お気楽ダイバーズ
−西表島編−

大井[ないしょ]俊朗

 ども。またまたお目にかかります、大井です。今回はすっかり恒例となった青年人外協力隊潜水分隊の夏期合宿に同行してまいりました。その報告をさせていただきます。
西表山猫 さて、西表島というとイリオモテヤマネコがまず頭に浮かぶと思います。日本のアマゾン、最後の秘境と呼ばれ、大自然が支配する島、それが西表島です。人外お気楽ダイバーズも隣の石垣島までは遠征していましたが、さらなるレベルアップを図り、今回この魔境へ挑戦することにしたのです。
 大阪空港から阪本[初代]班長率いる隊員4名と随行員3名、ゲスト1名、私の9名が那覇へ向かい、そこで待っていた竹林[Nina]班2名と合流し、わずか30分あまりの乗換え時間で石垣行きの便に雪崩れ込む、という荒っぽいスタートでこの遠征ははじまりました。西表島へ行くには石垣島からさらに連絡船で行かねばなりません。休む間もなく連絡船に乗り換えて最終目的地西表島へ向かいます。この強行軍で14時過ぎには西表島に到着することができました。そしてそのまま最初のダイビングをしてしまうんです、この人たちは。
 随行員とゲストを除いての平均年齢は30代後半西表島周囲の海の参考写真であるのもかかわらず、人外お気楽ダイバーズの体力気力には目を瞠るものがあります。手早く準備をすませ現地サービスのボートに乗り、ポイントへ向かいます。現地ガイドからダイビングポイントのブリーフィングを受けている様子にも旅の疲れはまったくみえません。1本目のポイントは鳩間島東沖。潜降するとすばらしく透明度が高く、視界がたいへん広い。お気楽ダイバーズは大興奮です。全員が潜水対応最新デジタル撮影機を携行し、目につくものをすべて記録していきます。西表島の秘密をすべて暴こうかという勢いです。現地サービスもあきれたことに、いきなり1時間も潜っていました。潜水訓練が終わり、船上に上がっても激しく意見を交換しています。この光景は食事中もその後のミーティングでも見られました。個々のデジタル撮影機の画像を再生し、写った魚類や甲殻類、地形について調査・記録をしていきます。みなさん真剣です。竹林[Nina]孝浩氏などは顔を真っ赤にして声高に弁舌をふるっています。明日からの潜水活動にそなえて高カロリー飲料を摂取して鋭気を養います。こうしてあわただしかった初日が終わったのでした。
 翌日からの2日間は日に3本潜水活動を行うハードスケジュールです。この日は石垣島までダイビングボートでゆき、マンタ(オニイトマキエイ)の観察をしました。あいにくと1匹しか遭遇できませんでしたが、「私は」堪能できました。その次はイソマグロの群れを探して再び西表の海へ。イソマグロは少なかったのですが、クマザサハナムロ、ウメイロモドキなどの群れを観察できました。そして夜間潜水訓練のため、日没を待ってバラス島に向かいます。このバラス島というのは西表島の沖合に珊瑚の死骸が集まってできた不思議な島です。潜水のまえにまずバラス島上陸訓練を行いました。できることはなんでも取り組んでスキルアップを図る姿勢はたいへん勉強になります。そして夜間潜水訓練では夜の珊瑚礁を潜行していく技能を磨きます。暗い海底を珊瑚に傷をつけずに行動するのは大変神経を使います。その合間に夜の魚類の生態観察にも余念がありません。珊瑚の枝の奥で透明な膜をはって寝ているアオブダイはかわいいものです。この日はほぼ満月で空も晴れていたため、潜水していてもその光であたりがうっすらと見えるほどです。この状況を利用して携行ライトを消して、無光潜水の訓練も行われました。こんなことまでしてしまうとは。この人たちはどこかの国の情報部にでも所属しているのではないかと疑ったほどのテクニックでした。もちろんそんなことは間違っても口には出しませんでしたが。
 3日目も絶好調です。ヒナイビーチという砂浜の沖で1本目の潜水活動を行います。この場所は深度が浅く、安定した潜水を行うのが難しい場所です。このような様々な条件での訓練も怠りません。その次は西表島の西部に移動し、外離島で珍しいハゼを観察です。ニチリンダテハゼ、オドリハゼの生態を観察、記録しました。この日の最後は船浦港のすぐそばで透明度の低い状況での潜水訓練です。白く濁った海中で珊瑚の中を動き回るニシキテグリという綺麗な魚を補足する訓練も行いました。各自散開し、訓練を行いましたが誰一人迷うことなく見事に活動していました。
 最終日は例のバラス島の北部沖で1本目を潜りました。ここは海底から壁のようにせり出した壁のような岩が幾層にも重なる変わった地形です。下手をすると迷子になってしまうこのポイントで敵の追撃をまく訓練でもしているのでしょうか? 私にはよく判りませんでした。そして西表島遠征最後のポイントはお花畑という平和な名前の場所でした。この潜水は訓練ではなく、ファンダイビングをしてみなさん楽しんでいたようです。しかしそこはやはり人外。ネムリブカを見つけると追い回したりして遊んでいました。70分以上も潜水して現地ガイドに早くあがるように注意されたほどリラックスしていました。
 こうして4日間における潜水訓練は終了しました。この後、西表温泉で疲れを癒す組と、林[艦政本部開発部長]譲治氏率いる西表島視察組とに分かれて行動しました。そして夕方の連絡船で石垣島に渡り、そこで活動中の川崎 [漁師]氏をゲストに遠征の打ち上げを行いました。終始精力的な訓練に励んだ隊員の方々の表情は晴れやかで、この打ち上げは大変盛り上がりました。随行員3名も川崎氏の仕事に非常に興味をもったようです。彼らもこの遠征に加われてよい経験になったでしょう。

石垣市での宴会の図 夏至直後、北回帰線付近での南中の影

 以上が4泊5日で行われた西表島遠征の概要です。もっと多くの訓練、例えばウェイト投下で相手にダメージを与えるとか、フィンを装着せずに潜行可能か確かめたり、ハウジングにいれた一眼レフカメラにレンズキャップをしたまま潜って海底で念写を行う実験をしたり、などを行いましたが紙面の関係上すべてあげる訳にはいきません(それにあまり詳しいことは機密だからと念を押されました)。
 このあたりで終わりにしたいと思います。
 




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