ハイパー・ストリング・ネットワークに関する考察

五藤[広報部長輔佐心得]三樹

はじめに
 コンピュータの有効利用を語るうえで、ネットワーク化は重要な課題のひとつである。従来のメインフレームを主体とする垂直分散処理環境においては、ホストマシンがほぼ全ての処理を行なっていたため「メンテはじまりゃみな終わり」という状況であったが、水平分散処理環境では主な処理は各マシンにおいて行なわれるためそのような問題も少ない。

ネットワークにおける問題
 水平分散処理環境ではそれぞれのマシンが主な作業をおこなうため、ネットワーク内を流れるデータ量は垂直分散処理環境に比べると少なくてすむのではあるが、従来がテキストデータ主体であったのにたいして今後場所の透過性をより以上もとめるとき、音声や画像がネットワーク内を流れることは必至である。表1に情報の種類とそれを快適に伝達するのに必要な伝送速度をまとめた。

表1 必要とする伝送速度
情報 容量 伝送速度
動画 500×500
圧縮(MPEG1)
80Mbps
0.2〜1.2Mbps
イメージ カラー (2000x2000)
モノクロ(1000x1000)
36Mbps
1Mbps
グラフ・図形 ビジネス用
エンジニアリング用
30〜150Kbps
75〜280Kbps
音声 通常時
圧縮語
64Kbps
3.2〜8Kbps
テキストデータ 一画面あたり
1200文字
9600bps

現在の NIFTY Serve の通信速度が ROAD1および ROAD2で2400bps であり、すでに限界を越えている。このことは一度でもRTをすれば解ることである。注1
 さらに別種の問題がある。ネットワークの脆弱性である。つまり、現在の通信網は極めて電磁波障害に弱い。要するに上空、成層圏上で核爆発が起れば、地上のほとんどのコンピュータは使用不可能となる。
 この問題について全てのマシンに対し磁気シールを施し外部と電気的に遮断すれば問題ないのであるが、問題はネットワークである。ここで光ファイバーを使った通信網を使用すれば良いとも考えられるが、これは物理的に切断された場合に修復が困難である。

注1)この記事が書かれたのは 1992年である。

Hyper String Network TM
 そこで今回考え出されたのが Hyper String Network TMである。これは電気信号や光を全く使わず、物理的な結線だけでホスト間を結ぶものである。具体的にはテンションをかけたストリングに物理的な信号を与えることによってデータ通信を行うというものである。表2に Hyper String Network TMの基本的な仕様を載せる。

表2 Hyper String Network TM 仕様


伝送媒体 ノーストリリアウール超強撚糸
ネットワークトポロジ バス型
伝送速度 30Mbps
最大ホスト数  100台/セグメント
1024台/ネットワーク
ホスト間最大距離 10m
データ
リンク
媒体アクセス制御
(Media Access
 Control sublayer)
CSMA/CD方式
(Carrier Sense Multiple Access with
 Collision Detection)

 このシステムの利点は、1.電気信号を使用しないため電磁障害の心配をする必要が無い。2.結線は結ぶだけで良いので(もやい結びが良いとされているがこまむすびでも問題はない)特殊な技術を要求されない。3.断線の有無は目視で確認できるため、点検作業が容易である。また断線の場合にはその場で結べば良い.などが挙げられる。伝送媒体には理想的にはインファント産の絹糸が望まれるが実用上は問題ないと考えられる。
おわりに
 現在検討されている動画圧縮規格 MPEG2 では通信速度は2〜10Mbpsがもとめられており、Hyper String Network TMにも今後さらなる伝送速度の高速化が要求されている。またホスト間距離の問題とともに今後の課題と言えよう。




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