我々の期待のこもった宇宙ステーション・フリーダムは、(財政的・政治的状況の変化に伴い)ロシアのミールをくっつけて国際宇宙ステーション・アルファ(ISSA)(さすがにロシアをまぜるのに「フリーダム」ではまずかったからか?)と名前を変えながらも、なんとか実現への道を歩んでいるようです。
さて、そんな中で、宇宙工学関係のジャーナル、Acta Astronauticaに「Methodology and Results of a Space
Station Education Pilot Programme in the Primary
School(小学校における宇宙ステーション教育の試験プログラムの手法とその成果)」というレポートが掲載されていました。これは、イタリアで行われた10−12歳の小学生を対象とした試験的な宇宙工学教育ついての報告で、なかなか面白いことが書かれていました。
目的は至極まじめなもので、「西暦2000年から2030年にかけて運用が予定されている宇宙ステーション・フリーダム(この報告書が書かれた当時)の潜在的な利用者は、現在まだ小学生である。また、この世代の子供たちは、学校で教育を受ける全ての生徒たちの中で最も宇宙に関心を示している。このことからも、特に若い世代に対しての宇宙工学に関する教育が必要である」というものです。曲がりなりにも宇宙工学などという分野の教育活動に携わっている人間である私としては、なかなか参考になるレポートでした。
面白かったのは、授業の最初に子供たちに対して行われたアンケートの結果です。これによると彼らは宇宙に対していたずらに恐怖心を抱いたりしてはいないものの、なかなか楽しい(とんでもない?)理解をしていることがわかります。というのは、いくつかの質問とその代表的な解答がこんな感じだったからです。
問 「宇宙ロボットとは何か」 答 「防衛システム」 (88%) 問 「何故人類は宇宙へ行くのか」 答 「エイリアンと戦うため」
「宝を探すため」
「宇宙に植民するため」(51%)
(26%)
(18%)問 「宇宙ステーションで何をするか」 答 「地球を防衛する」 (62%)
それから、91%の子供たちが、人類は既に宇宙人が存在する確かな証拠を持っている…と考えているそうです。こういった答えは明らかにテレビやコミックの影響だそうで、ひょっとすると最近欧米にも輸出されているという、日本のアニメにもその責任の一端があるような気もします。(ただ、別のイギリスの宇宙工学関係の雑誌では「オネアミスの翼」をベタぼめしていました。なんでも、アニメらしくなく(?)ロケットの描写などのリアリティが優れている…ということだそうです)
この子供たちも、先生に映画やスライドを見せられたり、小グループでのディスカッションや、地上基地側と宇宙ステーション側に別れてのロールプレイをしたりするうちに、正しい理解(!)を獲得してゆくのだそうですが、なんとなくこの子供たちがこのまま育って、将来の宇宙工学に携わったらなかなか面白そうだと思いませんか。
○
「宇宙には地球を狙う悪い宇宙人がいるはずだ…だから、地球防衛軍を組織して宇宙ロボットで戦うんだ」
「僕は宇宙ステーションで地球を守るために戦うぞ」
「もたもたしていたら、きっとエイリアンがせめてくるぞ」
「だったらその前にやっつけてしまえ」
「よし、早く超光速航行の技術を確立するんだ」
「それから、どこにエイリアンがいるかを探そう」
「他の星に行って植民地を作って宇宙の秘宝を探すんだ」
‥‥‥
○
航空宇宙軍の創設当時の話というのは、確かまだあまり書かれてはいなかったと思いますが、その歴史をひもといてゆくと案外このあたりに原点があるんじゃないでしょうか…と、ふと思ったりしました。
それとも、子供たちは鋭い直感で真実をつかんでいる…とか。