知ってるようで知らない
レーザー光線銃

林[艦政本部開発部長]譲治

 宇宙を舞台にしたSFではよくレーザー光線銃というのが出てきます。出てくるどころかレーザー光線銃が出ないのは無いと言っていいでしょう。しかし、だれも構造まで考えてくれないので私が考えてみました。題して「知ってるようで知らないレーザー光線銃」。

●照準
 映画でもなんでもレーザー光線銃は閃光を撒き散らしていますが変だとは思いませんか?
 レーザー光線は目に見えない筈です。もちろん空気中では空気の分子のおかげでレーザー光線が通っているのは目で見えます。でも何故貴重なエネルギーをそんな事で浪費してしまうのでしょう? 実はあのレーザーは照準をつけるための目印のレーザー光線なのですね。(映画ターミネーターにも出ましたけど憶えていらっしゃいますか?)つまり目には見えないがレーザー光線らしい仕事をするレーザー光線の他に派手なくせにたいした仕事もしないレーザー光線があるのです。(貴方の周りにもこんな人間模様があるはず)
 そう、レーザー光線銃からは2種類のレーザー光線が出てるんですね。
●レーザー光線
 さてレーザー光線でありますが、どんな物を使うのか。可能性としてはガスレーザーと自由電子レーザーが考えられます。
 そこでまた映画などの話にもどるのですが、あれって戦闘シーンにしか登場しませんね。しかしレーザー光線なら通信や索敵も可能な潜在力を秘めています。なのに何故戦闘にしか使用しないのかといえば考えられるのは波長が自由に選べないためです。
 せっかく可変長のレーザー光線が可能な自由電子レーザーを使いながらそれを固定長では用いないでしょう。
 そうなりますとガスレーザーが残ります。
●エネルギー
 この部分が今回の最大のポイントであります。レーザー光線の二つの謎。小型軽量のエネルギー源をどうするのか? なぜ光線銃なのに音がするのか? この二つの謎は実は表裏一体の関係にあります。ではレーザー光線銃のエネルギー源は何か?
 それは火薬です。
 より正確には火薬を使用した小型のMHD発電機であります。
 レーザー光線銃はエネルギーパックから電力を供給され、そのエネルギーパックには多数のカートリッジが内蔵されています。カートリッジの内部には高性能火薬とアルゴンガスが入っています。火薬が爆発すると内部のアルゴンガスはプラズマ状態になりこれが光線銃の磁場の中を秒速10〜20qで移動します。そうしますとフレミングの右手の法則から瞬間的に高電力を発生することが可能になります。発生した電力はコンデンサーにためるか何かしてレーザー光線銃の電力と成るわけだ。カートリッジのガスにアルゴンを使用するのは不活性ガスの方がプラズマ化しやすいためと、アルゴンの方がネオンやキセノンよりも火持ちが良い(プラズマ状態を持続させ易い)ためである。
●名称
 たとえそれが明らかにレーザー光線銃であってもレーザー光線銃と呼ばないのが軍隊という組織です。アメリカでさえジープの事を公文書では「汎用1/2トン軍用トラック」と呼んでいるそうですから。
 このレーザー光線銃が何と呼ばれるか解りませんが「局地制圧用72式電子銃」とかなんとか呼ばれるのでしょう。
●その他
 レーザー光線銃はエネルギー源に火薬を用いるとはいえ弾丸を発射するわけではないので基本的には軽量である。
 軽量というのは大切なことだ。銃が軽ければそれだけ沢山のエネルギーパックを携帯できる。このことはそのまま個人の火力の増大を意味する。

レーザー光線銃隊


イラスト+かってに設定シリーズ No.2
  陰山[空の要塞]琢磨

レーザー光線銃

<いかにもありそうな話>レーザー光線銃

 今回のオモチャはこれだ。最大有効射程700ヤードのレーザー銃だよ。もちろん、有効射程というのはレンズの焦点距離の問題でね、レンズをバルブにすれば理論上は人工衛星でも狙える。歩兵銃だから700もレンジがあればいいってことになったのさ。
 おいおい、つまらなそうな顔をするんじゃない。こいつはありきたりの銃じゃないんだ。女王陛下のSASでも採用予定になっている。が、あんまり強力なので、反射光で味方の歩兵が大火傷するから二の足を踏んでいるといういわくつきの品だ。

 こいつは大きく分けて三つのパーツで出来ている。下についている長い筒はレーザー発振器、向かって右側の箱状のは発電機関部、左上についている筒は焦点装置には可視光照準装置がついていて、昼は青緑色、夜は赤色のビームを発振する。
 赤になるのは夜間視力を失わないためだ。こいつの反射光でレンズは自動測距をするが、敵に位置が露見するまでは使わない方がいい。スコープは起倒式で起こすと自動的に作動する。発電機関部は火薬式で、カートリッジは完全燃焼方式。マガジンは80発の柔軟弾倉を付けておいた。
 レーザー発振器と機関部の先端にある穴は、それぞれ強制冷却装置と火薬ガスの排気口だ。自動的に作動するから連射したあとはしばらく触らない方がいい。

 『レーザーは対人、対物モードがあるが、なるべく明るい色の物は撃つな。可視光照準装置を使うと、距離と相手の反射能から自分に被害が及ぶときは自動的にリセットされるようになっているが、こいつはいつでも手動にできるからね。目を防護する手段のないときは、トリガーを引くと同時に目をつぶれよ。
 対人モードの時は距離100ヤードでカートリッジ一発につき0.3秒の2回射撃が可能だ。
 が、きみの相手には、0.1秒も照射すれば充分だろう。なにせ悪役はいつでもダークスーツと決っているからね、ダブルオーセブン』




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