納涼☆谷甲州は間違ってる
−WW2の異常な戦車−

林[来年こそ都民]譲治

 甲州画報の38号のこうしゅうでんわで,谷甲州先生は10センチクラスの砲を量産して突撃砲を造れば世界最強の戦車になったかもしれないと述べられております。が,甘い!10センチは確かに強力な戦車の要素にはなろうが残念ながら世界最強とまではいかない。
 じっさいにドイツでは43式15センチ突撃榴弾砲搭載4号突撃砲,いわゆるブルームベアや15センチ重機甲榴弾砲搭載4号火砲車,いわゆるフンメルと言うのがありました。また4号戦車のマイナーバージョンで10.5センチ砲をもった回転砲塔も小数ですが造られました。ちなみになんで4号に10.5センチ砲が搭載できたかというと,3号戦車もそうですが,ドイツ軍と言うのは将来の兵器の発達を見越して,砲塔のターレットを1ランク上の砲と交換できるように造ってあったらしい。生産ラインの事も最初から考えてあったわけですね。
 4号クラスでこれですからタイガー戦車の派生型になりますと12.8センチ砲のヤークトティーガーとか38センチロケット砲発射用なんてのもでてくる。じゃあ,それが最大の口径かというと残念ながらまだ上がある。
 装軌式車台使用の自走重攻城臼砲,そうです60センチ口径のカールがあります。転輪11個,総重量124トンの自走砲がそれでも時速10キロで移動できたと言うから驚きます。もっとも実際にはバラして戦場まで運んだそうですが。
 しかし,これらは実用化できた戦車や自走砲。バルキリーみたいに試作で終わったとか製造中に終戦を迎えたなかでこれら以上の戦車や自走砲はあるだろうか。
 マウスと言う声も聞こえるが,あれの口径は12.8センチでヤークトティーガーと変わらない。では無いのかと言えばそうでもない。終戦で完成しなかったが究極の自走砲がドイツで製造されていた。全長48メートル,キャタピラの幅2.5メートル,総重量1500トンの要塞攻撃用自走砲は80センチ列車砲ドーラを自走砲にするというとんでもないしろものです。
 世界最大の戦艦を建造したのが海洋国家の日本で,世界最大の自走砲を製造したのが大陸国家のドイツと言うのは,何か兵器の狂気を感じさせますね。


 甲州画報38号、こうしゅうでんわより抜粋、

 そうだ。先月の甲州画報で気づいたこと。日本陸軍が「零式戦車」などを保有したりしないぞお。陸軍の装備なら「一〇〇式戦車」になるはずだ。もっとも海軍の戦車なら、このかぎりではないが。海軍の戦車といえば陸戦隊用の水陸両用戦車−−特二式内火艇が有名だが、一二センチ砲を装備した自走砲だか突撃砲なんてのもあったらしい。旧式化したので解体した軍艦の大砲を流用して、陸戦隊用の兵器を作ったというのだが、いかにもやり方が日本的だ。この手でいくと、長一〇センチ高角砲(秋月級の主砲)を量産して突撃砲戦車をつくることも考えられる。当時の主力戦車の主砲はせいぜい八八ミリ砲(キングタイガーの砲。やはり高射砲を転用)までだから、実現していれば世界最強の戦車になったかもしれない。もっとも装甲とエンジン出力がともなわないと、ただの自走砲になるかもしれないが。ここはひとつ小松製作所に頑張ってもらうしかないか。




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