十勝に宇宙基地を

花原[まちゅあ]和之

 先日、北海道航空宇宙産業基地研究会議の視察団(?)というのが、私の勤務先である大阪府立大学工学部航空宇宙工学科へとやって来ました。その時に彼らが手土産に置いていった小冊子とパンフレットが回覧で回ってきたので、少しご紹介しようと思います。
 小冊子は「航空宇宙産業基地構想推進のための基本的方針」(平成3年7月)、「HOKKAIDO AERO-SPACE INDUSTRIAL BASE PROJECT(北海道航空宇宙産業基地構想)」(発行時期不明)、「有人宇宙時代をめざして - HOKKAIDO AERO-SPACE  PROJECT -(北海道航空宇宙産業基地構想)」(発行時期不明)、「北海道に航空宇宙産業基地を建設するために−平成4年度活動報告」(平成5年12月)の4冊です。
 これらを見ると、北海道としては、昭和60年9月に宇宙産業基地研究会議を発足させて以来、かなり真面目に宇宙基地を作ることを考えているようです。そして、当然(!)ですが、フライトセンターの予定地として、十勝平野の南端を考えているのだそうです。

十勝が宇宙基地に適している理由として、

といったことを挙げています。ちなみに、既に北海道では、旧炭鉱の採掘坑を利用した地下無重力実験センター[JAMIC]が稼働しています。これは、地上での落下による無重力実験施設としては世界でも屈指のもので、約10秒間の微小重力環境を実現することができます。
 関連の新聞記事等も多数紹介されていて、それによると、どうやら、まず第一歩として、HOPEの実験滑走路の誘致を目指しているようです。確かに、種子島では、打ち上げはできても着陸するための滑走路はありませんから、他に候補地が無ければ実現する可能性は十分にあるような気もします。まあ、難点として、緯度が高いことがありますが、お隣りのロシアも頑張っていることや、国内で広くて平らな土地を探すことの困難さを考えれば、その程度は克服できるのではないでしょうか。(そう、何よりもこの国では、平らな土地はもうほとんど残っていない…)
 余談ですが、現在宇宙開発事業団の打ち上げ施設のある種子島では、漁業との関係で、盆と正月(旧正月)の年2回しか、ロケットを打ち上げることができません。それから、例えば、イスラエルでは、ロケットを西に向かって打ち上げます*1。…というのは、あの辺で東に向かってそんなものを打ち上げればたちまち戦争にな
ってしまうからです…(よくわからない人は、中東の地図を見て下さい)。それに比べれば、少々緯度が高いというくらい…ねぇ。
 これで、十勝に宇宙基地ができれば、「軌道庸兵」のただし書きが一つくらい減る、かな。(しかし、いつのことになるのやら…)
 ちなみに、彼らがやって来たのは、是非北海道の大学に航空宇宙関連の学科を設置したい、という目的でしたが、まあ、たぶん、「こんな程度の設備でもいいのか…」という感想を抱いて帰られたことではないかと思います。(うちの学科もそれほど立派な設備があるわけではない)

*1 ロケットを軌道上に打ち上げる時には、東に向かって打ち上げると、地球の自転速度を利用できるので、普通は東向きに打ち上げる。




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