では原稿をひとつ

林[艦政本部開発部長]譲治

 さて、小説のなかには戦国時代とか日露戦争などを扱ったものは結構ありますね。乃木将軍とか東郷平八郎の話などはかなりの人が書いているはず。
 そんな中で技術者の存在を忘れていないのが司馬遼太郎でしょう。
 他の作家のそれが、歴史上の有名人の結局は戦争を含め個人史でしかないのに対して、司馬さんのは戦争を描くにしても、国があり、産業があり、経済があり、その社会システムを機能させる技術者の存在を忘れていない。
ここがやはり他の歴史小説家と違うところでしょうな。
 さて、ここで我らが谷先生の出番であります。先生の作品が他のSF小説と違うのもここら辺じゃないでしょうか。
 例えばヴァルキリーのような兵器を思い付く作家は他にもいるやも知れません。
だが、その戦略的価値とか生産ラインにまで想いをめぐらせる作家が何人いるでしょう。
 谷先生の作品を読んでごらんなさい、でてくるじゃぁありませんか。『開発』『経済』『コスト』『戦略』といった泣かせる言葉の数々が。
 これはもう良質の歴史小説ではないか。「そうか、谷甲州はSF界の司馬遼太郎か!」と思った貴方。それは間違いです。ここは甲州画報なんですからこれが正しい。

戦車兵  『司馬遼太郎は歴史小説界の谷甲州だ!』
※しばりょーたろーのおっさんは、昔々戦車中隊長だったそーな。なんでも本土防衛演習で参謀ができないといっていた水田突破を中隊ひきいてやって、どぎも抜いたらしい。
 なるほど、あの人の小説からはハードウェアのごっつさがにおってくる。




●一般研究編に戻る