地底からの呼び声

伊藤[書籍小包]俊治

う〜ん、今回も変なマニアの話を期待されているんだろうか。そうなんだろうな、二回続けてマニアの話を書いちゃったもんな。今回何の話書こうかなあ。変わったマニアっつっても、なかなかなあ。
 …オカルトマニアの話でも書こうかな、パナウェーブ研究所の事件もあったし。
 …いやいや、安易だ。…健康食品マニアの話はどうかな…インパクトが弱いなあ。…をを、Hマニアの話はどうじゃ…奥さんが読んだらマズいよなあ…だいたい「こうしゅうえいせい」ってSF系同人誌だろ、関係ないやん。もっとこう、「山でSF」ちゅうよなネタはないかのう…あるやん!
 ということで、前回、前々回と野山をさまようマニアの話を書きましたが、今回も野山をウロウロするマニアの話です。

 城オタクでもなく、野生生物マニアでもないひとが野山をウロウロしていたら、それは何者か? 答えは化石マニア(含鉱物マニア)である。
 考えてみれば、この三者はとてもよく似ている。まず、その分野の専門家(歴史学者とか古生物学者)と比べてもひけをとらないような知識を持っている人が多い。割と年輩の人の割合が高い割にマニア度は高い。そして何よりもコレクターである。
 余談であるが、この最後の「コレクションする=集める」あるいはその変形としての「記録する」、さらにはその背後にある「捜す」というのがマニアやオタクとそうじゃない人を分けるポイントなんでしょうね〜。
 化石マニアっていうのは別に珍しい存在ではなく、身近に一人くらいはいるもんだが、なんとなく地味なものだと思っていた。最近、子供が恐竜にハマり(そういえば恐竜もオタク・アイテム)、「恐竜の化石を掘りに行きたい」などといいだしたので、仕方なくネットで調べてみると、出るわ出るわ、凄い世界が広がっていたのであった。
 ちょっと調べると、この業界も幾つかのグループに分かれているのが判る。化石を幅広く集めている人、特定の地域の地層を細かく調べている人も沢山いるが、そういった人達は比較的マニア度が低そうである。マニア度が高いのは、やっぱり特定の「何か」に絞り込んでいる人達だろう。
 マニア度の高い中で、もちろん大勢力は「恐竜」さんたち。ほら、あなたの周りにも一人はいるでしょ。だが、このグループはちょっと毛色が違う。何しろ国内には恐竜化石は少ない。だから書斎派になるか、海外に行くしかないのだ。ホントに力の入っている人は、アルゼンチンや中国奥地にまで出かける。要は金子隆一さんである。そこまで金や暇の無い人は関連グッズを集めたり、本や写真集を集めたり、とますますマニアックな方向へ。そういう人にとって(私もそうですが)、チョコラサウルスの発売は衝撃的だった。まさか海洋堂が作った古生物フィギュアが200円足らずで手にはいるとは!
 変わったところではサメの歯化石研究会(http://sea1.odn.ne.jp/ccu79070/)なんてのもマニア度が高い。ここのHPのトップには「青く光るサメの歯化石は、その姿と色の美しさには限りない魅力があります」なんて書いてある。すごいよね〜
 化石サメには映画にもなったMEG、メガロドンというヒーローがいる。歯だけで15cmに達する大きさで、小型乗用車がすっぽり入る口を持つ。こういうバケモンがいるとやっぱり盛り上がるものである。この歯の化石はサメキチの一番のあこがれなのだ。それにサメは古生代から現代まで分布していて種類も多い。集める楽しみもあるのだ。

 集めると言えば、化石は基本的には集めるもののようだ。しかしこの日本の土地はどこも全て誰かの所有地である。だから、どこかで化石を採ったり昆虫を採集したり、城跡の写真を撮ったりするのは(その誰だか判らない事の多い)所有者の承諾がない限り、法的には微妙なところがある。
 その手のHPに行くと「XXは立ち入りが禁止になっています。最近マナーの良くない人が出入りして、地主が怒っているようです」「XXに入るときには必ず所有者の○○さんに一言断ってから行ってください」てな書き込みが掲示板にあったり、HPの断り書きにあったりする。そういうちょっとばかり後ろ暗いところもマニア度を高める要因かもしれない。

歯 三葉虫

 もちろん化石は商品でもある。各地のミネラルショップと呼ばれる専門店に行くと、様々な化石を売っている。完全に金属で置換され、ピカピカに磨き上げられたアンモナイトなどはとても美しい(欲しい!)。値段は小型の三葉虫で数百円くらい。小型恐竜の全身骨格だと十五万くらい(欲しい欲しい欲しい)。美しさと希少さで値段が決まるようだ。お金さえ出せば、恐竜の卵も手に入る(百万弱くらい)。この辺は骨董品と一緒である。
 「恐竜」以外で多くの人の心をとらえているのは、やはり三葉虫とアンモナイト。
この二つを知らない人はいないだろうが、日本はアンモナイトの主産地の一つであることはあまり知られていない。特に北海道からはニッポナイトという変わった形のアンモナイトが産することで有名。アンモナイトはファンも多く、アンモナイトが沢山登場するHマンガまである(「背後霊24時!」(がぁさん、秋田書店。少なくとも1巻はそうだった!)。
 三葉虫はそれに比べるとやや分が悪い。それほど見事な化石は日本ではあまりでないらしい。けれど、その形の面白さ、謎の生態などからファンのマニア度はアンモナイトよりも高いような気がする。最近、早川書房から「三葉虫の謎」(リチャード・フォーティ著)という専門書も出て、局地的にも盛り上がっているような気もするし。
 最近見つけた三葉虫のHPで凄いのは「電脳三葉虫博物館」。普通の三葉虫情報や化石の紹介以外が面白い。例えば「三葉虫のように見える」ものたち。湯たんぽやパソコン、手榴弾。ゴジラ映画の三葉虫の紹介。極めつけは、ここの管理者、はらだけいいち氏が作っている古生物の同人誌(!)「World of Fossils」に掲載したという四コマ漫画「ガンバレ三葉虫」。著作権もあるのでここには掲載できないけど、こんなものです。
 どうです、読みたいでしょ。個人的には「細腕三畳紀」(あさりよしとお、講談社)より好きだな〜。

 う〜ん、化石採りに行ってみたいなあ。…うう、いかんいかん「世界の三葉虫」等という本を買ってしまったじゃないかあ。…ああ、また、今度は「Trilobite」などという英文の写真集をっ!
 …ああ、早く採集に行かねば本がどんどん増えてしまう…。

 




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