太陽系近郊の恒星についての
ハビタルゾーン

林[艦政本部開発部長]譲治

 さて,航空宇宙軍史も恒星世界に舞台が広がるとなるとその範囲が気になるのは当然のこと。まぁ,いわゆる銀河帝国を建設するにあたっての科学的な考え方の詳細については「銀河旅行シリーズ」と言う石原博士の非常に有名な著作がありますのでそちらを参考にしていただきたい。じっさいこの表やら図を作るに当たっても大変参考にさせていただきました。またこのデーターを作成するにあたっては石原博士が主催なさっているハードSF研究所の光世紀世界DISKのデーターを使用しております。値段は6000円でしたが少なくとも私にとってはそれ以上の価値はありました。
 さてこれらのデーターにもとづきまして太陽から半径30光年以内にあるG型,K型の恒星についてハビタルゾーン(生命生存領域)を求めてみた。ちなみにハビタルゾーンの計算にあたっては雑誌「科学」1984年No7 水谷仁 「生命が生まれる惑星の条件」を参考にしております。これについては古いSFMの石原博士の記事や今は手に入りませんが光世紀世界(本のほう)にも記述があるそうです。
 左の表でSがハビタルゾーンを示しているわけですが,0.9とか1.3などの数字は地球が太陽から受け取っている光度の0.9倍,1.3倍であることを意味します。当然,Sは地球が受け取るときの光度と等しい光度となります。この表では有効数字の関係で太陽のSが0.99になってますが(^^;)。
 惑星の大気システムの振舞いは非常に複雑でわずかの熱量の差が暴走的温室効果や暴走的凍結をまねきかねないそうです。したがってこれらの数値も多分に目安に過ぎないところがあります。ただ基本的な考え方は惑星に液体の水が存在できる事が生命生存の前提となっています。
 具体的な数値は恒星からの距離を天文単位で示しています。例えばtau CETの場合,地球と同じだけの光度を得るには0.67天文単位まで惑星が恒星に近く無ければならないことになります。
 ついでに次次ページの図はこの表の恒星が実際にどういう位置にあるかを表したもの。ただ注意していただきたいのは銀河面を真上からみた図ですので銀河面に対する恒星の高さは考慮されていません。bet COMなどalp CENより太陽に近いように見えますが実際は銀河面に対して27光年ほど離れています。
 ただ何も分からないのもあんまりなので☆は銀河面の上半分,★は銀河面の下半分に属していることを示しています。立体的な位置関係が知りたい方はこの図にしかるべき長さの棒でも立てて下さい。

対象となる恒星 スペクトル  距離   絶対実視等級  0.9S   S    1.3S 
SUN/SOL G2V 0.00 4.85 1.05 0.99 0.87
alp CEN G2V 4.29 4.34 1.33 1.26 1.10
tau CET G8Vp 11.80 5.71 0.71 0.67 0.59
del PAV G5IV 18.60 4.78 1.08 1.03 0.90
ARCHID G0V 19.20 4.62 1.17 1.10 0.97
82 ERI G5V 20.30 5.29 0.86 0.81 0.71
bet HYI G2IV 20.50 3.81 1.69 1.60 1.41
xi BOO G8V 22.00 5.39 0.82 0.77 0.68
zet TUC G0V 23.30 4.95 1.00 0.95 0.83
41 ARA G8V 24.90 6.07 0.60 0.57 0.50
ALULA AUSTRALIS G0V 25.10 4.30 1.35 1.28 1.12
mu CAS G5 25.10 5.64 0.73 0.69 0.61
mu HER G5IV 26.30 3.96 1.58 1.50 1.31
bet COM G0V 27.20 4.66 1.14 1.08 0.95
61 VIR G6V 27.40 5.12 0.93 0.88 0.77
alp MEN G5V 28.40 5.38 0.82 0.78 0.68
GRB1830 G8Vp 28.90 6.66 0.46 0.43 0.38
61 UMA G8V 29.70 5.55 0.76 0.72 0.63
CHARA G0V 29.90 4.46 1.25 1.19 1.04
11 LMI G8IV 29.90 5.60 0.74 0.70 0.62
eps ERI K2V 10.80 6.13 0.58 0.55 0.48
61 CYG K5V 11.00 7.58 0.30 0.28 0.25
eps IND K4V 11.20 7.01 0.39 0.37 0.32
GRB1618 K7V 14.70 8.32 0.21 0.20 0.18
KEID K1V 15.90 5.99 0.62 0.59 0.52
70 OPH K0V 16.70 5.48 0.78 0.74 0.65
36 OPH K0V 17.70 5.70 0.71 0.67 0.59
GC20113/1 K5V 18.10 7.06 0.38 0.36 0.31
GC23298 K5V 18.30 7.59 0.30 0.28 0.25
GC27992 K3V 18.40 6.55 0.48 0.45 0.40
sig DRA K0V 18.50 5.92 0.64 0.61 0.53
HD109655 K4V 19.90 8.20 0.22 0.21 0.19
p ERI K0V 21.30 5.99 0.62 0.59 0.52
GC32329 K3V 22.20 6.41 0.51 0.48 0.42
GC959 K2V 22.70 6.54 0.48 0.46 0.40
GC23362 K3V 23.30 6.64 0.46 0.44 0.38
GC3121 K3V 23.50 6.61 0.47 0.44 0.39
107 PSC K1V 24.30 5.88 0.65 0.62 0.54
WOLF718 K7V 24.50 8.13 0.23 0.22 0.19
LTT9283 K5V 25.50 7.03 0.38 0.36 0.32
HD110296 K4V 25.50 8.20 0.22 0.21 0.19
LTT1372 K0V 25.70 6.57 0.47 0.45 0.39
L678-39 K 26.70 13.10 0.02 0.02 0.02
L49-19 K 26.70 12.10 0.04 0.04 0.03
GC28104 K0V 27.20 6.13 0.58 0.55 0.48
LTT4348 K0 27.20 11.30 0.05 0.05 0.04
GC2161 K0V 28.60 5.91 0.64 0.61 0.53
LTT660 K 28.90 11.50 0.05 0.05 0.04
RANA K0IV 29.40 3.77 1.72 1.63 1.43
GC6120 K3V 29.90 6.41 0.51 0.48 0.42
WOLF46 K5V 30.50 9.80 0.11 0.10 0.09

starmap.gif (16389 バイト)

勉強不足編集者の補足の試み
 表に登場する星の名前の見方について、若干補足しておきます。とはいえ手元の資料を泥縄でひっかきまわして調べたものですので、我ながら不安です。間違いをみつけてくださった方は是非ご指摘ください……
 星の名前はおおまかに3種類の表記パターンがあるようです。まず通称(シリウスとかレグルスとか)、これはかなり明るいみかけの星しかついていません。この表ではARCHIDやCHARAなどがそれにあたります。(しかし編集にはどれも初耳でした……)なお、太陽系近隣で有名なバーナード星やシリウスはスペクトル型が違うため(前者がM型、後者がA型)ここにはでてこないわけです。
 つぎに星座名をいれたもの。最初に小文字アルファベットまたは数字があり、次に大文字3つがあるものは、末尾の3文字が星座名の略称、最初の小文字または数字がその星座におけるみかけの等級の順番です。アルファベット表記の場合、最も明るいものから順番に、alp,bet,gam,del,eps,zet,eta,……と続きます。tauは19番目、xiは22番目、muは12番目、sigは18番目になる……はずです。p は(21番目)にあたるのか(16番目)にあたるのかわかりません。誰か教えてください……なお、ごく目立たない星の場合、24番以内(ギリシャアルファベットは24字)でも番号であらわすことがあります。
 略称が表す星座名は以下の通りです。
CEN:ケンタウルス座 CET:鯨座 PAV:孔雀座 CAS:カシオペア座 ERI:エリダヌス座 HYI:みずへび座 BOO:おうし座 TVC:きょしちょう座 ARA:さいだん座 HER:ヘラクレス座 PSC:魚座 COM:かみのけ座 VIR:おとめ座 MEN:テーブルさん座 UMAおおぐま座 CVN:りょうけん座 LMI:こじし座 CYG:白鳥座 IND:インディアン座 OPH:へびつかい座 DRA:りゅう座
 最後に、それらにあてはまらない、アルファベットと数字だけのものは、カタログナンバーとでもいうべきものです。恒星を分類・整理した人の名前などにその整理番号をつかたもので、GMB(グルームブリジ)、VOLF(ウォルフ)、GCなどはそれです。これらの星はみかけの明るさがごく暗い星だということです。




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