奄美大島
(2007.07/07-11)

ダイビング分科会:ほらふきクラブ

 今年は昨年潜れなかった(昨年は西表島へのダイビングツアーを二度計画し二度とも台風のために中止になってしまった)分まで潜ろうと奄美大島へ行く。なぜ、西表島でなく奄美大島かと言うと、単に目先を変えたかっただけでたいした理由はない。もしかすると 、ネイティブシー奄美の前のビーチに好きなだけ潜れると言う噂が我々を誘ったのかもしれない。

 始めに
 ダイバーには常識だが、ダイビング時間を決定する要素の最大のものに「タンク内の空気の量(圧力で計るので残圧と呼ぶ)」と「 (高圧の空気を呼吸することが原因による)体内の残留窒素の量」がある。 そして残圧と窒素のどちらもが潜る深さ(深度)に強い影響を受けるため、数m程度の浅いダイビングの場合には「体力」だったり「眠い」とか「空腹」、「トイレに行きたい」といった生理現象や「潜るのに飽きた」などの要因が支配的になる。
 また残圧は一度浮上すればタンク交換という手段でリセット可能だが、残留窒素は水面である程度時間を過ごす以外に有効な対処方法は存在しない。 そして一日の時間は有限である。

2007. 7/ 7

 サービス(兼宿泊場所)に到着すると複数送ったダイビング機材の一つが届いていない。宅急便事務所に連絡、粘り強い交渉 を行い即座に配達してもらう。その結果、ダイビング開始までのロスタイムは40分程度。比較的スムーズに開始したと言えるだろう。

 倉崎ビーチ
 15時45分エントリー開始。このツアーの今後を左右するビーチへの様子を伺うため、また久々のダイビングの腕試しの意味もあって水深2〜7mをゆっくりと進む。 このビーチ水深3mにハナヒゲウツボ成魚が居る、しかも毎日居る場所が違うし。その他には多くの種類のナマコにウミウシが居る。
 まずは小手調べに70分ほど潜っただろうか。
 次はもう少し深いところへ。
 ほんの少し深い砂地へ行くとそこはハゼだらけ。たまにヤシャハゼやヒレナガネジリンボウも居るがほとんどはダテハゼ なのは当然だろう。またハゼと共生しているテッポウエビが元気に土を掻き出しているシーンもよく見かける。

なんだかわからない動くもの ダテハゼとテッポウエビ ダテハゼとテッポウエビ ヤシャハゼ

 ここでダテハゼとテッポウエビを眺めているとハゼとエビの共生(エビは穴を掘る。エビは目が悪いのでハゼが危険をエビに知らせる)は嘘だとしか思えない。
 たとえば写真を撮ろうと近づくとするとハゼは微動だにしないのに、エビだけが勝手に引っ込んでしまい二度と姿を現さないとか、エビを無視してハゼがどんどん遠出をしている、時にはエビを無視してハゼだけが穴に逃げ込むといった場面を頻繁に目にする。こいつら実際には独立した存在で、単にハゼが無理矢理エビの穴に入っているだけじゃないのか。
 後、ハナビラクマノミが無闇に多かったが人気のカクレクマノミをビーチで見かけることは結局一度もなかった。
 潜水時間は65分。
 もう少し手加減していれば(そしてロスタイムが無ければ)もう一本潜れたかも。いや、ダイビングは本数じゃなくって潜水時間、、、でもなくて、内容の充実度が重要。

 宿の夕食は連日(洋食と和食が日替わりで)非常に素晴らしかった。

ソデイカのカルパッチョ サツマイモの冷製スープ カンパチのソテー 豚肉のイタリアン風柔らか煮込み

 夜中に室内の騒音で眠れずロビーで涼んでいると、別室で同行者の一人が天井から降ってきたらしいムカデに刺される事件に遭遇。大事には至らなかったが、 薬を調達したりムカデを捜索したりして睡眠不足気味。だが無神経な一人はこの大騒ぎのなか惰眠をむさぼり続けたりもする。

2007. 7/ 8

 倉崎ビーチ、大仏サンゴ、山本SP
早朝、ビーチでエントリー 早朝組は6時30分にはビーチに向かう。昨夜の騒動や室内の騒音などが原因で十分な睡眠が確保できなかったり、その他の理由で朝辛い面々は惰眠をむさぼる。
 早朝のビーチは人影もまばらで透明度も高くて潜れば楽しいのだが、寝不足気味だと起きるのが辛い。いったん海に入ってしまえば眠気なんて消えてしまうのだが。
 次はボートで潜るので、車で30分ほど離れた港へ向かう。
 どうやら風の具合で外洋へでられないので、内湾のポイント大仏サンゴ。
 ポイント到着直前に、海上保安庁の「はるかぜ」が現れる。珍しいなぁと眺めていると、どうやらこちらへ向かって来る、かと思うと急に停船命令。どうやら臨検を受けるらしい。 なにかのTV番組でみたままに、舳先からタモを出して書類を受け取る。 結局、一時間以上のロスタイムになったが海上保安庁は職務を遂行しているだけだし、我々は、臨検を受ける当事者でないので滅多に見られない(と思う)経験 を気楽に楽しむ。

「はるかぜ」登場 タモを出して、書類のチェック 「はるかぜ」と記念写真

 コモンシコロサンゴの群生がまるで大仏の頭のように見えるのがポイント名の由来。
 ところで砂地でヤシャハゼやヒレナガネジリンボウ、ハタタテシノビハゼ、ガーデンイールなどを見つけるたびに、ガイドが提示して良いのか悩む んでいるような様子。やっぱりブリーフィングの際にややこしいことは言わない方が良いようだ。
 続いて、山本SP。
 ここはガレ場の先に砂地があって砂地の中に根がある。もちろん、その根には魚の群。そして、周囲の砂地は素晴らしい。
 その後、サービスに戻ってビーチとナイト。
 ところがビーチとナイトの間に90分程度余裕が有ったので、優雅な時間の過ごし方を知らない連中はこの休憩時間も潜る。 浅いビーチで潜って、タンクの中の空気はほとんど減ってないんだからわざわざ浮いて来てタンクを交換する必要なんてないような気もするのだが。 ダイビングは本数じゃなくって潜水時間、、、でもなくて、内容の充実度が重要。
 特に優雅でもない休憩時間を過ごした連中と、まったく優雅でない潜水時間を過ごした連中が合流するのは日没、そしてナイトダイビング開始のはずだったが、緯度と経度と季節となにより潜水時間の関係で少し早くにエントリー開始。 あまり遅くなると夕食が食べられなくなるし。
 ナイトで何が居たのかは内緒。
 いや、覚えてません。

 この夜はムカデは出なかった。もしかすると熟睡しすぎてムカデの存在に気がつかなかっただけかもしれないけど。

2007. 7/ 9

 倉崎ビーチ、アサヒガーデン、ハナゴイ、山本SP
 連日の早朝ダイビング。もちろんなんらかの理由で朝辛い面々は惰眠をむさぼる。
 この日は少し遠目の港から外洋、アサヒガーデンに潜る。
 ここの海は青くて透明で、「ようやく南の海へ来たぁ!」って気になる。このポイントもガレ場が有って砂地を越えて魚のいる根に向かうことには変わりない。 しかし、海が青ければそれだけでなにもない砂地の素晴らしさも増す。内湾もビーチも悪くはないけど、やっぱり南の島へ来るのはこの透明度が欲しいからだと思う。
 港へ戻る途中、いきなり「バスン」と音がして黒い煙が上がる。特に気にもとめなかったのだが、直後に港を目の前にして船が停止する。どうやら油圧ホースが破損したらしい。
 救助を待つ間、「こんなことならもっと意地汚く潜っておけば良かった」と「あの穴をくぐっておけばよかった」の意見が主力をしめる。こんなときに出る不満ですら潜ることだけ。
 ここで昨日の「はるかぜ」が現れると面白いのだが、まぁそんなことはあり得ない。ダイビングツアー一行は、しばらくして救助にやって来た船に乗り換えて港へ避難する。 その後、油圧ホースが破裂した船と船長さんがどうなったのか消息は知れない。
 連日のトラブルで一時間以上のロスタイムになったが、これもまた滅多にない経験かも。 そして、外洋へ行くつもりだった(と思う)のに、このトラブルのため(だと思う)、昨日の港に戻って、昨日の船でハナゴイと山本SPへ。
 ハナゴイはサンゴが有って砂地が有って魚がいるしナマコもいる。ナマコ101そしてナマコには迷惑な話だが、ナマコを“101”に並べる女もいる。
 連日の山本SPは(やはり)ガレ場が有って砂地があって、昨日とは別の根へ。
 この日のトラブルは船の破損の他は、レギュレータの根元のOリングが切れて噴き出す大量のエアと(幸いなことに船上で)破裂する高圧ホースだったが、どちらもなんとなくクリアする。
 サービスに戻ってから、ビーチへ潜ったのはもちろん優雅な時間の過ごし方を知らない連中だけ。

2007. 7/10

 倉崎ビーチ、インオアシス、ハナゴイ
 潜れるのは今日で最後。そして今日も連日の早朝ダイビングだが、さすがに惰眠をむさぼる連中は皆無。
 サザンクロスと呼ばれるハナビラクマノミめがけて突進し、ヤシャハゼを探して砂地をうろつく由緒正しいビーチダイビング。しかし、昨日までのビーチと基本的に変わったところはないだずなんだが。
 最後はボートで潜るべく昨日の港に移動 。移動中、「最後だから、今日は意地汚く潜ろう」と呟く声に、「昨日までは、意地汚くないのか」と運転しながら声に出さずに動揺したように見えるガイドの後ろ姿。
 昨日の船で外洋のインオアシス。 
 やはり外洋は海の青さと砂地の白さが良い。少し流れがあったけどかえって透明度が増すので好ましいくらい 。今回潜ったポイントは、すべて多かれ少なかれ似たような感じだったけど、南の島のダイビングにはこの海の青さがあればそれだけでOK。
 根の真横の砂地にガーデンイールがいる。このガーデンイールが25年ほど前に日本で最初に確認されたのが奄美大島だったはず。日本初の意地でもあるのか 、最後はマクロで撮影したくらいにどれだけ近づいても引っ込まないので写真撮り放題。

砂地の中の根 砂地 ガーデンイール

 ラストは参加者の多数決でハナゴイへ。
 前回と同じようなダイビングのあと、いきなり暴走を始める面々。
 ナマコを枕に水中で寝るやつ、亀のように積み重なって泳ぎだしたり、トーテムポールのように積み重なったり、なにをしているんだか。
 最後は16本潜った猛者だけの記念撮影。

ナマコ枕 亀の子ダイバー トーテムポール 16本潜った面々

 翌日の飛行機が早いのでビーチはなし。
 潜り足りない(海に浸かり足りない?)連中はシュノーケリングのため海岸へ行き、潜り足りた連中は奄美パーク(というより、中にある田中一村記念 美術館)へ、怠惰な連中は ビールと惰眠へ向かう。惰眠をむさぼる際に部屋に鍵をかけていてシュノーケリング終了したら部屋に入れないとか、さらに続くトラブルのネタ。
 そして、田中一村記念館は建物の立派さに比べて展示数が少なかった(特に奄美大島に移住してから)のが少し残念。しかし入館料が200円(奄美パークは別に300円必要)なら文句も言えまい。
 でも、こんな所にこんな立派な建物を建ててこの入館料で大丈夫なのだろうか。それと、奄美諸島の案内で与論島のサイトはエラーを起こすと沖永良部島になってしまうのは修正した方が良いよ。

2007. 7/11

 最終日は潜れない。実際には「そうそう減圧症になるわけでもない」と、帰りが遅い便だったりすると“朝から一本潜って”なんて人もいるらしいしが、そんなメリットのない賭をするほど無謀でもない。 もしも帰りの便で一気圧保証なんて席があったとしたら、通常料金の何割増しまで利用するだろう。
 なので、チェックアウト後はのんびり島内観光、といっても奄美大島は大きな島なので北部の一部だけ。そして昼は奄美大島名物の鶏飯。
 帰りは鹿児島空港経由なので、始めて奄美地方以外の鹿児島の土地を踏む。といっても、空港の前の足湯に浸かっただけで、あとは空港の売店で薩摩揚げなどを試食して回っただけ。

雑感

 いくつもの珍しいトラブルにも負けず16〜12本。根性と体力と魂の違いでそれなりに差はあるものの3日半で潜った本数とすればなかなかだと思う。もし、トラブルが無 くて、帰りの便がもう少し遅くて、夕食が遅くなることを厭わなければ、もう少し、、、いや考えてもしかたない。つうか、これでも潜りすぎなんだって。
南の島でも奄美大島は、陸上の風景も海の中の景色も、夕食の時に聞いた島唄も、言葉も沖縄とはちょっと(かなりかも)違った。地理的にも鹿児島との中間地点、歴史的にも琉球王国から薩摩藩と変遷して来たんだから当然か。
そしてネイティブシー奄美は、施設も接客態度も食事も黒糖ピーナッツもどれをとっても素晴らしいサービスだった。これで Internet 接続環境さえあれば万全だったのに、残念。

 ところで、このとき沖縄や奄美地方は梅雨明けしていたものの南九州全域に大雨洪水警報 さらに台風4号の接近と、ほんの少し時期がずれていれば今年のツアーもやばかったのかもしれない。


注釈)
 残圧は 直接生命に関わる重要なパラメータだ。水中で空気が無くなれば数分間で死亡する。かといって、急激に水面へ移動すると減圧症により生命の危険があることに変わりない。 そのため命が惜しければ潜水中は常に残圧に注意をはらっておく必要がある。
 深度が深いと一度に呼吸する空気の量が増える(必ず水圧に釣り合った圧の空気を吸い込むため)し、高い圧力の空気を吸うことで体内により多くの窒素が溜まる。
 飛行機に搭乗するためには最低12〜24時間は水面休息時間を取ることが推奨されている。これも守らなければすぐに何かあるというわけでもないが、自分の体のことは自分で気を付けないといけない。
 潜水時間は平均で40分程度、1時間を超えると長く潜った気分になる。もちろん、これは個人的な感覚で、人によって異なるだろうし潜った深さなどでも変化する。もちろん、70〜80分潜ってもなごり惜しい海だと長く潜った気になった としても、浮上する気になるとは限らない。
 無線LANの設備をおくくらい簡単なことだと思えるんだが、どうなんでしょう。



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