時は第二次世界大戦。当時日本とドイツは技術交換の名目で、互いに新兵器のやり取りをしていた。
その内容は多くの場合ドイツの陸戦兵器と日本の水上兵器の交換であった。日本軍の機械化はドイツの戦車と電撃戦の思想によりいちじるしく進んだ。
ところが、戦場がほとんど大陸が部隊であったドイツでは、この日本の水上兵器はさほど役にはたたなかった。
実際、日本から送られた新型巡洋艦も乗り手がいないまま、放置されているのが実情であった。
ところが捨てる神あれば拾う神ありで、この巡洋艦を陸上兵器に改造し、北アフリカ戦線に送るというプロジェクトが発動された。
そもそもの思想のもとは砂にも浮力が存在するという事であったらしい。
つまり重砲を輸送するなら車輪より船の方が有利であろうし、それならいっそ戦艦を使おうということであったらしい。
たしかに巡洋艦の主砲に優る火力を独英両軍ともこの戦線に保有していなかった。
巡洋艦の改造は大きく二つの点に代表される。一つは装甲を削る作業であり、もう一つは駆動系の改造である。
巡洋艦は自分と同じ主砲からの砲弾に耐えられるだけの装甲を施すのが普通だが、砂漠の巡洋艦はこれ一隻であり、それほどの装甲は不用であり、移動のことを考えるとそれらは邪魔以外の何者でもなかった。
駆動系だが当初これにはキャタピラが予定されていた。しかし、戦場でのメンテを考えるとこれは非現実的だった。
そのためもっと機構の単純な物が使用された。どんなものかというと、巡洋艦ほどの長さの螺旋を四本船の下で回転させるのである。
鉄の螺旋を回転させ砂漠を進む巡洋艦。それは見る人に感銘をあたえないではなかったという。