実況中継
正しい締め切(直)前の過ごし方

花原[まちゅあ]和之

 さて、締め切は…日本機械学会シンポジウム「ファジー/ニューラルネットの機械システムのダイナミックスと制御への応用」論文原稿・5月10日締め切(必着!)

 しかるに、この実況の始まりは、すでに5月5日午前6時59分だったりする。まぁ、必着といいつつ勝手に消印有効といつも解釈しているのだけど…それにしても、困った。原稿はまだ半分も書けていない。シミュレーションがうまくいかない。しかし、今朝は4時間くらいは眠ったから修士論文の締切前なんかよりはのどかにしているかも知れない。でも、あの時はひたすら書くだけだったからなあ…。今は書こうにもネタができていない……いや、ネタは決っている。パラメータをいじくり回して計算させてもなかなか思うように結果が出ない。
 「ねつ造とどこが違うんですか?」…二年前の4年生の言葉が思い出される。
 自分に都合のいい計算を探すのと、自分に都合のいい結果だけしかないと言うのは違うのだが…しかし、ねつ造の一歩手前のような気もする。どうでもいいけどなんとかならないものかねえ。人様に見せられる結果が一つあればカタがつくのに(やっぱりねつ造みたいや)、ぶちぶち…。
 あああ、現実逃避に走ってしまう…。リアルゴールド一本で八時間、三百円のリゲインが二十四時間ならば百円でこの時間はおかしくないはずだ。などと言っていても仕方がない。岩瀬[従軍魔法使い]氏に依頼されたとはいえ、こんな状況で書いたものを読んでくれる人がいるとは思えないが、まあ、ボツにするかどうかの判断は編に任せてしまおう。私に責任はないぞ…。

 5月10日午後11時3分。また、できない。もう消印有効もあきらめた。先生に原稿を見せたら予想された通りの言葉を受けてしまった。
 「これじゃシミュレーションの意味がないやんか」
 「うぅ、おっしゃるとおり、至極ごもっともでございます…。でも、そううまくいかないんですよ、困ったことに…」
 「別に、締切を遅らすのを勧めるつもりはないけどな、機械学会は土曜は休みや。そやから明日中に速達でだしたかて一緒やで」(5月10日は金曜であった)
 「はあ…。じゃあ、もう明日の昼ぐらいをめどにどうか…」
 「そんなゆうてたら明日の晩になるで!朝には仕上げるつもりでやらな」
 「ご期待にそいたいと思います…(うるうる)」
 しかし、まだ図を何枚かかかなきゃならないし、英文アブストラクトも残っている。果して明日の米田(もはや旧姓)さんの結婚記念宴会に間に合うであろうか…。とても、不安である。あてはなんてかわいそうなんや…。(しかし、現実逃避にはすぐに熱中してしまう。こんなものを書いている暇は無いと思えば思うほど、書き連ねてしまう……締切前の「こうしゅうでんわ」もこうして書かれているに違いないと私は推測する)……本業に戻ろう。

 5月11日午前4時49分。やっとアブストラクトと図が書けた。おまけにごそごそしているとシミュレーションプログラムのバグまで見つけてしまった…。
 あわてて動かしているけど…。疲れた。いったん家に帰って風呂に入ってこよう。でも眠っている暇はなさそうや。

 5月11日午後11時53分。最後の切り貼りの段階で、図を一枚忘れるというとんでもないミスをしてしまい、結婚記念宴会への参加をあきらめる。もう、いい。始発までにどうにか仕上げればいいや…。疲れた。しかし、時間は余裕ができた。のんびりしよう。しかし、不幸や。甲州先生の原稿の場合にはこのような悲劇は起るまい。まぁ、ディスクがクラッシュしたりすれば、もっと悲惨かもしれないが。

 5月12日午前3時2分。ようやっと、完成。あとは、始発で大阪中央郵便局まで出向いて、速達で発送するのみ。消印有効から27時間の遅れは過去最悪だ。結果がもっとうまくできていれば平和に書けただろうに。しかし、疲れた。

 締切なんて、きらいだ……。

(…ほら、たいして面白くない原稿やんか)




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