稿したこともなく、ただ、飲んでいるだけというのも何か問題がありそうな。と言って「異常兵器……」や「エンヂンの音轟々とぉ」なんて知識もないし、イラストも描けないし。すみません。  あー、さて、最近よんだ本に、中村希明の「怪談の科学」「怪談の科学part2」(BLUE BACKSです)がありまして、幽霊を見たなんて話は、幻覚幻聴暗示またはホラ話と言ったのまであるそうです。そして、この2冊の本を読んで、思い出したことがあります。今思い出しても、あのような恐怖は……。

 話というのは、昭和末期の、今を去ることの三年前に会社で実際に起きた、つまりは体験談です。
 年度末と言うと仕事が忙しく、とくに三月ともなると三日に二日ぐらいの割合いで会社に泊り込み、まさに修羅場と化します。その日も会社に泊り込んで三日目で、下着もそのまま、風呂にも入れずに(はっき言って汚いと思う)一人で泊り込んでいました。時計を見れば、午前四時過ぎ。珈琲でも飲もうと思い六階にある珈琲の自動販売機(仕事場は五階にあって、六階の国鉄精算事業団が入っている所にしか珈琲の自動販売機がない)に六十円を入れてアメリカンのブラックのボタンを押す。
 すると、廊下の彼方から足音が聞えてくる。広いビルの廊下は、深夜ともなると電気も消えて僅かに「非常出口」の明りだけで薄暗いものです。
 どうせ精算事業団の職員が泊り込んでいるのだろう……そう思い、足音の主を見て私は恐怖のあまり戦慄しました。顔がない。正確には、目も鼻も口もなく、ただ肌色になっているだけ。
 そんなアホな。きっと暗いので見間違えだろう、そう思い、よく見てもないものはないのです。ラフカディオ・ハーンの「むじな」じゃあるまいし。
 この場合、三つの可能性を検討しました。

 一番目の可能性を検討する。簡単な演算をする。2+2=3 異常はありません。
 二番目の可能性について、公務員がそのようなことは(多分)しません。
 となると……やっぱりいたのか? しかし、はたしてこんな事が……信じられない。落ち着け、クールになるんだ。目を凝らして見ても、いるものは居るし、無いものは無い。
 三番目の可能性があたっているものとして、対策を検討しました。

 逃げよう。
 しかし皆さん、ここで逃げれば私は会社の中で妖怪を見た。となってしまうのです。そんな事を考えている間にもノッペラボウは近づいてきます。
 そして私は、その正体を知ることが出来ました。
 なんの事はありません。頭のハゲた精算事業団の職員が泊り込みで疲れて、うつむいて歩いていただけの事でした。それが、薄暗くてよく見えなかった。つるかめ、つるかめ。 亡霊や幽霊、妖怪変化を見たと言った話は、あるいは、このようなことかも知れません。
 どうです皆さん、怖かったでしょう。

 さーてと、待望の「ヴァレリア・ファイル5」を読んで寝よう。
 そうだ、『こうしゅうえいせい』の原稿も忘れては大変だ。




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