宇宙の薙刀野郎
−人外協会員武器詳伝:薙刀篇−
落合[世界に通じる大ボケ、グレートのぞみ]のぞみ
1、薙刀の起源
戦闘武器としての「なぎなた」の出現時期はさだかではない。
日本で発明されたという説と、僧たちが中国から伝えたものだという二つの説があるが、未だ起源は明らかになっていない。
日本最古のものは、正倉院の中にある「手鉾」である。これは、太刀に長い柄をつけたものだ。
このような武器が使われたことを示すもっとも古い文献は天慶の乱(九三七年)の合戦絵巻である。それから百年以上後の「奥州後三年記(一〇八六年)」で、初めてこの武器が「長刀」という名前であることが記されている。ただし、振り仮名などはうっていないから、「ちょうとう」と読むのか「なぎなた」と読むのかは判らない。
一一四六年、「久案2年の条」という文献に、「俗にこれを奈木奈多と号す」とあり、この頃から「なぎなた」と呼ぶようになったと推測されている。
現在でも、「なぎなた」の漢字には「長刀」と「薙刀」の2種類がある。最初は「長刀」という字を使っていたが、吉野時代から足利時代にかけて、四尺、五尺、七尺という刀身の長い刀を使う者が現れたので、それらの長刀となぎなたを区別するために「薙刀」の文字が採用されたという説が強力だ。
なぎなたが隆盛を極めたのは、源平時代から南北朝時代である。
その後、槍の利用が多くなり、更に鉄砲の伝来などがあって、戦闘様式が集団的になると、一騎打ちの接戦に有利であったなぎなたの利用は次第に衰えた。
徳川時代には僧侶、武門の婦女子の護身用とされ、如何なる禄の者の子女でも、婚嫁の際になぎなた一枝を持参したという。戦後、なぎなたはあらゆる日本古来の武道と同様、文部省によって禁止されたが、しだいに禁止令が解かれ、昭和二八年に「日本なぎなた連盟」が発足した。
平成二年には世界十一か国により「国際なぎなた連盟」が発足、世界中で愛好されるスポーツとなっている。
2、薙刀の流派
戦後、文部省にスポーツとして認めてもらうために、各流派の代表が集まって、一つの流派を作り上げた。これが、「日本なぎなた連盟」の「形」「試合規則」である。
文部省の禁止令を解かれたのち、各流派は道場を再開しそれぞれの活動に戻った。これらの流派は「古流」と呼ばれている。
現存する薙刀術の主な流派は次のとおり。
穴沢派、鹿島新当流、気楽流、直心影流、鈴鹿流、直元流、天真正伝香取神道流、天道流、戸田派武甲流、肥後古流、正木流、馬庭念流、無辺流、揚心流。
3、薙刀の構造と種類
現在、日本なぎなた連盟で使われている薙刀は、二種類である。
「形」の演技を競うために使う薙刀は、長さが2.1〜2.5m、重量900g以上、材質は全樫である。試合用は重量650g以上、柄は樫の木だが相手を叩く部分が竹の2枚合わせになっている。
この他、各流派、時代によって長さ、形状が異なり、小長刀、両刃長刀、小反刃長刀、無爪、長巻、蛭巻長刀、千段巻長刀などの薙刀がある。
4、薙刀の技
基本的には剣道と同じで面、胴、 小手、 突きの攻撃であるが、それに加えて「脛打ち」というものがある。
構えは上段、中段、下段、八相の構え、脇構え。
胴打ち以外は、体に沿わせて薙刀を動かすため、まっすぐ前を向いて歩ける所ならば、どんなに狭い場所でも(天井は高くないといけないが)薙刀で相手を攻撃することが可能だ。
5、薙刀の利点を活かす
薙刀の利点は、「起源」でもふれたとおり、とにかく長いことである。相手が普通の剣を持っていたとしたら、懐に入られない限りは断然、薙刀の方が有利だ。同程度の実力を持つ剣道有段者と薙刀有段者が戦うと、必ずといっていいほど薙刀有段者が勝つと言われている。
そこで誠に、まことにまことにもってほんとに突然なのだが、
「もしも、ルーク・スカイウォーカーが薙刀術を習っていたら」を考えてみよう。
ルークはライト・セイバーを取り出し、おもむろにその柄を引き伸ばした。ライト・セイバーを伸縮式に改良したのは、ルークの案だった。柄の長さは八尺ほど。
「来いベイダー」
「ぶおおん」という音と共に、先端から光の刃が現れた。ルークは切っ先をベイダーの切っ先に合わせ、さっと上段の構えをとる。
ベイダーは迷った。刃をかいくぐって彼の懐に飛び込めるだろうか、それとも踏み込んだ瞬間に膝を切り落とされてしまうだろうか。二つに一つ・・・
・・・・ああ、これではB級の西部劇もどきSF映画だわ。嫌いじゃないけど。
じゃあ次、アニメ行ってみましょう。
「アムロ、行きまーす」
白いモビルスーツは戦闘宙域へと急いだ。
「シャアは、シャアはどこだ」
彼の声が聞こえたかのように、赤い姿がこちらへ向かって突進してくる。
アムロはニヤリと陰険な笑みを浮かべ、背中の剣を引き抜いた。ボタンを押すとそれは従来の三倍の長さに伸びた。
体当たりをかまそうとしていたシャアは驚いた。これでは簡単に突かれてしまう。スピードを落とし、相手の懐に飛び込む隙をうかがうことにした。。
・・・ああ、そんなことしてたら、後ろから誰かに撃たれてしまうじゃない。
ばかっ
しゃあない。つぎー。
賊の一人が部屋の中を物色している。宇宙服を着ているから動きが遅いが、こちらが隠れているテーブルの陰を覗き込まれたら最後だ。
秋山は足元に転がっていた金属パイプを拾い上げた。長さは二m半ほど、重さも丁度いい。
「何をするんだ」
「いいから見ていて下さい」
ナイフを取り出し、刃をたててたまま腰のポケットに差し込む。
敵がこちらに近づいてくる。
「おい待ってくれ、撃たないでくれ」
秋山は声をかけて立ち上がった。敵は振り向き銃を向けたが、秋山の無防備な格好に安心したようだ。
秋山は一歩踏み出しながらパイプを握った。足を踏み出すとともにパイプを体に寄せて一体化 させる。そして、手が伸びたと思うと次の瞬間には敵の銃を叩き落としていた。次に体を沈ませて相手の懐に飛び込み、パイプを投げ捨てる。あいた手で、腰のナイフを引き抜き心臓を刺した。敵の宇宙服が破れ、血液の玉が秋山のまわりを飛び回った。
「いやあ、たいしたもんだ」
「必殺、”短刀留”応用篇」
秋山は胸を張った。
・・・・おーーーい、いつの間にそんなもん習ったんじゅわああ。
6、薙刀のススメ
薙刀を始めたきっかけは、運動不足解消の為でした。薙刀というと女の人たちが「えーーーいっ」「やーーーーっ」と、甲高い声をあげながら優雅に棒を振り回しているようなスポーツだと思って安易に始めたんですが、これがなかなか激しいスポーツでして、試合に出ると息がぜいぜい言って吐き気はするし、練習では元世界チャンピオンの若先生にボコボコに叩かれるし、とってもしんどいスポーツです。でもなぜかすっきりするんですな。やっぱり武道というのはいいもんです。長くて使いにくかった薙刀がいつの間にか体に馴染んじゃって、最近では握るのが快感になりました。きゃっ。
7、宣戦布告
剣道でも少林寺でも何でも来なさい」
参考文献:
大日本武徳会武道専門学校薙刀術教員養成所、薙刀史・忘備録
「なぎなたの歴史」矢野恒
「なぎなたの概要」徳永千代子
「なぎなたの歴史」沢田花江
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