さっそくお便りをいただきました。ありがとう!
編集屋の身の上に、一番のカンフル剤はお便りです。
さて、お便りには本講座講師への質問が含まれています。そこで、講師の方にお願いして、回答を寄稿して頂きました。
本講座についての感想・質問を、これからもどしどしお願いします。
はじめまして 地方隊員の和泉です。
「酷環境順応訓練講座」面白く読ませていただきました。ところで講師に質問があります。体内に酸素 - じゃなかった空気を納める機構はどうなっているのでしょうか。
- 肺腔内に空気のまま納める(→肺のボンベ化)
- 血中に溶存させる
- 組織まで送りこんでそこで留めておく
などが考えられると思います。勤め先で実は血液ガス分析装置なるものを作っているのです。動脈血中のO2分圧、CO2分圧を測定して、肺のガス交換能をみるわけですが、訓練を受けた人では測定値に影響が出るのではないでしょうか(特に(2)の場合)。とすれば、来たるべき宇宙時代に備えてデータをそろえておかなくてはなりません。よろしく御教授の程お願いします。尚、訓練を修了された方にもご協力いただければ幸いです、よろしく。
ではまた。
かしこ 1988.6.12
和泉 香於里
<講師によるお答え>
ご質問、すなわち大量の空気を体内に納める方法ですが、これに対し一言でお答えするならば、<人それぞれ>です。
前回の記事を読んで頂くとお判りのように、真空順応訓練の突破方法は、あたかも武道の極意の会得のように、あるいは禅僧の悟りを開く修行のように、厳しい訓練のさなか、各自が極限状態で「体得」するものに他ならないからです。
もちろん、体内に大量の空気を収納した状態を生理学的に分析すれば、どのように空気が体内に保持されているかは簡単に推測できます。しかし、その方法たるや文字通り十人十色なのです。もちろん自分の体のことですから、本人はほぼ正確に、なにがどうなっているかを自覚しています。しかし気むずかしい職人芸の名人のように、彼らはそれを他人に伝えるのをいやがるのです。
例えば私の知人に、肺の機能をどのようにしてか特殊化して空気を液化し、体腔中のどこかに蓄えることができる男がいます。私はなんとかして、超低温の液体空気をどのようにして体組織を傷つけずに保持するのか聞き出そうとしたのですが、彼はニヤリと笑って、こう言うばかりでした。
「アイスクリームの天ぷらの要領さ」
これだけでどう推測しろというのでしょう!
しかも。
近年、この辺の事情が大きく変わってきました。
実は、この訓練講座修了生が、どうやら各国の諜報機関に狙われているらしいのです。
考えてみると当然のことで、宇宙服なしで長時間の船外作業が可能、また重大な減圧事故があっても平気だというというのですから、あらゆる国の宇宙開発機な減圧事故があっても平気だというというのですから、あらゆる国の宇宙開発機関が、喉から手がでるほどほしがるのは当然。しかもご存じのとおり宇宙開発は軍事開発と表裏をなしていますし、そればかりか修了試験に合格したほどの能力なら「歩く気象兵器」にすらなる(いつでもどこでも巨大低気圧を発生させられる)。CIAやKGB、内閣情報室にNATOのおっさんが駆け回るのはごく自然な成行きだったのです。
例えば、かのチャレンジャー号の事故。
私が近日入手した情報によれば、これにも、某機関に拉致されていた当講座修了生が関わっていたとのことです。
和泉さんのお便りの2の方法、つまり血中に大量の酸素を溶存させる能力をもっていた修了者は、当然、体液中の酸素濃度が異常に高くなります。その濃度の高さは、本人をして危険可燃物となさしめる程のものなのです。
チャレンジャー号の爆発は、危険可燃物と化した修了生に、うっかり火の気を近付けてしまったことが原因だったのです。
というわけでみなさん。憎むべき国際謀略のために、私達は、宇宙への扉を狭められてしまっているわけです。従って、真空順応訓練は、もしみなさんが修了したとしても、安易に喧伝しないでください。私まで、本紙編集部を通じて連絡下されば、必ず善処いたします(決して某機関に売り渡すようなことはいたしません。私も谷甲州氏のファンのはしくれです)。
また、ここに掲載するイラストも、モデル(もちろん本講座修了生です)の人権援護のためアイマスクをしています。どうかご了承ください。
ということでした。
講師の先生、ありがとうございました。
編集部はみなさんのお便りをお待ちしています。