「ということは、この車に対してメールアドレスが与えられるという事ですか?」
「そういう事になりますね。」
これは先月、日産のディーラーでセールスマンと僕との会話である。べつに車を買い替えようと思ったわけではありません。
なんとなく新型マーチを見てみたかったから寄ってみたら試乗車がおいてあり、それにオプションの「カーウイングス・ユニット」が装備されていたのです。
「センターコンソールに携帯電話をセットします。携帯は普段お使いのもので構いません。ただしauの場合は接続プラグの変換アダプタが必要ですが。」
「それでこのボタンを押すと、車載のGPSユニットと連動して、現在位置を地図付きで相手のパソコンや携帯電話にメールしてくれるんですよ。」
「あと、こちらの画面で平均燃費と、それから推定される予想航続距離なんかも表示されます。」
家電製品のIT化の話は、いまや珍しいことではありません。たとえば象印のi-Potという製品。この製品のことを初めて聞いたときにはちょっとびっくりしました。
まずそのネーミング。最近はなんでも「i」を付ければ良いとおもっているのでしょうか?
まあそれはともかく、30分毎にポットの使用状況(電源、給湯、保温)を送信することによって、ポットの使用者の状況を第三者に知らせるというこのシステム、結構良くできたシステムかもしれないと思いました。もっとも、メールが正しく送り先に届けられれば、ですが。
それに、自動車のIT化という話ならVICSがあります。これは、道路の各所にあるセンサやカメラからの情報をVICSセンタに集約し、処理結果を電波・光ビーコンやFM多重放送を用いて車載ディスプレイに表示するというものです。これによって、運転者は渋滞や工事・通行止めなどの情報を図形や地図表示として得ることが出来るわけです。しかし、これらの情報の流れはあくまでも一方通行です。VICSセンタからの情報を車が受けとるだけで、自分の車からVICSセンタへ情報が発信されることはないわけです。
タクシーとか宅配便などでは、GPSと携帯電話や無線機を併用した配車支援システムがあります。パトカーも類似のシステムを使用しているらしいです。これは、各車(クライアント)から基地局(サーバ)に対して自車の位置データを送信し、基地局で集約。基地局から各車にたいして経路情報などを送信するわけです。これで、各車は基地局を核としたクライアント・サーバ・システムとして機能することが可能となります。でも、これはあくまでも後付けのシステムです。このシステムと、それぞれの「自動車」というシステムは、基本的にはきりはなされてますよね。
さて、話は最初の「カーウィングス・ユニット」に戻ります。このユニットは、メーカー純正です。だから当然のことながらエンジンマネジメントユニットと直結出来るわけで、すでにしているのかもしていませんが、その情報に直接触ることが出来るわけです。そうするとどういうことが可能になるのか。エンジンの状況を定期的にメールで販売店に連絡することなんかも出来るわけですよね。すると、「○○様、そろそろオイル交換の時期です」とか「そろそろタイヤの点検をなさったほうが良いですよ」なんてメールが逆に届いたりもするかも。でも、これは良いことかもしれないです。世の中には想像をこえて車の整備をしない人は存在しますからね。さらに一歩進んで、自動車メーカーは自分の売った車全体をシステムとして管理することが出来るわけです。エンジンマネジメントプログラムを勝手にアップデイトしてしまうとかね。
近いうちには、車が勝手にメールを出したりするかもしれません。たとえばポストペットのように、
「今日は山原のほうにドライブに行きました(^_^) でもmiki、エンジン回しすぎ (´ヘ`;)ハァ」
とか。GPSとエンジンコントロールのデータにアクセスしているのですから、こんなメールを車が出すことも出来ますね。
ほかにも、
「今日、mikiは仕事帰りに2時間ほど屋宜原*1に寄りました。なにしてたのかな(?_?)」
こんなメール、奥さんが読んだら家庭争議のもとですね。
しかし、そのデータがメーカー内だけで使われているのであればよいのですが、こんな悪用のされ方をしたりして、、、
「五藤殿 あなたが先週火曜日午後11時10分ごろ 国道58号線嘉手納 付近で制限速度30キロ超過で走行したとの記録があります。速やかに最寄りの警察署まで出頭してください。」
*1)沖縄において家庭争議の元になりそうな場所。ほかに辻町とかがある。
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