2005. 7/ 9
今年が8年目になるダイビングが主な目的の旅。
連日の猛暑と梅雨の大雨が続く東京、名古屋そして明石から逃げだし座間味島(沖縄本島那覇市から西へ約40km)へ。
まずは那覇空港に集合し、タクシーで泊港へ移動。そこから高速船クイーンざまみで座間味島まで約1時間。そして最終目的地のハートランドは港から徒歩で約5分の場所にある。
儀名
座間味到着直後、まずは儀名に潜ることに。
潜る前に「運が良ければ亀が居るかもしれません。」と聞いたような気がする。まじめに説明を聞いていなかったわけではないのだか、道中の暑さとかのために個人的には「亀なんてどうでもいい」、「とにかく潜りたい」というのが正直な気持ちだった。
エントリーは15時45分。
いきなり周囲が全て見渡せる透明度は、さすがに沖縄だと思わせるものがある。いつも南の島に来ると思うのだが、串本あたりで“透明度20m”と言ったりするときと、沖縄で“透明度40m”と言うときの単位は、同じ「m」を使用していても実際には沖縄の方が1.5倍以上長い、つまり「1沖縄m>1.5串本m」なんじゃないだろうか。
透明度の良さに助けられ周囲をふらふらと見ながらガイドについてしばらく行くと、根の上に何本もの空気の泡が浮上していくのが見えてくる。もちろん泡の下にはダイバーの集団が居て、ダイバーの中心には2匹のウミガメが重なるように居た。先の「運が良ければ…」というのは、どうやら儀名は有名なウミガメポイントだが“すでに何組も潜っているのでダイバーを嫌ってウミガメが居なくなっているかもしれない”ということだったらしい。
ともあれ、我々も先発の集団に混じってウミガメの周囲に群がってしまった。こうなってしまうと誰がどのチームだかわからない。戻るときに置いて行かれるかもしれない(こちらからガイドは見分けられる自信は無かった)という気も少ししたが、そういった不安はすべて透明度が取り除いてくれるようだ。
そしてこのウミガメがダイバーの集団に取り囲まれ写真を撮られても逃げようとしない。一度は呼吸のために水面まで行っている間にダイバーに奪われた居場所を奪い返しに来るくらいこの場所に執着していた。こいつらはいったい何を守っていたのだろうか。
たいしたことではないけどクマノミ、カクレクマノミ、セジロクマノミ、ハマクマノミ、ハナビラクマノミの5種類(つまりトウアカクマノミを除く全種類)を見たような気がする。
初日でもあるので、潜るのは1本で終了。民宿に戻って、ゆっくりと荷物を広げ、近所のスーパーでビールを買い出したりして、明日からの準備。そして夕食から宴会へ。ただし宴会は移動疲れのためか22時でお開きになった。
そうそう、同じ船に写真家の大方洋二さんが乗っていたことに気がついたのは宿に戻った後だった。
2005. 7/10
男岩、アリガー南、海底砂漠
1本目は「男岩」へ行く。
座間味島の北東に離れて飛び出している岩山のポイントで風向き、潮の流れ、他の船の有無などの条件をクリアーしないとなかなか潜れないポイントらしい。
流れているポイントというイメージが有ったので、期待半分の緊張半分でエントリーしたがこのときはあまり流れもなく“プチドリフト”といった感じだった。ところで、流れているかもしれないからとワープフィンを止めてバイオフィンにする、なにか間違っているような気がするダイバーがいたことをここに記録しておこう。彼女はその後も緩やかに移動しないポイントだけでワープフィンを使用していたはずだ。
緩やかな流れに乗ったり、泳いだりしながら透明度の良い海で断崖絶壁の周囲を移動するのはとっても気持ちが良い。ただ、カスミチョウチョウウオの群れ以外の魚はちっとも記憶に残ってない。間違いなくグルクンは居たはずなんだけど。
この男岩にかぎらず、今回は海の中が常に明るいため自動にしておくと水深20mを越えてもフラッシュが発光しないことが多々ある。そのためほとんどの写真が青くなってしまった。
2本目は「アリガー南」。
このポイントは巨大なキクメイシサンゴやエダサンゴなど、色とりどりのサンゴがあったらしい。
しかし座間味では綺麗なサンゴ礁だけではインパクトが弱いのか、それとも単に記憶力が減退しているだけなのか、どんなポイントだったかあまり記憶に残っていない。とは言っても、つまらなかったわけではなく、サンゴと魚の群れに囲まれながら何も考えずゆったりと潜っていた。
そうやって何も考えずに潜っている間に、集団の先頭付近ではガイドによるオニヒトデの虐殺が行われていたらしい。そして虐殺死体は周囲にいた魚によって証拠を隠滅されてしまった。そういえば、このときも(そしてこの後も)サザナミフグがずっと後を付いてきていたのはこの証拠隠滅に参加するためだったのかもしれない。
「ウミガメ遭遇率が高く、タイマイにも遭える。」との評判に違わず、ここでもウミガメが2匹居た。
3本目は「ガヒ前から海底砂漠」へ。
まずはヤシャハゼとガーデンイール。事前の説明では5人に1匹くらいはヤシャハゼが居るだろうとのことだった。浅場から砂地に下りていくと、ヤシャハゼがゴロゴロしている。そしてその先にはガーデンイールが多数。どちらも、ダイバーの数よりも多い。おかげで近づきすぎて引っ込めてしまっても気兼ねがないので、心おきなく写真が撮れる。実際のところ心おきなさすぎて、引っ込めてしまったので、満足に写真が撮れなかったけど。
その先の海底砂漠は一面の砂地が広がっており、さらに先を見ると風景が海の中にとけ込んでいる。
思わずガイドも同行者も忘れてじわじわと砂漠の奥へと引き込まれていく。おそらく今回のダイビングでもっとも楽しい瞬間だったはずだ。ただし、他の人、とくにガイドにとってどうだったかは知らないけど。
そのせいで、海底砂漠から浅場に戻ってきたときのことは何が有ったのかまったく覚えていない。
座間味はポイントが比較的近い場所に多いことと、港とサービスとの距離も近いのでダイビングの合間や終わってからの休憩時間が長くとれる。この日は夕食前に、港の近くの「マリリンに逢いたい」という映画で有名になったマリリンの像を見学に行った。シロとマリリンの話を聞いていると独身女性には精力的な恋のお守りになるかも。
夕食(だけじゃなくて、朝食も昼食も)は民宿の隣のレストランラ・トゥークでとる。ここの食事は量が多いこと以外にはなんの不満もない、というか量が多いことに文句をつけるわけじゃないからなにも不満がないってことか。
この日も宴会は早じまい。
2005. 7/11
タマルル、黒島北、ナカンダシ、 浜中(ナイトダイビング)
1本目の
「タマルル」は
真っ白い砂地にサンゴの根が点在するポイントだ。
ただ、海水温上昇によるサンゴの白化が原因なのか、台風によるものなのかオニヒトデそれともダイバーが蹴っ飛ばすのか、残念なことにサンゴがかなり荒れていた。(サンゴ礁のダメージはタマルルだけでも座間味だけでも、沖縄だけの問題でもないのだが。)
昨日の海底砂漠を思わせる砂地に見とれていると、集団に置いて行かれてしまいそうになり、頑張って追いつく。また砂地で置いて行かれると、頑張って追いつく。そんなダイビングをしているとき、先頭ではウミガメが現れたので集団でダッシュしていたらしい。
うーん、覚えているのはこれだけかもしれない。というか、一緒に潜っているはずなのに見ている物が他人と違うのはなぜだろう。
2本目の「黒島北」はダイナミックなドロップオフと周囲に広がる青。
ボートがポイントに近づいただけで、ドロップオフだと分かる地形。一部に不満(というかやっかみ)の声も有ったけど、なんと言ってもダイビングはドロップオフだ。魚なんてのは背景で良い。
透明度の良い海で、視界の限り青い海。この海だけは南の島へやってこないと味わうことができない。となれば、青ければそれで良いとばかりに、ひたすら海だけを見て潜っていたので周囲になにが有ったのかは謎のままで終わってしまった。
こういったワイドな光景がデジカメで簡単に撮影できるわけもなく、何枚か撮った写真はただただ青が写っているだけだった。
3本目は流れる「ナカンダシ」。
流れていたと言っても、たいした流れではなかったのだがそれでも流れに逆らって泳ぐとなるとやっぱり疲れる。
ドリフト以外のダイビングでは、終了時には必ず潜行地点まで戻ってくる必要がある。どんなに疲れていても途中で止めるわけにはいかない。そのため、基本的に最初は流れに逆らった方向に向かい、帰りは流れに乗って帰ってくるコースをとる。しかし海の流れは刻一刻変化しているため、「行きも帰りも流れに逆らって泳がなければならないなんてこともある。」ということを思い知らされるダイビングであったらしい。(なぜ“らしい”なのかというと、なにも考えずにぼーっと潜っていたので、実は往復とも流れに逆らっていることに気がついてなかった)
なにかを捕食していたのか、泳ぎ回るカスミアジを移動中に見かける。岩肌にたくさんの卵を産みつけ守っている(でも卵が多すぎ敵も多いため、守り切れずにクロスズメダイなどに食べられてしまっている)オヤビッチャ。そして、逆にオヤビッチャに卵を食べられるベラなどが多数。
4本目は「浜中」でナイトダイビング。
ナイトダイビングの醍醐味はなんといっても真っ暗な海。そのためには、ライトも持たず誰もいない海が最高だけど、安全を考えるとそれを望むわけにはいかない。
というわけで、なるべく集団から離れた位置で反対側を向いて(ライトは海面にでも向けて)いることにする。元々ナイトダイビングではそれほど広い距離を移動しないし、透明度の良い海でライトを持っているからそうそうはぐれることはないと期待して。ただ、こんな潜り方をしていると他のメンバーと同じものを見ることがなくなってしまう。さらに別になにかを見ているわけでもないのに、後ろからライトで時々照らされるのは我慢するしかない。
こうやって、なるべく真っ暗な海や微かな星明かりの見える水面を見たり、水中影絵をやったりして時間を過ごすナイトダイビングだが、定番の膜張りブダイや夜光虫だって見る。
そして、最後の最後にアンカーのすぐ近くで見た、サンゴの隙間という隙間にはさまって眠るナンヨウハギはちょっとした驚きと、写真を見返すたびに大爆笑を呼ぶ。
ナイトの後は、宴会のために残しておいた夕食のおかずとビールで宴会。
2005. 7/12
ニシバマ、ヤカビ北、ブツブツサンゴ
1本目は「ニシバマ」。
真っ白な砂地の先に有る、アザハタの根。ここは水深は25mを越えるのに水底には影が映るほど明るくてちっとも水深の深さを感じさせない。しかし連日3時間、4時間と潜っていると、この深度のこの明るさは危険かもしれない。
ともあれアザハタとその周囲の小魚の群れ。そしてテリトリーを守るアザハタの隙をつくようにして小魚の群れに飛び込ん来るカスミアジなどを観察する。
根の周囲の砂地にはカレイやエイなども。
2本目は「ヤカビ北」。
トンネル、長いトンネル。もっとも、ほとんどの場所では上から光が入って来ている(完全な洞窟になると別のダイビングになってしまう)のでライトが必要な箇所はそれほどは多くない。
そして、トンネルの中の暗がりにはたくさんのアカマツカサやツバメタナバタウオ、アオギハゼなどが居るらしい。
トンネルを潜るのは楽しいのだが、全員が狭い範囲を通るため後方になると巻き上げられた砂やゴミで水が濁ってしまう欠点がある。目で見ているだけではわかりにくいが写真を撮ると、フラッシュが浮遊物に反射して真っ白になってしまう。そしてフラッシュを禁止すると手ぶれする。そんな状況で、トンネルの暗部に差し込む光の写真を撮ってみた。
3本目は「ブツブツサンゴ」。
今回のツアーもこれが最後。10時間近く潜ってきても、最後となると名残惜しい。
まずは有名なブツブツサンゴ(大仏の頭のようなブツブツが特徴のコモンシコロサンゴ)へ向かう。ここまで長時間潜ってきたことでもありサンゴの下へは行かず中層を漂う。無数のスズメダイの群れの中、サンゴの横を浮いているのも楽しい。そして浅場へ移ると、どこまでも広がる一面のエダサンゴの群生。その上には、各種スズメダイやチョウチョウウオの群にテングカワハギやナンヨウハギなど。
ゆっくりとボートまで戻ってくるのに約60分。しかし、これが最後となるとギリギリまで海の中に居たい。そして、幸いなことに浅場をゆっくりと潜っていたのでエアはいくらでも余裕がある。こうなると誰もすぐにはエグジットなどしない。
結局、「おしまい」を宣言されてからもバブルリングの練習を始めたりして、意地汚く海の中に居続けることになり、最終的に81分(普通のダイビングの2本分)も潜っていたなんて猛者も2名ほど居た。
浮上すると、ブイの横にはツムブリの幼魚が3匹。
夕食後は打ち上げ宴会。
前日までの宴会は翌日のダイビングを考えて(一部を除き)控えめだった。この日は最終日なので遠慮なしの宴会に突入…のはずだったのだが、急に飲み過ぎたためか早々に沈没するものが居たりしてあまり派手にはならず24時には終了した。
宴会終了後は、暗闇を求めて港まで星を見に行った。
2005. 7/13
最終日は飛行機に乗るため潜れない。
島内観光などもなく那覇に移動する。
公設市場で昼食。沖縄に来たんだし、珍しい物をと考えて「ハナミノカサゴ」や「ハリセンボン」、「タカサゴ(グルクンの一種)」や「ゴシキエビ」などを注文する。次の機会には「ダルマオコゼ」でも頼むことにしよう。
帰還先によって飛行機の時間が異なるため食事後に解散。
我々は時間が余ったので、国際通りで土産物や泡盛などを物色した後で最近那覇に出来たDFSを見学に行った。実は飛行機の中の抽選で500円の商品券が(全員に)当たったためなのだが、購入するものはなにも無かった。それどころか世界中のどこのDFSに行っても感じる場違いさを、ここでも感じながら撤退。
モノレールで那覇空港へ向かう。
雑感
連日の好天に40mを越える透明度という、最高のコンディションに恵まれた最高のダイビングだった。どこを潜っても非常に素晴らしかったためか、逆に個々のポイントのディテールが抜け落ちて「楽しかった」という思いだけが残っているのかもしれない。
初日の宴会の席で、ハートランドのスタッフから「どんなポイントに潜りたいか」を聞かれた時に、「魚の居ない所」と答えた。同行者からは非難囂々だったが、翌日から潜るたびにガイドから「今回はちょっと魚が多すぎましたね」と言われることになった。
港のそばにクジラの形をした滑り台を兼ねた展望台がある。ただし、ここの滑り台を滑り降りようなどと考えてはいけない。特に何の制御もせず、ただ重力のままに滑り降りると必ず擦過傷を体の左側に負うことになるだろう。